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悪役令嬢に私はなる!

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悪役令嬢に私はなる!

14 - 第14話、忘れ物を取りにいくという口実

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2025年01月02日

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「メアリーは賢いな」


ヴァイスは、そう後輩である彼女を褒めた。

私の部屋で午後のお茶会。メンバーは私とメアリー、そしてヴァイスとアッシュという、ここ最近では珍しくないいつもの面々。


メアリーへの気持ちをヴァイスが高まらせているのが、見ていればわかる。

婚約者としては嫉妬をするのが正しいのだけれど、王子とメアリーの仲を進展させようとしてる私にとっては、いいぞもっとやれ、である。

ただ、やはり婚約者である私が見ていたのでは、ヴァイスも気になってしまうのだろう。


はいはい……。


「そういえば、私、教科書を忘れてきてしまいましたわ」


頃合いを見計らい、私は席を立った。


「取りにいってまいります」


その瞬間、ヴァイスがアッシュを見た。


「アッシュ、アイリスと付き添ってやれ。最近、何かと物騒だからな。校内といえど、安心はできん」

「はっ」


アッシュが立ち上がった。メアリーがキョトンとする。


「物騒、なのですか?」

「例の魔女が現れたり、この学校の警備体制に少々不安がある」


真面目ぶるヴァイスである。でも本心では、ただメアリーと二人っきりになりたいのだとわかっている。

私は、それに乗っかるのみだ。


「アッシュが付いてきてくれるなら頼もしいですわ。では殿下、席を外しますね。メアリー、殿下をよろしくね」

「はい、アイリス様」


メアリーが頷いた。私は部屋を出る。アッシュもついてきた。


「君が教科書を忘れるなんて、意外だな」

「そう……?」


廊下の窓からは夕暮れの空。外では部活に励んでいる生徒たちの声が聞こえてくる。


「あなたもご苦労様ね。王子とメアリーを一緒にさせるために、部屋から追い出されて」

「……何のことだ?」

「とぼけないで。私、わかるのよ」


私は隣を歩くアッシュに一歩近づいた。


「王子様はメアリーに惹かれている。……私がわからないと思った?」

「……さて、僕にはわからない話だ」

「あら、本心で言ってる? だとしたら、私はあなたを買いかぶっていたのかしら?」


知っていて、ついイタズラしたくなっちゃうのよね。悪い女だわ、私は。


「王子の気持ちについてはともかく、君はそれでいいの? 婚約者だよな?」

「そうねぇ……王子には黙っていてほしいんだけど――」

「言わない」


そう、アッシュは背筋を伸ばした。


「うん。私は王子とメアリーがピッタリだと思う」

「それ、君の本心?」

「もちろんよ」

「君の気持ちは?」

「私の気持ち?」


何を言っているのだろう。これは本格的にアッシュルートに入っているのかしら。こんな会話、覚えがないわ。


「君は、婚約者をメアリーにとられても平気なのか?」

「そう言ったわ」

「いや、二人がピッタリとは聞いたけど、君自身がどう思っているかは聞いていない」


それでわかりそうなものだけど、違うのかしら。私は首をかしげる。


「うーん、そうねえ。王子様は真面目で素敵だと思う。この国のことを考えているし、民には優しいし。でも……私のタイプではないかな」

「他に好きな男がいるのか?」


アッシュが真顔で聞いてきた。……なにこの会話。ちょっとドキリとした。


「さあ、どうかしらね……」


何だか、アッシュが嫉妬しているように感じたのは気のせいかしら。……そうなのかしら?


「そうね、気になっている人はいるかも……」


意味深。じっとアッシュに流し目を送る。アッシュは口を引き締めて、顔を正面に逸らした。


「な、何を……」

「あら、動揺してる?」


私は思わずニンマリしてしまう。アッシュ、私に気があったりするのかしら?


「動揺なんて――」

「別に、私はあなたが好きだなんて、一言も言っていないけれど」

「……」


黙ってしまうアッシュ。この反応は、ちょっとガッカリさせてしまったかしら。ああ、やばい。私の心臓が機関車みたく暴れはじめてる!


「僕をからかっているのか?」

「だとしたら……? どうするの?」

「っ!」


バッと、アッシュが動いた。襲われる!? とっさに身を引いたら廊下の壁に背中が当たり、彼の腕が私の顔のそばにあって……。


「あまり男をからかわないほうがいい」


やだ、これ壁ドン!? 全身に痺れにも似た感覚が走った。いま、私、どんな顔をしてる? 顔が熱く感じるということは、赤面しているのかしら?


「……すまない」


アッシュが身を引いた。


「こんなこと、するべきじゃなかった。悪かった」


とても深刻そうな顔で謝った。感情を抑えきれなかったということか。


「いえ、私も、意地悪だったわ」


まだ胸がドキドキしている。久しく忘れていた感覚だ。彼の積極的な行動は、初めてだから、まだ免疫が……。


「……教室に行きましょう」

「そうだな」


少々気まずくなって、私たちは無言になる。

気を紛らせるために、部屋にいるメアリーとヴァイス王子のことを考える。今頃イチャイチャしているかしら? 王子はあれで女に対してウブだから、手を出したりはしないのはわかっているけれど。

今回のメアリーは果たしてどう出るのか? あまりに性的にガッつくのは王子が逃げるから、じっくり行くべきではあるが。あの子、学生と言っていたけれど、ゲーム以外に恋愛経験あるのかしらね……?

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