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[記録:3915年1月18日]
[被検体の心理実験は無事終了]
[被検体RCU-003/AD-3902]
「君は、今回の任務でどう思った。」
それは雪が降った日だ。彼の心理状態は私からしても良いとは言えないだろう。
「どうってなんですか、あなたは良いですね。そうやって記録とってるだけで。」
[心理状態は想定通り悪化している]
普段よりも語気が強い。苛立ちが隠しきれて居ないのだろう。無理もない、今回が初めてなのだから。
「…次の質問だ。君は何がしたい?」
「は?何が楽しくてそんなこと考えないといけないんですか?!こっちは人を手にかけたんですよ?!この手であの感触を…!!」
[フラッシュバックによる吐き気]
3号は、いや被検体はフラッシュバックのせいか吐き気により身体を縮こまらせて嗚咽を漏らす。
「あれは人じゃない。」
人じゃないと思い込むしかできない。そうやって逃れるしかないのだ。こんな子供に人を殺させるなど…、ましてや13歳の子に。
「しっかり生きなさい。そうすればいつか君にも…」
言葉にはできるわけがなかった。当たり前だ、そんな無責任な言葉をかけてもしかたがないだろう。
私は言葉に詰まり次に何か言おうとした時にはパシッ!という音ともに頬に熱い感覚がした。
3号に叩かれたのだ。痛いが、手加減してくれているのだろうか、その痛みは長く続かなかった。
「生きることが救いだと思うなよッ!!!!お前は何がしたいんだよ!!僕を助けたいなら早くこの心臓!!壊せる道具出してよ!!! 」
胸ぐらを捕まれ何度も身体を揺さぶられる。行儀悪く机に乗っかったまま何度も嗚咽混じりに泣く。
[心理状態の悪化が深刻]
[うつ病などの精神疾患の懸念あり]
[治療を優先するべきだ]
自殺などよくある話だ。2000年前から自殺ムーブなどどこにでもある。集団ヒステリー、一家心中。
そう言った精神の病は人に伝染する可能性がいくらでもある。偽善だけで相談を乗ってしまえば自身が壊れてしまう程彼らの心は真っ黒だ。
「その年齢で、自死を望むのか。」
「死ぬのがいいんじゃないっ!!記憶も自分という憎たらしい肉の塊を!!全部消せる方法なんて死ぬ以外ないじゃないか!!!この世に一欠片でも自分の存在なんていらないんだよ!!!!」
[自死以上に消滅を望む]
[自己嫌悪]
確かに消えてしまえば、自分という鬱陶しい存在が無くなって悩みなど考えずに済むかもしれない。自死を望むのはそれ程楽しいのだろうか。
自死を望むことがそれほど彼らには救いとなっているのだろうか。追い詰められた果てに待った答えが自死なんて報われない話だ。
「自死は最も重い罪だ。」
「何言ってるの?僕たち人間はこの世界の悪疫なんだよ?!!昨日からずっと聞こえるんだよ!!!あの時の言葉が…最後の言葉がっっ!!!」
[幻聴の兆候あり]
[統合失調症または双極性障害の可能性あり]
彼は死人の幻影にまとわりつかれているのだろう。このまま彼を薬漬けにする訳にもいかない。だが、今は精神的安定剤を処方するべきだろう。
[ロフラゼプ酸エチル錠の処方請求]
[ブロマゼパム錠の処方請求]
混乱してた3号も落ち着きを取り戻したのか少しずつ体の力が弱まり机から降り、椅子に座り直す。
「…ごめんなさい。…僕、頑張ります。先生、僕は自分のことが大嫌いです。先生には分からない気持ちで、やり場のない苛立ちでした。……ただ、聞いて欲しかっただけなんです。ごめんなさい。」
凄く優しい子なんだろう。相当苦しいのに、これ以上気持ちを爆発させないように、私を傷つけないように自分を抑えているのだろう。
ごめんよ、君ひとり助けられない弱い大人で。なんて、そんなことを言ってしまえばまた3号が傷ついてしまう。やめにしよう、そういうのは。
「気にするな。」
彼らは最も死に近い存在だろう。彼らは2度と戻らない傷に苛まれることになるだろう。
聞いて欲しいのに聞いてくれる仲間など、すぐに死んでしまう。逃げ場のない苦しみから彼らが助かることなどあるのだろうか。
彼らにとって、感情など邪魔でしかないだろう。彼らが気持ちをわかつ時が来ることを切に願う。
