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乃希
18,011
設楽理沙
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🔹羅碧🔹
199
ruruha
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「どの女性を選んでも申し分のない令嬢ばかりなんだけど、令嬢側的には、“学友達”である例の五人が気になるそうなんだ」「だろうな!」と断言した。同じ立場なら私だってそうなる。
「貴族と平民じゃ、学生期間でもなければまず接点が無いから、実際問題それ程心配はしていないみたいではあるんだけど、どうしたって気にはなるよね」
「彼は彼女達に恋愛的感情を持っていないと、どの“過去”を参照にしても断言出来るが、“結婚”を考えるとなると、どうしてもな」
「——あ、そうだ。宮東君に『認識誤認』の魔術を掛けるってのはどうだろ?」
「『認識誤認』の魔術か。厳しい条件をクリアしないといけないんだろう?条件を満たせるのか?」
多分星澤家での夜会の会場で私が西澤家と剣家の両当主に掛けた魔法と似た様なものだろう。精神に作用する類の魔法は悪用防止の為に様々な使用条件を設けているはずだが、この場合は使えるんだろうか。……まぁ、無理そうなら勝手に私が使ってしまうのも手か。
「問題無いと思うよ」とアルサが力強く頷く。
「実はね、就職活動期間中は五人揃って宮東建設か、もしくは宮東の関連会社に入ろうと躍起になっていたらしいんだ。まぁ結果は惨敗だったけどね。真面目な“宮東リフ”の信念を慮って、採用担当者達が間違った忖度を一切せずに面接してくれたおかげだよ。いくら在学している大学は超一流であっても、学んでいる分野が建築業とは無関係じゃ、そもそも採用は難しいよね」
「同じくらいに優秀な子が居たなら、建築関係の勉強をしてきた者を採用するもんな。せめて経済学科卒ならワンチャンあったかもしれないが」
そもそも彼女達が入社したい理由が理由だ。
入社への熱意が明後日の方向を向いているんじゃ、面接のプロが相手じゃすぐにバレるか。
「他にもね、『少しでも側に居たいから』って、全員が宮東家のタウンハウス付近に引越しまでしているんだ。でもあの辺りは地価が高い影響で当然の様に賃貸の家賃も結構高額だ。こう言っちゃなんだけど中流家庭の子供が一人で住める家賃じゃない。だから仕方なく生活費を最低限にまで切り詰めて家賃を支払っていたり、身を売ってまで住んでいるらしいよ」
「……ね、熱意だけはすごいな」
「昔ホスト狂いが災いして身売りしていた子が五人の中に一人いて、その時の借金は宮東君が一旦全額肩代わりをしてくれ、今は彼に返済金を振込し続けている最中なんだけど、家賃の支払いの為にまたこっそり借金を重ねているらしいんだよねぇ」
「いき過ぎた好意のせいで、彼の善意が丸々無駄になっているのか」
(だがまぁ、全額肩代わりだけして終了にしなかったのは賢い選択か。“学友”がただの“金蔓”になっちゃ終わりだもんな)
「他の四人への対抗意識が邪魔して、まともな行動が選択出来ないんじゃないかな」
「……既に、死に戻る前の『最悪の結末』に至る前兆はあったのか」
「そう、だね。まぁ、他にも結構やらかしているし。そのおかげで、これらの証拠をまとめて申請したら『ストーカー予備軍』として認定されると思うんだ。彼は困っている子には喜んで手を差し伸べるけど、普通に暮らしている子に自分から声を掛けて遊びに誘う程の暇は無いから、卒業してしまえば、自分から“あの五人”に連絡はしないと思う。“女性”と結婚していたなら、尚更ね」
「そうだな。叶糸の結婚していた時も彼からは一度も連絡していなかったらしいし。再度関わり合いになったきっかけも、『代理母』的な存在を探していると知った女達側からの提案だったと報告書にも書いてあったな」
「平民である彼女達側からはそれこそ『住む世界が違う』から、『認識誤認』という手段を使われてしまう様な相手であれば、会社や邸宅に問い合わせようが絶対に取り次いでは貰えないから、縁切り自体は簡単だ。だけど、いざとなったら社交パーティーにスタッフとして潜り込んで近づくみたいな無茶な行動を起こす可能性は十分ある。だから事前に宮東君を認識出来なくしてしまえば、結婚話の出ている御令嬢達も安心出来るって寸法だ。——あとは、そうだなぁ、結婚する相手の御令嬢が決まったら、その女性の方にも同じ魔術を掛けてもらおうか。今は“消えた事件”とはいえ、叶糸君という被害の前例があるなら、ほぼ確実に逆恨みの対象になってしまうからね」
「可能なら是非そうしてもらいたい」
「わかった。早々に手続きをして、対処しておこう」
「ありがとう。頼むよ」
アルサに話してみて本当に良かった。私でも対応出来る方法ではあるが、『南風アルカナ』としてはその行動を選択するのは法的に不味いからな。
(まぁどうせバレるような事は無いだろうが、正しい手続きで実行出来るならそれが一番だ)
「彼女達の気持ちが宮東君から離れて、新しい幸せを探すなら、それはそれで。だけどどうしても忘れられず、恋しい感情だけを引き摺って自滅の落とし穴に堕ちていくのなら、それはもう『過去の叶糸君』への贖罪の一部なんだと思っておこうか」と言い、アルサがそっと私の頭を撫でた。
「……今はまだ殺してはいなくても、消えたとはいえ、実際にあった事だからな」
ぬいぐるみのマーモットをギュッと強く抱きしめる。丈夫な『獣人』が故にギリギリまで死ねなかったであろう叶糸の激痛や理不尽さを考えると『あの女共を、この程度で許すのか?』と考えてしまった。けど、あんな行動に走った程に愛した男を、この先の生涯はずっと、全く認識出来ないまま背負う切なさや苦しみは、もしかすると死よりも辛いのかもしれないなと。それこそ宮東を愛し続けている間はずっと『生き地獄』を味わう事になるのだからと無理矢理納得する事にした。
コメント
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読み終えたわ。今回は五人の学友への処遇が決着した感じね。『認識誤認』の魔術で縁を切るって、物理的じゃなく精神的に切り離すのが切なくて良いなと思った。ぬいぐるみ抱きしめるアルカナの心情描写がすごく刺さったわ。「♡♡♡より辛いかもしれない」って台詞が重くて印象に残ってる。善意が悪循環を生んでた過去の話も含めて、丁寧に描かれてて読み応えあった🔥