「「はぁ~……」」
放課後、帰り道。
俺とルカは見事にシンクロして、同時にため息をついた。
「ルカ……どうしたの? ため息なんかついて」
「お主こそ……なんじゃ、そのテンションの低さは」
「僕はちょっと……頭痛が痛くて……」
「それ、同じ意味なのじゃ」
ぐぅの音も出ない。
……そう、俺はあのあと教室に戻ったけど、肝心の《酔い覚ましの薬》をもらい忘れてて――
頭が割れるような痛みと、まぶたに砂袋ぶら下がってるレベルの眠気と、ずっと戦ってたわけよ。
午後の授業? もう地獄だった。
先生の声が子守唄にしか聞こえないし、ノートは知らぬ間にヒエログリフになってた。
そりゃぁ、ため息も出るっちゅーの。トホホ……。
「それで、ルカの方は?」
「少し……昼休みに外ではしゃぎすぎたのじゃ……」
ほう? 珍しいな。いつも昼休みはヨダレたらして爆睡してるのに?
「疲れたね。帰ったらお風呂わかすよ」
「うむ、わかったのじゃ。……そう言えば、お主はなんで頭が痛いんじゃ?」
「……………………………………色々あってね?」
「……なんなのじゃ、その妙な間は。まぁ、いいのじゃ」
家に帰るまでの道で、市場を通る。
いつも通りの、視線。
うんうん、視線を感じてると思って見ると、絶対目が合って気まずくなる……それも、いつも通り。
だけど――
ズキズキとまだ残る頭痛と、もう一つ。
いつもと違う風景が目に入った。
「? なんだろ、あれ」
「のじゃ? 噴水に人だかりがあるのじゃ」
市場のすぐ脇にある、小さな公園。
といっても、ブランコも滑り台もない、ベンチと噴水だけの場所。
そこに、妙な人だかりができていた。
「行ってみる? 見るだけならいいだろうし」
「のじゃ、面白そうなのじゃ♪」
あーわかる、なんか面白そうだよね、面白そうなことには、首を突っ込みたくなるじゃん?
「すいませーん、よっと……あ、ありがとうございます」
人だかりに声をかけると、なぜか周囲の人たちは俺たちを一目見て――
ズズズ……と、一直線に道が開いた。
……いや、俺たち王族でもなけりゃ有名人でもないんだけど!?
自然に譲ってくれればいいのに、なんか逆に目立って恥ずかしい!
その先にいたのは――
白い神父服を着た男。
顔面蒼白、口には泡、噴水の縁に座り込んでいた。
「な、なんでのじゃ……」
隣のルカが、珍しく声をひそめて呟く。
そして、その表情は――明らかに焦りだった。
「知ってるの?」
「知らない! 知らないのじゃ! だから早く帰るのじゃ! のじゃ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
俺の言葉も聞かず、ルカは俺の腕をガッと掴むと、そのまま脱兎のごとく市場を抜け――
まるで“逃げる”ように、家まで走った。
……一体、なんだったんだろ?