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#玉座がメインヒロイン
#漫画原作希望
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天竺があることを期待して、レンタロウはチーターのキヨコと一緒に西へ向かっていた。
しばらく歩くと丘陵地帯に突入する。
はげ散らかした草原をトボトボ歩いていると、なんだか騒がしい声が空から降ってくる。
「だぁっふぁ! メリッサを置いてくなだぞ!」
なぜか水着を着たメリッサが「とぅ!」とか言いながら地上に舞い降りた。
ゴーグルをはずし、首にかける。
でかい麻袋を地面に置くと、メリッサが頬をふくらませて文句をたれる。
「水がくせえな連たんよ。逃亡すんならメリッサも連れてけだぞ。毎晩、連たんの性欲みたしてやっから!」
ここまで飛んできて変なことを口走ったことより、メリッサの装いが気になる。
というか萌える。
黒を基調としたセミセパレートタイプの競泳水着。
ビキニとショーツを繋ぐ紫色の細めのストラップが目をひいた。
見せる、隠すのせめぎ合い。
見えそうで、やっぱり見えている絶妙なバランス。
着衣に慣れないメリッサは、競泳水着のショーツ部分をグイグイ引っ張りV字状態のハイレグから超ハイレグへ。
最終的に股間あたりを超V字からIの字へと変えていた。
「お前はタイツ初体験の幼稚園児か!」
「パンツが股に食い込んでいてえぞ」
メリッサがパンツを下ろそうとしている。
「脱ぐな!」
危うくレンタロウも萌え死にそうだったが……。
次に気になったのが、2メートル級の巨大な袋。
「その大荷物はなに?」
「紹介すっぞ。メリッサのネエちゃんだぞ。ネエちゃんはすげぇぞ」
「すげぇ姉を袋にいれて運ぶなって……」
「妹がお世話になっております。わたくし『マルレイン』と申します。マルメガネのマルレインと覚えてくださいね。あ、わたくしですか? メリッサのお荷物ですっ!」
「なに言ってんだ? ネエちゃんよ。ネエちゃんには手下がたくさんいるんだぞっ! ぬぐとすげぇんだぞ!」
手下?
性格のキツそうなサキュバスでも出てくるのか?
「たいした数ではありませんよ」
弱々しい声の主が、申し訳なさそうに顔を出す。
麻袋から脱出し、地面にへたり込んだ。
妹とは真逆に、血管が見えそうなほど透き通った白い肌。
サキュバス特有のうす紫の瞳を隠すような分厚いメガネをかけている。
みつ編みにした髪に、外套をまとったその姿は夢魔(サキュバス)とはほど遠い。
「なあ、連たん。この丸メガネをかけた女はだれだ?」
「オマエの姉だろ……」
「おお! そうだった! そんなことより連たん。メリッサと股間の洗いっこしようぜ!」
「ダメでしょ、メリッサちゃん。セクハラは朝昼晩1日3回までって、お姉ちゃん言ったでしょ?」
「1回でもダメです……」
朝イチのセクハラもアウトだろうに。
うるさいメリッサを一度追いはらおうか。
メリッサに伝令を頼み、ハミデール王国にいるアデル、ボブ子のところまで飛んでもらった。
ようやくマルレインと話す時間を確保できたが、何を話してよいものか……。
「連太郎さま。うしろにいる子たちもご一緒してよろしいでしょうか……」
マルレインが先に口を開いてくれた。
「え? 子……たち?」
いつのまにか大勢のサキュバスが大草原に集まっていた。
サキュバスカフェの閉店にともない、行き場をなくしたサキュバスたちがメリッサとマルレインの後を追ってきたのだ。
行くあてがないといっても、もとは各国で勝手に活動していたサキュバスたち。
店がなくなっても全く問題はないはずだ。
「サキュバスは何人くらいいるの?」
「正確にはわかりませんが、1万というところでしょう」
裸同然のサキュバスだが、これだけ集まるとハーレムを通り越して、もはや軍隊。
「さすがに多すぎかな……。それに、連れていくにしても行くあてがないしね」
「そうですか……」
ずれたビン底メガネの奥から潤んだ紫色の瞳が見える。
キレイな顔立ちのマルレインに、そんな上目遣いで見つめられると断れない。
「あ、いや、あの……。空を飛べるし、手伝ってもらいたいこともあるし。じゃあ……何人か残ってもらおうかな」
「はい。よろこんで!」
マルレインは弾けるような笑顔で返事をすると、メガネをゆっくりとはずした。
