テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#シクフォニ
らの(腐女子)
249
5,423
#悪役
にこ
8,545
コメント
1件
第64話読了!ラウルが文官にまんまとハメられて、まさかのバルト将軍の下でシゴかれる流れ、笑ったw 「女で頼む」からの「性別を聞いてるわけじゃない」ってツッコミ好きすぎる。イヤミルも3日でギブしたってエピソードでバルト将軍のヤバさが伝わるし、最後の「遺伝子情報のバグ」で思わず声出たわ。ラウルの毒舌と根性、じわじわ刺さる🔥
黒竜がモンドレイクを襲う数日前――
俺はリガルド国境沿いの、ロードレス砦という場所に来ていた。
岩の多い渓谷地帯で、大昔に建設された砦の前で騎士たちが訓練を行っている。
その中に、なぜか俺も混ざっていた。
「遅いぞ王子! もっと速く走れんのか!?」
「はひ、はひ」
どうしてこうなった。
汗だく状態で、騎士たちと砦周辺を走らされている。それを監督するのは髭面のいかつい老騎士、バルト将軍。
漆黒の鎧と赤のマントを纏う彼は、ノロノロと走る俺に向かって罵声を浴びせる。
王子である俺にそんなことができるのは、彼が帝国軍で10本の指に入る将軍だからだ。
若くから帝国の為に戦い続けた歴戦の騎士であり、父メッサー王からの信頼も厚い。
多分父上は俺の言うことは聞いてくれなくても、彼の言うことなら聞き入れるだろう。それくらい帝国内での発言力は高い。
「だらしない体をしおって! ワシが徹底的に絞ってやるから覚悟しろ!」
「クソ、パワハラジジイめ。鍛え方が古いんだよ」
「なにか言ったか!?」
「言っておりません、将軍殿!」
◇
ことの発端は更に数日前――
俺は帝都王城に呼び出され、文官より座学を受けさせられていた。
眼の前に立つ背の高い文官の名はディオス。彼はメガネをクイクイしながら、俺に自分の立ち位置を説明してくれる。
「王子、あなたはダークラインとアクアレムの功績により、非常に注目を浴びております」
「そりゃいいことだ」
「特に第二王子のイヤミル様に対しては、立場が逆転してもおかしくないほどです。王子は王位継承権に興味はおありですか?」
「いや、べつに」
「そこで、王子は王位継承権に興味はおありですか?」
「いや、べつに」
「王子は王位継承権に興味はおありですね?」
あかん、これ無限ループするやつ。
「はい」
「よろしい。ですが、ラウル王子が実績をたてるだけでは、王位継承は不可能と言ってもいいでしょう」
「なぜ?」
「理由は、王位継承を行う場合メッサー王は、ご自身の判断と議会、騎士団からの推薦を参考にします。自分のことを後押ししてくれる組織、これを派閥と呼びます」
「ラウル派をつくらないといけないと?」
「その通りです。王子は外交は得意かもしれませんが、内部にはほとんど味方がいないと言っても過言ではありません」
「俺は別にムカム島の皆がいれば、それでいいけどな」
「王子、このような話はしたくありませんが、王位継承争いで兄弟間の暗殺が発生する可能性があります」
「イヤミルはやってきそうだな」
「その時、派閥がないと誰も助けてくれません。派閥はあるだけで抑止力となるのです」
「確かに、報復とか怖いもんな。手っ取り早い話、どうやったら派閥って作れるの?」
そう聞くと、文官はテーブルに写真を並べる。
そこにはいかつい騎士から、美人の騎士まで様々な騎士が映し出されている。
「彼らはリガルド帝国の影響力があり、尚且つどこの派閥にも属していない無所属の将軍達です。彼らをラウル派にすれば、非常に強い力になるでしょう」
「ふ~む、それでどうやって派閥に引き入れるんだ? 賄賂?」
「王子、何事もお金で解決する汚い大人になってはいけませんよ」
普通に怒られてしまった。