[記録終了]
[記録員:矢羽田 智和]
[研究部職員番号-1530:矢羽田 智和 の死亡確認]
[眠剤大量摂取による心肺停止]
[3918年4月8日??時??分/1号]
第248区。ここは人類軍の支配地域でもある。軍政特区の端っこに位置している。この場所に大した用事はない。ただ、あの樹木を見に来た。
249区と汚染区域の狭間にある全長453mもする樹木である。エネルギーは恐らくエーテルだろう。
「え〜!マジでっか〜!!キッモォォー!!なにこの木!」
「ですね。」
この子はRGU-054だ。防御ができるらしいが、私はRGUと組んでも単独が向いてるから確かRGUとは組ませないようにと決まったと思ってたんだけどな。
この子なんだが、3号に雰囲気似てるんだよな〜。シケた面してる所とか。
樹木は大して普段と変わる無い渋い感じだった。あれ、向こうに人影がある。こんな所に、人なんて妙だ。
「あの、ここは軍政特区ですよ!!関係者以外立ち入り禁止のはずですよ!! 」
もしかしたらスフェルナ人かもしれない。気をつけてけかかろう。もし、スフェルナ人だとしたら情報漏洩の危険性がある。
だが、その人影が成した形は、目に移るのも拒むほど、ありえないものだった。
「7号…」
7号の姿をした人影だった。でもなんでだ、この樹木には昔か魂を吸い取る。7号は、コアの暴走で3号が処分をした。
この木に飲み込まれるわけないのだ。暴走しきっていないと言うのに。なんで…、こんなに…。
「あの方とは知り合いですか?」
「…死んだはずの7号。」
そういうと、54号はかくし持っていた拳銃で撃つがうごには止まらず再生していた。
辺りを見ると死んだであろう姿の者たちがゾロゾロと居る。武器を構えるが、奴らに攻撃の意思はないようだった。
「…11…号…??」
私は絶句した。
目の前に死ぬ間際の人々が蠢く状況に、ではない。頭では分かっていても、私がそれを拒んだ。
『ここを退役して、いつかでっかいドームでライブやってやるの!!!すごいでしょー?』
血の気が引いた。彼女の姿、綺麗な黒髪、腰までかかる長い髪、吸い込まれるような空色の瞳。
「1号!!!ここは一旦退こう!!!奴ら武器を持ち始めている!!」
黙って54号に手を引かれ高い壁の門から軍政特区に入った。
「とにかく、本部に連絡して。」
「わかった。」
54号の言われるままに本部に通信要請を出すと即座に要請が通る。
『1号さん大丈夫ですか?!!先程その地域でエーテル漏出が起きていたので心配しました…!!』
「あぁ、退避したから大丈夫なんだけどね。けど、厄介な事になったよ。」
『厄介な事…?』
[3918年4月8日11時21分/2号]
こんな夜遅くに緊急呼び出しを食らった。めんどくさいと思いながら会議室へ向かった所どうやらファーストと53号が揉めてるみたい。
といっても、53号が一方的に怒っているようにも見えるけどまたなにか異常事態にでもなったのだろうか。場の空気が少し冷たい感じする。
「3号、大丈夫?こんな時間まで起きて明日起きれるの?」
「…無理」
3号はウトウトしながらも、頑張って来たみたいだ。普段は3号が寝てる時間だ。今の状況は、会社で言う残業みたいなものだった。
昔はこんな遅かまで働く人が世の中にはごまんとるらしい。世も末ってもんだと思う。よく分かってないけどね。
て思ってたら知らん間にみんな位置に着いているっぽい感じ。といっても、数人しかいない。
3号と130号と133号と5号と92号かな。あ、よく見たら134号も一応連れてこられてる。でも、この人は役割違うから多分必要ない。
「ファーストさんさぁ?こんな夜中に僕たち呼び出してどういうつもりー?」
134号は夜に起こされて不機嫌なのだろう。いつも以上に嫌味ったらしい。椅子をぶらぶらさせながら天井を眺めていて聞く姿勢もなってない。
「様をつけなさい。」
「痛っ!」
どうやら隣に居た130号にどつかれたみたいで、134号の間抜けな声が部屋に響き渡る。
「君たちは、かつての仲間の魂を破壊する事は可能か?」
ファーストのその一言で、場の空気が凍った。130号や133号には厳しい任務だと感じた。2人は仲間を大事にする出来た人間だからだ。
