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女神の洗濯がおわったらしい。
洗濯機のタイマーが切れた音(笑点のオープニング曲)が鳴った。
変更が可能らしいが、レンタロウは初期設定のままにしている。
洗濯が終わったのに、また始まる感じが微妙だよな……。
20万曲も入ってるって、ちょっとしたカラオケマシンか?
権利とか大丈夫なんかいな? とか思いながら、レンタロウは洗濯機まで足を運んだ。
洗濯済みの女神(全身)を改めて見るとキレイ系だった。
なぜにメガクリ子は、チアリーダーの格好なんだ?
「スカートが短いね。パンチラしてるけど、メガクリ子はチラリーダーなの?」
「転移者応援キャンペーン中なので」
ずぶ濡れのボンボン的な物を、メガクリ子が振りたくる。
おしゃれなウニを持って小躍りした海女さんにしか見えないんですけど……。
女神の後頭部を張り倒してぇ……。
ボンボン的なものに付着した水滴をまき散らすメガクリ子。
ドコミ王女へ集中的に飛ばしているっぽい。
「転移者応援って、僕を間違えて召喚したのに?」
「そいつは、スンマソン!」
「殴っていいか?」
「王女をですか?」
「メガクリ子、オマエをだよ!」
「失礼な! 私はメガネっ子じゃありません! ただのアホだぞっ!」
「盛り上がってるところ悪いんだけど……」
タピオカミルクティーを盛大にこぼしたドコミ王女が、割って入る。
ドレスがベッタベタになって気持ち悪そうだ。
「レンコンタロウ、洗濯機を借りてもいいかしら?」
言うが早いか、ドコミ王女は自ら洗濯機にダイブする。
「ソフト(弱)の30分コースでお願い!」
大きなドラムの中で、王女は体育座りでスタンバイ。
わくわくが止まらない様子だ。目を輝かせている。
「柔軟剤を入れたら、王女は柔らかくなりますかね?」
あいにく、レンタロウの店に柔軟剤はない。
「代わりに、泥ダンゴを入れてみよう。ストーンウォッシュってやつ?」
ストーンウォッシュ。
軽石やセラミックなどを使ってデニム生地を洗う、ウォッシュ加工の一種だ。
レンタロウは、出来損ないの泥ダンゴを100個ほど投入。
タイマーを30分にセットした。
「30分では短いですね……」
薄ら笑いの女神は、タイマーを90分にセットし直した。
「長くね? まあ、ドコミ王女は楽しそうだし、なにも言うまい……」
「王女にリベンジできてスッキりしました。お礼にスキルをプレゼントします」
女神は、えらくご機嫌な様子だ。
何がいいですか? と言いながら、女神は雑誌っぽいものを差し出してくる。
簀巻きにした布団に、カタログを仕込んでいたらしい。
「カタログギフトです。この中からおすきなものをどうぞ」
カタログに掲載された商品やサービスの中から、好きなものをもらうというアレだった。
カタログがビッショリと濡れて開かないんですけど……。
レンタロウが、むりやり開いたページには、微妙なスキル(小物一覧)が掲載されていた。
カタログは、女神が制作したらしい。
【カタクリ子・オプションぬっ!】
1 アーマードセット 防御力+1
2 ネグリジェセット(夜用・昼用) オシャレ度+1
3 クリーニングセット 抗菌・防カビ+1
・
・
100 コンプリート・セット……1~99のフルセット
「スキルというか、ただの小道具じゃん。どれも要らねぇわ!」
「ってことで、カタログを乾燥させますね」
女神は、なにやらブツブツと言っている。
魔法発動用の呪文っぽいが、声が小さくて聞き取れない。
「火力を間違えちゃった。テヘ!」
#バトル
彼女が「へ!」と言った瞬間、レンタロウは反射的に女神の後頭部を、ハリセンでド突いた。
「ぼくのスキルが……」
消し炭になったカタログを呆然と見つるレンタロウ。
不憫に思ったのか、女神が提案をしてくる。
「ご心配なく。カタログの内容は、3つくらいならバッチリ覚えてます!」
「チートスキルはある?」
レンタロウの目が光り輝く。
「ファンシーな小物です!」
「いらねぇわ!」
「アイスクリームを持つところなんてどうです? 光る泥ダンゴをセットしたら、|懐中電灯《ライト》っぽくなりますよ?」
アイスクリームを持つところって、コーン(アイスクリームを入れる円錐形の容器)のことか?
コーンに泥ダンゴを装着した絵面を、レンタロウは想像してみる。
懐中電灯というか、お菓子の“ジャイアントカプリコ”じゃねぇか!
