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葉音/ペア画中
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#異世界転生
上野文
8,960
「まったく、お前が邪魔しなければ、あんな連中、
逆に俺が征服しに行ってやったものを」
「そうしたら、恐怖の王と呼ばれるのは、あなただったかもしれないですね」
「まったく、何十万人もの兵を動員し、国家の資源をほとんど戦争に費やす。
そんな戦争など、馬鹿げている」
「そのおかげで、奴らと張り合える軍隊があるんだろうが」
サイラスはカイルとともに、城の西にある小高い山にいた。
カイルは、ふとつぶやいた。
「だがな、サイラス。お前は戦争を嫌い、戦争を否定するために戦争をする」
「矛盾の塊だ」
そう言うと、カイルはけらけらと笑った。
「相手からしたら、倒し甲斐のある男だろうよ」
「倒されたくないんですが」
サイラスが反論すると、カイルはまた笑った。
「おや、始まったな」
カイルは、山向こうにある城の方角へ目を向けた。
やがて、モンゴリア軍の兵士たちに守られた攻城兵器が、いくつも姿を現した。
有効射程距離に入る。
次の瞬間――
十数キロもの岩が、いくつも城めがけて飛んできた。
岩は外壁に張られた防御ネットへ次々と着弾する。
ズドン、ズドン――。
城壁全体が大きく揺れた。
だが、防御ネットが衝撃を吸収し、城壁を崩すまでには至らない。
「行けるぞ」
ロドリゲスはドーンへ合図を送った。
「撃てぇい!」
次の瞬間、城壁側の攻城兵器が一斉に火を噴いた。
巨大な岩が、今度はモンゴリア軍の陣地へ向かって飛んでいく。
戦いは――
攻城兵器対攻城兵器で始まった。
「撃てぇい!」
ドーン・セルゴの号令とともに、城壁上に並んだバリスタが一斉に唸りを上げた。
ギリギリギリ――。
張り詰めた弦が限界まで引き絞られる。
次の瞬間。
ドドドドンッ!
巨大な矢が、轟音とともに放たれた。
矢は弧を描くことなく、低い軌道で飛翔する。
その先には、モンゴリア軍の投石機が並んでいた。
「放て!」
敵陣からも号令が飛ぶ。
ギシッ――。
投石機の腕が大きく跳ね上がった。
巨大な岩が空へ舞い上がる。
ズゴォォォン!
一発、二発、三発。
無数の岩が城へ向かって飛んでくる。
その直後だった。
ドォン!
バリスタの巨大な矢が、敵の投石機を真正面から貫いた。
木製の支柱がへし折れ、投石機が横倒しになる。
「命中!」
兵士たちから歓声が上がった。
だが、敵も黙ってはいない。
「放て!」
再び投石機が動き出す。
巨大な岩が次々と放たれ、城壁へ降り注ぐ。
ズドォン!
ズガァン!
防御ネットが大きく揺れ、石の破片が周囲へ飛び散った。
しかし――。
「次!」
ロドリゲスは叫んだ。
バリスタが再び唸る。
ドォン!
一本の巨大な矢が投石機の台座を直撃した。
木材が砕け、兵士たちが吹き飛ぶ。
投石機は大きく傾き、そのまま動かなくなった。
「右!」
「狙え!」
次々とバリスタが標的を変えていく。
ドンッ!
また一台。
ドォン!
さらに一台。
モンゴリア軍の投石機が、一台、また一台と沈黙していった。
だが、その間にも――
ズドォォン!
巨大な岩が城壁へ叩きつけられる。
一発では崩れない。
二発でも崩れない。
それでも、岩は絶え間なく降り注いだ。
城壁の上では、バリスタが敵の攻城兵器を狙い続ける。
城壁の向こうでは、モンゴリア軍の投石機が城そのものを狙う。
破壊するのは、どちらが先か。
城と攻城兵器。
互いの命運を賭けた、激しい砲撃戦が続いていた。
「なあ、サイラス。俺は敵の軍制の不備を突くように、
自分の軍団をつくったが……」
カイルは、遠くで続く砲撃戦を眺めながら言った。
「モンゴリア軍も、違う形で完結する軍を作り出している」
サイラスは黙って聞いていた。
「つまるところ、行き着く先は同じってことだ」
「そして――」
カイルは、敵陣の奥へ目を向けた。
「兵器も進化し、巨大になっていく」
そのときだった。
「な……何だ、あれは!」
兵士の叫び声が響いた。
モンゴリア軍の後方から、巨大な攻城兵器が姿を現した。
一台。
二台。
さらにその後ろから、また一台。
これまで戦場に姿を現した投石機とは、明らかに大きさが違う。
「あんな……化け物みたいな兵器を作り出せるのか」
ドーン・セルゴも息を呑んだ。
「モンゴリア軍は……」
ロドリゲスは、敵兵器の動きを目で追った。
巨大な腕がゆっくりと引き絞られていく。
「来るぞ!」
次の瞬間――。
ゴォォォン!
大地そのものが震えた。
空へ放たれた巨大な岩が、唸りを上げて飛んでくる。
ロドリゲスは、その弾道を目で追った。
「……北の塔!」
ズドォォォォン!
数百キロはあろうかという巨大な岩塊が、北の塔を直撃した。
塔が崩れ落ちる。
さらに岩塊は城壁を砕き、その勢いのまま防壁の一部を破壊した。
「…………」
ロドリゲスは、その場にへたり込んだ。
ドーンが何かを叫んだ。
そして、被害の出た場所へ駆けていく。
「防げ!」
ロドリゲスがようやく声を絞り出した。
「修復を急げ!」
兵士たちが一斉に走り出す。
「何でもいい!」
ロドリゲスは絶叫した。
「何でもいいから、埋めるんだ!」
崩れた防壁。
舞い上がる土煙。
逃げ惑う兵士たち。
その混乱の向こうで――。
モンゴリア軍の巨大兵器が、再びゆっくりと動き始めていた。
後に、人々はその巨大な砲をこう呼んだ。
** 魔砲――回回砲 **
別名西エイシア砲。
その姿は、もはや兵器というより――
怪獣そのものだった。
コメント
1件
第42話、「魔砲―回回砲」、めちゃくちゃ熱かったです……! カイルとサイラスの「戦争嫌いが戦争する矛盾」って会話、重くて刺さりました。攻城戦の臨場感がすごくて、バリスタと投石機の撃ち合い、そして最後の化け物みたいな回回砲……「怪獣そのもの」って表現、鳥肌立ちました🥀 続きが気になりすぎます。眠狂四郎さんの描く戦場の空気感、大好きです。