「ファースト?そんな任務なら133号と130号には受けさせない方がいいと思うよー?2人の性格理解してやってるんだったら大分性格悪いよ?」
ファーストは目を細めた。口の利き方には気をつけなさいという53号の言葉にもそっぽ向けていた。
「そうやって7号も使い潰したの?そうやって7号追い詰めたの?そうやって7号殺したの?ねぇ?」
「134号!!それはいいから落ち着け!」
134号は至って落ち着いており落ち着けと言っている130号本人が1番焦っていたのだ。
133号はその2人の喧嘩を見て気まずそうに唇を噛んでいた。1号に唇噛んじゃダメだよと注意されてる慌てているし、この会議破綻しそう…。
「すみませんファースト様、この2人なんせ年齢が年齢なので思春期なんです。気にしないであげてください。」
「おい!2号聞こえてるぞ!!!」
あれ、小さな声で言ったのに130号には聞こえてたみたい。地獄耳かよ。
「口喧嘩してる2人は任務行くべきではないと思うよ?そんな事で喧嘩になるのは、先が思いやられるし、130号が嫌なら不参加にさせる。なんなら、後輩共は不参加でいい、調査だけなら簡単だし。」
「僕が行かなかったらその分の仕事は2号たちの負担になるわけですよ?!」
真面目かよ。130号って口悪いのに真面目だよなぁ。そんなこと気にしなくてもいいのにさ。
それに、130号の力とか実力なんて私はしらない。若いことに変わりは無い。あんな汚染地域の近くに居れば早死する。
「ファースト様、別に私1人でも良いのでは?どうせ失敗作なのでそろそろ使い潰してくれてもいいんですよ?」
ファースト以外全員はぁ?と言う反応をしている。そこまで呆れることないのにさ。
戦場で死ぬのがいい。私1人で死んだら、3号の負担にもならないし、それが1番いい。
「やめて」
3号が少し怒っているみたいで何も言ってこなかったのに急にやめてと怒る。
「失敗作なんかじゃないし、この話自体無駄。誰が行くとか、行かないとか、結局ファースト様の意思決定に自分たちは逆らえない。」
確かに3号の言う通りだ。ファーストの意思決定に逆らえば、相応の処罰が下される場合がある。
会議室が静まり返る。ファーストは言い合いしている姿を楽しんでみているように見えた。それに、私たちの心理実験をしてるようにしか見えなかった。
53号はファーストに何か言われたのかずっと下を向いていたし。
「では、話そう。君たちが行くのは、”幽魂の木”というところでな。こんな夜中に呼び出したのはこの話が終われば数時間後に出発だからだ。」
「えぇ?!これからですか…?!」
これには130号も驚いていた。133号は少しオロオロしながら不安から130号の腕にしがみついていた。
幽魂の木は魂の宿るとされている都市伝説があったね。コア暴走した末に生き往く場所ここ幽魂の木なのだとか。生命の宿る大木とも言われている。
「幽魂の木は全長244mもある大木だ。この大木は燃やすことができない特殊な木材なんだ。その調査に1号が赴いたところ、とある超常現象が起きた。」
超常現象か。ここスフェルナではよく起きることだ。なにより、侵略戦争で管理が行き届いていない影響だとか。
にしても、幽魂の木は汚染区域と半分はみ出ている状態だ。危険度でいえばかなり高い。
「その超常現象とは、亡霊だ。」
「亡霊?」
皆首を傾げる。そりゃそうだ、亡霊などと言われても、都市伝説でしか聞いたことがない。
「まさかファーストその都市伝説信じてんの〜?」
「口の利き方には気をつけろよ134号」
134号はまた130号にどつかれている。それにしても、亡霊なんていても大した問題は無いのになぜ来んな所でこんな事を…?
「亡霊と言われても曖昧なもので僕たちにはよく理解できません。」
130号も同じことを思ったかファースト聞くとファーストは確かにと呟き1号の肩をさする。
「私は54号と同行し、スフェルナ第249区域に立ち入り、見ました。7号と、11号の亡霊を。実体があるようで、本当のところは私にもよく分かりません。」
でも、その肝心の同行者の54号は一体どこへ?新たな任務が入ったとか?