アホのサキュバス(メリッサ)が食いそうだし、やっぱ、却下だな……。
「そういえば、レンタロウさんの相棒、カタクリ子DXちゃんは元気ですか?」
すっかり忘れていた空気嫁カタクリ子DXの存在。
メリッサという、アホのサキュバスにあげちゃったんだよね……。
「顔面偏差値34で可愛くないし……落とし穴を塞いじゃうし……要らないんだよね」
「契約者はレンタロウさんなので、カタクリ子ちゃんはレンタルってことになってますよ?」
ちょっと、呼んでみますね。メガクリ子は言うと、呪文らしくフレーズをぶっ放した。
「ムッシュ・ムラムラムラ、ムラムラムラぁ!」
「ムラが集まりすぎて、もはや街だろ……」
カタクリ子が鉄の扉を突き破って店内に侵入してきた。
勢いあまって、超合金の店の壁にぶっ刺さる。
「メガクリ子、扉と壁を弁償しろ!」
訝し気な表情のレンタロウは、カタクリ子を壁から引っこ抜く。
女神とカタクリ子って、雰囲気が似てるよな。
女神がモデルだから当然か……。
顔面は女神のほうが、圧倒的に上だけど。
徹夜明けの熱帯魚みたいなルックスだし。
やっぱり、かわいくねぇ……カタクリ子さん……。
レンタロウは、カタクリ子の顔面を、残念そうに眺める。
空気を読んだらしい女神が、「カタクリ子DXちゃんの顔面偏差値をアップします!」と、切り出した。
「かわいくなぁ~れ! モエモエ、ドキュンぬ!」
女神は「平手打ちうどんぬ!」と叫びながら、カタクリ子の顔面を力のかぎり張りたおす。
だから、ぬ! ってなに?
ホントに美形になんのか?
レンタロウの心配をよそに、カタクリ子の顔面は、女神と瓜二つ状態に進化。
カタクリ子の顔面偏差値が、34→85に上昇したようだ。
すこし前にオーバーホール済みのカタクリ子。
いまでは、すっかり美少女に仲間入りだ。
「悪くない」
レンタロウは、すっかり気に入ったようだ。
ドコミ王女の洗濯終了を知らせる曲(笑点のテーマ)が流れてきた。
洗いあがったドコミ王女の視線が固定されている。
「どこを見てるか分からない、王女のクセがなおりましたね!」
女神の言葉どおり、ドコミという汚名を返上し、王女が“ちゃんと見る王女(チャトミ)”に進化した瞬間だった。
「レンコンタロウに、なにかお礼をしないといけないわね!」
やべぇ王女だと自覚があったのだろうか。
へんなクセが完治したドコミ王女は、えらく興奮した様子だ。
ヒャッハーと言いながら、小躍りを決め込んでいる。
「レンコンタロウ、あなたに女神召喚の権利をあげるわ」
呼べば、女神が速攻で来てくれるらしい。
「呪文か何かいるの? 憶えるの面倒なんだけど」
「特に無いわね。いい機会だから、召喚呪文を決めておくのはどうかしらね」
「名前でいいんじゃないのか?」
「忘れてたわ。女神を召喚はこれを使いなさい」
王女が差し出したのは、ファミレスなどにある『呼び出しボタン(業務用・防水・抗菌加工済み)』だった。
「押したら、転移魔法ですっ飛んできてくれるの?」
「いえ、歩きです! なので、近場で呼んでください」
「音を聞きたいから、試していい?」
呼び出しボタンを押してみる。
なんで『ウルトラソウル!』って音声なんだよ!
「レンコンタロウ。困ったことがあったら、私を頼ってきなさい」
ドコミ王女が、名刺を差し出す。もちろん、ずぶ濡れだ。
レンタロウ⇔王族という、太いパイプがつながった。
いや、なにをやらかしてもお咎めなしという、免罪符か。
「レンコンタロウ。私たちは、これで失礼するわね」
「なにかあったら、いつでも呼んでくださいね~!」
座椅子で移動するドコミ王女、“扉を担いだ”女神を見送った。
いや、扉を返せよ……。
ドコミ王女たちが、500メートルほど進んだ時だ。
じゃ、女神を召喚してみますか……。
呼び出しボタン(業務用)を押してみる。
音は予想通り、ウルトラソウル。
「ハイ!」
と遠くで呼応したのはいいが、女神は全力で逃げて行った……。
あいつ、逃走しやがった!
レンタロウは、カタクリ子(バージョン2)の口に、最硬度の泥団を装填。
逃走する女神をロック・オンした。
「メガミ・スレイヤぁー!」
メガクリ子V2のアホ毛を、思い切り引いた。
600キロの速度で吹っ飛んでいく泥ダンゴ。
見事、女神の後頭部にヒットする。
女神はぞの場でうずくまる。
「キヨコ、出番だ。女神を連れてこい!」
レンタロウの指示で、チーターのキヨコは女神を狩りにでるのだった。