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騎士団長は恋と忠義を区別できない

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騎士団長は恋と忠義を区別できない

9 - 【第八話】召喚へ求めた期待④(シド・レイナード・談)

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2025年10月15日

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浴槽にお湯をためて入浴の用意をする。泡風呂とかいうものに出来る入浴剤を用意しておいたと言われていたので、試しにそれを湯船に入れておいた。

お湯がたまる間に主室へ戻り、別室になっている寝室に向かう。客室なだけあってどちらも豪華な作りで、何処を向いても細工が細かい装飾で溢れている。金細工のされたキャビネットやテーブル一式もあり、壁にはこの神殿を描いたと思われる大きな絵画が飾られていた。豪奢な雰囲気のインテリアは正直俺には落ち着けないものばかりだ。


寝室にあるクローゼットを開くと数多くの服が並べられており、下着の類も全て用意されている。サイズの心配もない様にしておいたと言われて『いつの間に⁉︎』と驚かされた。棚を開け、夜着と下着、バスタオルなどを用意し浴室へと戻る。


お湯はまだしっかりとたまってはいなかったが、半身浴から始まるのも悪くないと思い、服を脱いで浴槽に入った。

お湯が適温のままたまっていき、改めて魔法の凄さを痛感する。入浴剤のおかげで泡がかなりの量になってきてちょっと楽しい。体が段々と泡で隠れ、膝もあと少しで見えなくなりそうだ。そろそろお湯を止めようかと思い、魔法具へと手を伸ばした時、 やや離れた場所から、このタイミングでは聴きたくない声が急に耳に入ってきて、俺は思わず手を止めてしまった。

次の瞬間。浴室のドアは開く音と共に「お手伝いに来ました!何か困った事はないかしら?」と言う女性の声がした。どう考えてもそれはロシェルの声だった。

ギョッとし、背後にある入り口に向かいゆっくり振り返る。


「まぁ!泡風呂ね。素敵だわ」


昼間とは違い、淡いピンク色のブラウスに濃紺のスカートという軽装に着替えたロシェルが靴音を鳴らしながら側に近づいて来た。ボタンを外し、颯爽と袖をまくる。そして長くて綺麗な黒髪を持っていたリボンで一本に束ねると、「よし!準備が出来ました!」とロシェルが気合の入った声をあげた。

「……は?」

状況が理解出来ず、やっとの思いで声を出す。

「洗うのを手伝いに来ました。使い魔の世話も主人の務めでしょう?」

「不要だ!自分で出来る!」

首が千切れそうな勢いで横へと振り、『これ以上は近寄るな!』と言わんばかりに声を張り上げた。だがロシェルは不思議そうに首を傾けただけで、魔法具に触れてお湯を止めると、近くにあるスポンジへ手を伸ばした。

共に来ていたシュウはロシェルの肩の上で尻尾を揺らし、我関せずといった雰囲気だ。

「大丈夫ですよ、サビィル夫妻の水浴びに付き合ったりもしていますから、私でも手伝えます。使い魔の世話くらい私だって出来ないと、良い主人とは言えないわ」

俺の事を安心させたいのか、気持ちいい程綺麗な笑みを向けてくれた。だからといって任せる訳にはいかない。この俺が全裸で異性の前に居るとか、それだけでもう警備兵に連行され兼ねない暴挙だ。たとえ浴室に入って来たのがロシェルの方だったとしてもだ。この状況をカイルやセナ達にでも見られたらどうなる事かと思うと恐怖で震えてくる。俺から何かをする気など決して無いとしても、思い込みからくる勘違いがどういった結果を生むのか、考えただけでも恐ろしい。


「いや!本当に自分で出来るから!」


必死に訴えるも、この格好では此処から出る訳にいかないので逃げる事も出来ない。

「さぁ、背中を洗ってあげますね!」

どうやら俺の訴えなど『このクマは照れているな』くらいにしか思っていないっぽい。

スポンジに泡をのせ、グシュグシュと潰して、より泡を多くする。それを持ったままロシェルは俺の背後に回ると、軽く体を押し浴槽から離れさせ、背中を丁寧に擦り始めた。

『やーめーろーぉぉぉ!』と大声で叫びたくても声は出なかった。声を聞きつけ、誰か来ても困る!こんな状況を見られてなるものか!この世界で唯一頼れる存在を失う訳にはいかない。全く知らない世界でいきなり準備も無しにサバイバル生活に入る訳にはいかないのだ。もし放り出されるならせめて、剣の一本くらいは持たせてもらう事を許してほしい!


「あちこちに傷跡があるのですね……もう痛くはないの?」


そう言い、ロシェルがそっと指で傷跡をなぞる。その指の動きに、背中にゾクッと震えが走った。恐怖とは全く異なる、初めての感覚に頭がクラッとふらついた。


(……の、のぼせたのか?)