「彼らのもとで、指導を受けてみてはどうです? 将軍にラウル王子は気合が入っていると思っていただければ、ラウル派になってもらえるかもしれません」
俺は写真を一枚手に取る。そこには髭面で筋骨隆々の老騎士の姿が映し出されている。名前は『バルト・アイゼンベルグ』
もう会わなくても、この人怖いってわかる。
絶対この人に指導なんかされたくない。
「ん~……」
「どうされます王子、どなたか好みの将軍はいらっしゃいますか?」
「女で頼む」
「王子、私は性別を聞いているのではありませんよ」
俺はう~むと写真を見渡すと、あっと声を上げる。
この金髪の女将軍見覚えがある。確かグローリークエストで、聖剣持ちだった女性だ。何かの条件で、放置していると聖剣を失ってしまうので、早めに回収しないといけない時限イベント付きのキャラである。
「この美人の女将軍で頼む。え~フリーデ将軍」
「王子、見合い女性を選んでいるのではないのですよ」
文官はまぁええわという表情を浮かべ、俺の行き先を決めてくれた。
◇
それから時は先程に戻る。
なぜか俺が送られたのは髭面で筋骨隆々の老騎士バルト将軍の下だった。文官にハメられたと気づいたのは、この砦に来てすぐで、今更逃げ出すわけにもいかず将軍のもとで鬼のシゴキを受けていた。
「毎日ゴロゴロしているから、そのような豚のような体になるのだ! たるんだ腹と精神を鍛え直してやる!」
「くそっ、俺が王になったら絶対パワハラ禁止にしてやる。禁止じゃない、パワハラしたら処刑だ処刑。ついでにヒゲも威圧的だから禁止だ」
「何か言いましたか殿下!」
「おヒゲが立派です将軍!」
「無駄口を叩かず走れ!」
「クソジジイめ!」
もうムカム島に帰りたい。将軍とかどうでもいい。ママ上の胸にダイブしたい。
一応ママ上やヨハンナは、この砦のすぐ近くの街にいるので訓練が終わったら会いにいけるのだが、その体力がなくいつも終わったら砦内で泥のように眠ってしまう。
「殿下、走り終えたら腕立て腹筋、スクワットを100回3セットだ!」
「殺す気だ、あのジジイ」
バルトは昔気質な将軍で、基本的に根性論を好む。
ようは根性さえあれば気に入られることはできるのだが、そのハードルが高すぎる。
俺と一緒に訓練をさせられている騎士たちが、苦笑いを浮かべる。
「大丈夫ですか王子? あまり無理なさらず」
「そうですよ、イヤミル様は3日でギブアップされましたし」
「イヤミルもしごかれたの?」
「ええ、バルト将軍の推薦をとりたくて」
ってことは、やっぱり相当発言力が高いんだな。
ただ問題は――
「殿下、休憩したら100回プラスするぞ!」
相当な王子嫌いってところだろうな。
「バルト将軍ってイヤミルにも、こんな感じだったの?」
「ええ、お前が立派なのは見た目だけか、このハリボテめ。例えどれだけ立派な鎧に身を包もうとも、お前の薄っぺらさは隠せないぞと」
あまりに容赦のない物言いに、笑いが込み上げてきた。
「ちょっとあのジジイ好きになったかもしれない」
そういう王子だろうが、物怖じせずに本当のことを言うから発言力が高いんだろうな。
騎士たちと共に腕立てをしていると、砦の前がざわつく。なんだろうかと思い見やると、白馬に乗った女性騎士の姿があった。
金髪のショートヘアで、黒鎧が多い帝国の中で珍しい白鎧を着ている。
年齢は20代後半くらいか、アクアグリーンの瞳に耳には涙形のピアス。厳しい肩鎧にハイレッグのインナー。たわわな胸の下に金属のコルセットを装着している。
マントをなびかせて馬から降りると、他の女性騎士たちが近づいて何やら話をしている。
あれ? あの人見たことあるな。そうだ、文官が手渡してきた写真の中にあった。
「フリーデ・アイゼンベルグ。あのジジイと同じ砦にいたのか」
「ふふっ、王子フリーデ様はバルト将軍の娘で、よく同じ戦場にいますよ」
「はっ? あのジジイから、あの美人が産まれたのか? 遺伝子情報のバグだろ」