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#勧善懲悪
#勧善懲悪
翌朝まだ早い時間、公園の舞台裏に気配があった。
リボルが最初に気づき、身構える。
「誰だ」
暗がりから出てきたのは、ンドレスだった。
黒い上着のポケットがふくらんでいる。徹夜明けらしく目の下に影があり、それでも足取りだけは迷っていない。
ピットマンが一歩前へ出る。
「今さら何しに来た」
ンドレスはその言葉をそのまま受けた。
言い返さない。
「資料、持ってきた」
ポケットから分厚い封筒を出し、舞台の板へ置く。内部用の見積もり表、相談内容の要約、店舗ごとの弱点欄、名刺配布先の一覧。見ただけで吐き気がするような紙が詰まっていた。
マイナがすぐに中身を確かめ、顔色を変える。
「本物」
ジュレイも覗き込み、短く息を吸った。
「これで流れがつながる」
サペは少し離れた場所に立ったまま、ンドレスを見ている。
「なんで」
たった二文字なのに、長い年月が挟まっていた。
ンドレスは視線をそらさない。
「戻るためじゃない」
その言い方に、エリアが息を止める。
「俺が見て見ぬふりした分、自分で崩す」
ンドレスは続けた。
「許してほしいとも思ってない。思ったらたぶん、また勝手な速さで逃げる」
サペの指がわずかに動く。
ンドレスはさらに一枚、折れた黒い名刺を置いた。
「これ配ってた連中、今日の夜、最後の仕込みに入る。アイナグルは箱庭座ででかい舞台をやる気だ。町の秘密を見世物にするつもりだろ」
沈黙。
やがてオスバルダスが低く言う。
「信用するかどうかと、使うべき情報かどうかは別だ」
リボルが腕を組み、うなずいた。
「使う」
ピットマンはまだ険しい顔だったが、否定しなかった。
サペはゆっくり近づく。
「……おまえ、あの日」
そこまで言って止まる。
まだ全部は言えない。けれど、もう背を向けるだけの距離でもない。
ンドレスは小さく笑った。
「あとで聞く」
それは、昔なら絶対に言えなかった待ち方だった。
即断即決しか知らなかった男が、初めて、答えの来る場所に足を止めていた。