「い、痛くはないが……季節の変わり目には少し疼くな」

何処までロシェルが洗う気でいるのか不安でならない。今すぐ此処から逃げ出したいが当然実行する事は出来ず、されるがままになってしまう。

優しい手付きで首や耳の裏をスポンジで擦られる。髪も洗いたいのかまたに触れられ、その度に硬直して一層動けなくなった。

「綺麗な色の毛よね」

褒めてくれて嬉しいが、濡れた手で頭を撫でられると腹の奥が妙に疼いた。

「痒い所は無い?」

「だ、だぃ、大丈夫だ!」


(むしろもうこれで十分だ!もう止めてくれ!)


そう願うも、泡だらけのスポンジを握った手は前へと伸びてきて、俺の腕を持ち上げる。悲鳴に近い短い声が出そうになったが、寸前で堪えた。

「腕も傷が多いわ……シドは、怖い場所に居たの?」

不安げに揺れる瞳で見詰められ、心がギュッと苦しくなった。

「……あぁ。戦争が、長い長い……戦争が、あったんだ。でも大丈夫、ロシェルは心配しなくていい。もう終わらせたから」

安心させたくて笑顔を作ったつもりだったが、眉間の皺はどうにも出来なかった。

「……戦争なんて本当にあるのね。私にとっては、それこそ物語の世界の話だわ……。安心して、此処にはそういった心配だけは無いから」

切なげな瞳でロシェルが俺の頰を撫でてきた。濡れた手が肌を滑り、彼女から垂れた水が俺の首に滴り落ちる。


心臓が騒ぎ、腹の奥の疼きがより強くなった。

よく知った感覚に不安が走る。


「ピギャ⁈」

突然変な声が聞こえ、同時に水の中に何かがドボンッと落下してきた。

「シュウ!」

ロシェルがシュウの名を呼び、慌てて泡風呂に顔を向けた。

「肩から滑ったのね⁈大変だわ!」

お湯の中で確かに何かがもがいているのを感じる。脚にシュウが何度かぶつかり、慌てているのがわかる。俺が泡の中に手を入れて探そうとすると、同じ事をロシェルも考えたようで、お湯へ彼女が腕を突っ込んできた。


「シュウ!慌てないで下さい!止まって!」


そう言いながらお湯の中で必死にシュウを探す。お互いに既の所でかすり、ロシェルがなかなかあの子を掴めない。

「ま、待て!俺が探すから!」

何度もロシェルの手や腕が俺の脚にもぶつかり、かなり際どいところまで何度も手が伸びてきて肝が冷える。彼女が必死にシュウを探すたびにお湯が跳ね、泡が舞う。それにより彼女の服や髪まで濡れて下着が透けて見えた。

「任せてくれ!頼むから!」

悲鳴に近い声をあげながら、ロシェルを止めるが彼女に聴こえている気がしない。


——ギュッ。

あぁぁぁ……。一番起きて欲しくない事が……とうとう起きた。


「シュウ!」

ロシェルが叫び、引っ張ったがソレは違う。もう本当に勘弁してくれ!

焦りながらも優しく掴む手付きで、泡の中に隠れる俺の一部が質量を増す。 異性が水に濡れ、下着を透かせた状態のまま自分の側に無防備な姿を晒している状態のせいですっかり元気になってしまった部分をしっかり握られ、俺は「うあ!」と変な声をあげてしまった。

「……シュウ?」

キョトンとした顔でロシェルが手を離す。それと同時にシュウが泡の中から顔を出して「ピャァァァァァ」と声をあげながら彼女へと飛びついた。


「シュウ!良かったわ、無事だったのですね!」


シュウが飛びついた事で、より一層濡れ鼠になったロシェルが、手で包む様にシュウを抱き留める。安心したいのか、水で布が張り付きガッツリできている胸の谷間にシュウは頭を擦り付け、何度も声をあげた。

その様子を真横で見て、視線が全く逸らせない。泡風呂の中で滾るモノがピクッと震え、その恥ずかしさからやっと顔を横に向ける事が出来た。顔だけじゃなく、首までもが赤くなっているのが自覚出来る。『これは何の拷問だ!俺が何をしたと言うのだ!』と大声で恨み言を言いたくなった。


「こんなに濡れてしまっては、着替えないといけませんね」

困り顔でロシェルがそう言うと、俺にすまなそうな顔を向けてきた。が、その顔すら直視出来ない。

「ごめんなさい。シュウの事を乾かしたりしないといけなくなったわ。シドのお世話はまた今度でもいいかしら」


「小さい子を優先するのは当然だ。自分で出来るから、今後も、一切気にしないでくれ!」


早口になり、声は裏返ってはしまったが、よく噛まずに言えたものだ。

「では、また来ますね。今夜はおやすみなさい」

シュウをギュッと胸に抱きしめ、水が滴り色香のある姿で俺に向かいロシェルが微笑みかける。それに対し俺は、無言で何度も頷き返す事しか出来なかった。


バタンッ——


ドアが完全に閉まるまでの時間を、これ程までに長く感じた事が他にあっただろうか。土に穴を掘って作った簡易的な掩体壕に部下達と立て篭もった時に感じた時間より長く感じるとか……焦り過ぎだろ!


その後。俺がそのまま風呂場で自慰に耽ってしまった事は……自然な流れだったと思って貰いたい。

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