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学校祭の劇回:ジョーカー、初登場!
~「ジョーカーって……誰?」~
1.学校祭の劇、開幕!
学校祭当日、教室は準備で大忙しだった。
「エコー、ナレーション頼むぞ!」
「オッケー! 先生の声でやってやる!」
声裏 虹(こえうら こう)が得意げに言いながら、害獣エコーがパタパタと羽を動かす。
今年のクラスの出し物は 「魔法学園ファンタジー」。
各クラスが劇をやる中で、一番「すごい演出」ができたクラスが表彰されるらしい。
「これ、害獣の力をフル活用すれば、優勝も夢じゃないんじゃね?」
甘坂 雨衣(あまさか あまい)がチョコをかじりながら言うと、
「その通り! 俺たちの劇は害獣の力で最高の演出を作るぜ!」
芦野 勇(あしの いさむ)が拳を突き上げた。
影 道(かげ みち)の害獣 シャドウ は、舞台の光をコントロールし、
時永 時恵(ときなが ときえ)の害獣 トキオ は、時間をスローにしてドラマチックな場面を演出する。
「これ、ほんとに小学生の劇かよ……。」
目蒲 安(めがま やすし)は、すごすぎる演出に若干引き気味だった。
2.違和感……「ジョーカー?」
劇が始まり、クラスメイトたちは役になりきって演技をしていた。
エコーのナレーション、シャドウの影の演出、スイートの味覚操作で「食べ物のシーン」も完璧。
そして、クライマックス——。
「光を! 魔法で封じ込めるのよ!」
主人公役の女生徒が叫び、シャドウが影の魔法を放つ。
——その瞬間、異変が起きた。
暗転した舞台の中に、見覚えのない影が立っている。
「……え?」
影がゆっくりと舞台の中央に歩いてくる。
それは、黒いシルエットのようでありながら、
どこか現実感がない、不思議な存在だった。
「なに……あれ?」
甘坂がつぶやく。
「いや、あれは……この劇の役にないぞ?」
エコーが混乱しながら舞台の上を見つめる。
「なんか……誰かの役?」
——そのとき、影がかすかに声を発した。
「ジョーカー……。」
クラスの全員が息をのむ。
「ジョーカー……?」
誰が言ったわけでもなく、
誰が聞いたわけでもない。
ただ、その名前だけが劇の中に溶け込んだ。
「ねぇ、ジョーカーって……誰?」
影は、一瞬だけ赤い目を光らせると、
次の瞬間にはすっと消えてしまった。
劇はそのまま続き、何事もなかったかのように幕が閉じた。
3.「ジョーカーって……なに?」
「えっ、今の何!? なんかヤバくない?」
劇が終わった後、クラスメイトたちはざわついていた。
「誰かが勝手に登場したとか……?」
「いや、あんな役、台本にないだろ?」
舞台袖で話していると、道有 成(どうゆう なる)が何かを思い出したようにつぶやいた。
「……あれ? そういえば昔、害獣の記録に『ジョーカー』って名前があったような……」
「害獣の記録……?」
目蒲が怪訝そうに聞くと、ナビスが「ワン」と小さく鳴いた。
「でも、ジョーカーって害獣なのか?」
シャドウがぽつりとつぶやく。
「さぁ……でも、今のは確実に普通じゃなかった。」
ジグマが不安そうに目を細めた。
「ジョーカーとは、一体何者なのか?」
クラスメイトたちは、得体の知れない謎の存在に、
初めて興味を抱き始めたのだった——。