その場で振り返り、緑の絨毯の上でくつろぐサキュバス軍団を一望する。
水平にした手のひらを右から左へ空気を斬るように動かした。
――しばらく黙ってサキュバスらの様子をうかがっていたマルレインが、パンパンと手を叩く。
「は~い、注目~! 静かになるまで1分かかりました。訓練じゃなきゃ、ワタシが殺してましたよ~」
この言葉を境に、突如マルレインの声色が変わる。
「跪け!」
草原に響き渡ったマルレインの力強い声に反応し、最前列のサキュバスが跪くと、後方へと伝わっていく。
やがて総勢1万のサキュバスが跪いた。
白く泡立った波が砂浜から引いていくような圧巻の光景が、レンタロウの目の前で繰り広げられた。
「リーダー10名は残れ! ほかの者は解散。命令があるまで各地で待機せよ!」
マルレインが空を指さすと、およそ1万のサキュバスが一斉に飛び立ち、バラバラの方向へと散っていく。
残った10人のサキュバスが、マルレインの許に集まってくる。
「この子たちは、連太郎さまのお好きにお使いください……。ムフッ」
メガネをかけ直したマルレインは顔を真っ赤にして、細い声で意味ありげに笑う。
「お好きなように?」
「ええ。おはようから、おやすみまで。ムフッ」
マルレインに何度問い直しても「ムフッ」と、紅潮させた顔を恥ずかしそうに俺へと向けるだけ。
ああ、そっち系の夜のあれね。
「まずはこれをお試しください」
マルレインから指示を受けたサキュバスが空気椅子の姿勢になる。
「この子に座るの?」
「はい。『肉玉座』です!」
「なんか申し訳ないな」
「お気になさらずに。サキュバスは真性の変態です! ドMのホームラン王です!」
マルレインの一言に、椅子状態のサキュバスが頬を赤らめている。
「じゃ、遠慮なく……」
早速、肉餃子とも聞こえる肉玉座に体をあずける。
サキュバスのぷにっとした胸の感触。体温が僕の背中に伝わっていい感じだ。
空気椅子状態できついのか、次第にサキュバスの体が小刻みに揺れ始める。
レンタロウが座り心地抜群の肉玉座のいろんなところを触っているとき、
「ただいまだぞっ!」
ハミデール王国から戻ったメリッサが、両脇に抱えていた人を降ろした。
メリッサの横で、40代後半くらいのワックスで固めた七三分けのおじさんがポツンと佇んでいる。
「そのワックスで固めた七三分けのおじさんはだれ?」
「ハロワってとこで就職活動中だったけど連れてきたぞっ!」
メリッサはレンタロウに腰かけると、どえらい勢いで振り返る。
「もれなくハロワ(職安)に返してきなさい!」
ムラムラを吹き飛ばすように、レンタロウは強い口調でメリッサに突き返した。
「帰りたくない……」
俯き加減で、おじさんがポツリとつぶやいた。
若い女の子に振り回されていそうなおじさんに同情するよ……。
「これから未知の領域に踏み込むので、帰ってもらったほうが良いと、僕は思うんですけど」
「何かお手伝いしたいのですが……」
「確かに男手は欲しいんですけど、まだ目処がたっていない状況でして。落ち着いたらまた来てもらえます?」
「はい、喜んで」
チーターのキヨコを撫でる七三分けのおじさんは、天使のような笑顔だ。
ネコ科の動物が好きな人に、悪人はいないとレンタロウは信じている。
「メリッサ、責任もっておじさんを送り届けろ!」
「いやだぞい。疲れたからもう飛びたくねぇ!」
チーターのキヨコの横っ腹に落書きをしながら、メリッサがぼやいた。
「チーター(キヨコ)のお腹に“ランボルギーニ”って書いたメリッサ、オマエが行け! バツゲームだ!」
ランボルギーニ・チーターって、キヨコがスーパーカーみたいになってんじゃん。
消えるのか、この落書き……。
「そうね。メリッサちゃん、落書きはいけませんよ。書くなら“365歩のマーチ”にしなさい」
もう、ツッコムのが面倒くさい……。
「ということで、どなたかは存じませんが、一旦おかえりください」
「承知しました……」
おじさんは寂し気だ。
落ち着いたら来てもらおうか……。
レンタロウは、メリッサに指令を出した。
「メリッサ、ズリオチール王国のハロワまで送ってあげて」
メリッサがおじさんを抱えたかと思えば、一瞬のうちに天高く舞い上がる。
おじさんの悲鳴が聞こえるが、だれもそんなことは気にしない。
絶叫を振りまきながら帰っていくおじさんを、皆で見送った。
半笑で。