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「アンタが離婚してもブタのままだったら! 勇人センパイに別れを告げられる事なんてなかったのに!!」
顔をグシャグシャにさせて喚く理穂を、恵菜は軽蔑の目つきで見やる。
理穂は、恵菜から憐れに思われていると感じたのか、なおも顔を濡らしながら、醜態を晒して罵倒し続けた。
カフェの店内にいる客が、何事か、と一斉に注目しているのが分かる。
「アンタが全て悪いのよ!! 全ての元凶はアンタなのよっ!! アンタさえいなければ!! 勇人センパイと……ずっと一緒にいられたのに!! 勇人センパイの奥さんになれたのに!! 勇人センパイの一番になれたのにっ!!」
(アンタさえいなければ…………か……)
存在そのものを否定された理穂の言葉が、凶器のように恵菜の胸を切り裂いていくのを感じた。
鼻の奥がツンとして、瞳の奥がビリビリと痺れていき、熱くなっていくのが分かる。
見えない痛みに堪えつつ、恵菜は白いフード付きのショートコートを羽織ると、前を向き、毅然とした足取りでカフェを出た。
***
空を見上げると、明るいグレーの雲が空を覆っている。
時間は十九時を過ぎているのに、街頭の明かりが普段よりも明るく感じた。
(…………雪が降りそうな空みたい……)
モノレールの線路下の遊歩道を、恵菜は、鉛のように重だるくなった足を引きずりながら、立川駅へ向かう。
(離婚して半年以上になるのに…………何で……復縁したいとか、早瀬ともう会うなって……言われなきゃならないの……?)
理穂に言われた中傷めいた言葉が浮かび上がり、堪えていた涙がポロポロと零れていく。
(もう関係ないのに……今になって……どうして……!!)
顔を俯かせながら、恵菜は辿々しい歩みで立川北駅を通り過ぎた。
北口の大きなオブジェ前には、待ち合わせの人で溢れ、彼女は横目で見ながら立川駅の改札へ足を向ける。
壁画前にも、多くの人で埋め尽くされ、四方八方から人の波が恵菜に押し寄せてきた。
(とにかく…………早く……帰ろう……)
恵菜はICカードを改札に翳して、中央線の上りホームへ急いだ。