「でも肝心の54号はなんでいないの?」
「任務」
3号に即答された。54号任務なんか、あの人色々と忙しいのかな。
「とにかく君たちには、二手に別れて欲しい。1班は2号と3号と133号だ。2班は1号と130号、134号になる。幽魂の木の半分は汚染区域にはみ出ているんだ。そのため、1班は汚染区域中心に。」
するとガタンと言う音がした。思わず音のする方に振り向いた時、そこに立っていたのは130号だった。
「汚染区域まで調査するのですか?1班に?頭おかしいんじゃないですか?!バカも休み休み言えよ!!!」
「余計なお節介はやめたまえ。53号も、さっきから黙ってないでなにか言ったらどうだい?」
130号が感情的になっているのに対し、想定通りなのかファーストはなんの反応も示さない。
1番気にかけてるのは133号だろう。私たちの心配はしてなくもないが、1番行って欲しくないのは133号なんだろう。
「130号の気持ちもわかるが任務は絶対です。個々の意見を通せるほど暇じゃありません。それに、班としてのバランスを取るためです。誰かが入れ替わればバランスが崩れ致死率が上がります。」
53号の心配もわかる。バランスが無いと成り立ちやしない。汚染区域へ進むなら133号が必要だ。
そんなに心配しないでと133号は訴えかけているが、130号には届かないんだろう。聞こえても、その気持ちだけじゃ130号納得しないだろう。
「いざとなったら私が囮になるからそんなに心配しなくてもいいと思うよ?」
「2号はそうやってすぐ死のうとするじゃないですか!!」
「失敗作が死んでなんの損失になるの?133号の事大切に思うなら周りを道具だって思わないと」
130号は命を軽んじるのが嫌いなのかすっごく怒ってくる。そんなこと言ったって仕方ないのに。
「これは決定事項です。じゃあ、今日の6時に出発だからその間に130号説得しといてください。」
53号とファーストは仕事があるのか知らん顔でさっさと部屋を出ていった。
130号にも何らかのトラウマがあるし、この子の意見を否定したくもない。けど、やっぱりこの子は若いだけあって考えがまだ甘い。
「じゃあ、私も二度寝するからじゃあね〜」
1号も関わるのがめんどくさいのかさっさと出ていった。134号はさっきから何も言わない。なにか考え事をしているようだ。今はそっとしておこう。
「あれ、3号は二度寝してこないの?」
「今寝たら明日起きるの夕方になるからいい。」
夜更かしの代償重すぎない?寝つきが悪いのもあるだろうし何も言わないでおこう…。
「2号もさ、ファーストの言う事は正しいと思ってるのですか…?」
「別に。」
「別にってなんですか!!」
方を揺さぶって来るけど、何もできっこないから何もしないだけ。130号は何をそんなに嫌なのか私には何一つ理解ができないから何も言わない。
「もういいよ!!私頑張るからさ、絶対死なない!!それに、2人は先輩だよ?!長年生き残ってきた先輩!きっと大丈夫!!」
「適当に言ってるでしょ…。」
130号はどうやら133号の言い分が気に入らないのか、納得できないのか顔を顰めた。
なら133号はこの任務不参加ってことにもできなくは無いと思う。ただそうなれば3号が心配だ。
「130号、この編成で問題は無いよ。1班は汚染区域中心だから冷静な人間が必要だし、甘ちゃんじゃ汚染区域はやってられないのも事実だ。先の汚染区域調査隊の壊滅で、部隊の冷静さをかいた行動からの壊滅とされている。僕たちはあくまで兵器だ。言い分は分かるけど逆らえば相応の処罰を食らうよ?」
134号が真面目な回答をしている。そういえば、汚染区域第14調査隊は少し前に壊滅したんだっけ。これで何度目だろう。リア島の奴らはバンバン派遣して使い潰してばかりだ。
「わかった…。」
130号も納得したのか、言っても無駄だと分かったのか、俯いて何も言わなくなった。
「ごめん」
そう謝るしか出来なかった。
『異端者っ!!この異端者っ!!』
とある村で見たのは異端という文字と宗教。殺人者は吊るされ張り付けられてそのまま死んで往く。
『お前なんかっ!!!死ね!!死ね!!!』
死と生の曖昧な境界に立っているのは、僕たち兵器だ。
『お前も擁護するのかっ!!!』
何度も殴られたから、苦しかったから、傷がいつまで経っても治らなかった。
『この人殺し!!!』
殴られてるうちにこうも思った。
あぁ、この人達は、自分の命が価値あるものだと信じきっているんだな…と。
comi
1,499
ばたっちゅ
4,526
NGS_ヘビーなしっぽ
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コメント
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みぅ🤍🥀です。 第15話、読み終えました……。 まず、記録員・矢羽田さんのその後の死が、本当に胸に刺さりました。あんなに冷静に書いてた人が、最後は眠剤で……もう、何も言えなかったです。 3号の「消えたい」叫びも、2号の「失敗作でいい」って自己犠牲も、全部が重くてでも目が離せなかった。 7号と11号の亡霊、あの光景もゾッとしたけど、それ以上に「生きてる者の方がずっと苦しい」って思わせる空気がすごかった。 続き、本当に気になります……。