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第11.3話:未来大和からの技術(ギフト)
夜の配信
黄緑のパーカーに制服のズボン──高校生のまひろがカメラの前に座っていた。
背は伸び、声も落ち着きを帯びていたが、その瞳は少し迷いを帯びていた。
「実はね……ぼく、もう高校生になっちゃったんだ。
子どものままじゃいられなくて、“ほんとかな”って言っても、前みたいにみんなに届かない気がして……」
コメント欄はざわついた。
「大人になってしまった…」「寂しい」「子どものまひろ君に戻ってほしい」
隣のミウはラベンダー色のブラウスにプリーツスカート。
イヤリングを揺らしながら、ふんわりと微笑んだ。
「え〜♡ でも安心して。
大和国には未来から持ち込まれた“ギフト”があるんだよ。
そのおかげで、無垢は守られるんだよねぇ♡」
戻るまひろ
翌日の配信。
背景には「大和国医療省 × 技術特区」と刻まれたロゴ。
そこに現れたのは──再び子どもの姿に戻ったまひろ。
水色のTシャツに短パン、ランドセルを背負ってカメラの前で笑顔を見せる。
「みんな、ただいま……!
ぼく、“未来からの薬”で子どもに戻ったんだよ。
これならまた“ほんとかな”って言えるんだ」
コメント欄は歓声で埋め尽くされた。
「すごい!」「やっぱり子どものまひろ君だ」「大和国ありがとう!」
技術の紹介
ミウは緑のカーディガンを羽織り、やわらかく続けた。
「え〜♡ もちろん、未来の技術はぜんぶ公開されるわけじゃないんだよ。
ほとんどは軍と国を守るために使われてるの。
でも、こうやって少しだけ市民にシェアされることもあるんだよ♡」
彼女が紹介したのは、ごく一部だけ。
若返り薬(市民向けは“象徴利用”のみ)
感情を数値化する“翻訳アプリ”の簡易版
食糧プリンターのデモ映像(実際には軍専用)
「ねぇ、すごいでしょ? 大和国は未来とつながってるんだよ♡」
街頭スクリーンでも同じ映像が流れ、市民は「未来の国、大和国!」と声を合わせていた。
結末
暗い部屋。
緑のフーディを羽織った**Z(ゼイド)**はモニターを見つめていた。
子どもの姿に戻ったまひろの笑顔が映っている。
「未来は与えない。ただ見せびらかすだけでいい。
市民は“触れられない未来”を夢見る限り、自ら鎖を選ぶ。
……無垢は最強の兵器だ」
無垢な問いとふんわり同意、その裏で“未来の技術”は断片だけが市民に示され、まひろは再び象徴として縛られていった。