テラーノベル
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朝の校舎。
窓から差し込む光が、昨日の夜の画面の光と重なるように目に刺さった。
制服の袖が、背中の汗で冷たい。
教室に入ると、昨日決まったスピーチの役が意識の中心にある。
「おはよう、遥」
クラスメイトの声。
振り返ると、誰も悪気のない顔をしている。
だが、その“普通さ”が恐ろしく、笑いを含んだ昨日のLINEの声が蘇る。
〈空気読めない代表w〉
〈主役さん、頼むよw〉
机に座ると、視線が集まる。
誰も直接笑わない。
しかし、ちらりと視線を合わせるだけで、胸の奥が冷たくなる。
昨日の夜、散々叩き込まれた文字の感触が、まだ指先に残っているようだった。
先生が黒板に向かう。
「今日の文化祭でのスピーチ、代表は……」
言葉が途切れた。
クラスがざわつく。
そして、遥の名前が呼ばれた。
(……また……だ)
心の奥で何かが凍る。
昨日のLINEの通知が、まるで耳元で鳴っているようだ。
〈やめた方がいいと思う人ー?〉
〈あっ、全員!w〉
机の下で手が震える。
声を出して返事をする前に、周囲の笑いが胸にぶつかってくる。
だれも悪意を叫ばない。
ただ、笑いながら、視線だけで責めてくる。
「はい、遥。準備はいいか?」
先生の声は穏やかだが、視線は集まっている。
クラスメイトの表情は薄笑い。
その薄笑いの奥に、昨日のLINEの言葉と同じ冷酷さを感じる。
遥は答えられず、唇をかむ。
胸の奥が、文字通り張り裂けそうに痛む。
心の中で叫ぶ。
(どうして俺なんだ……)
(断ればよかった……でも、断ったら、もっと酷いことになる……)
周りの目が、またスマホ画面の光のように揺れる。
昨日と同じ、あの嘲笑のリズム。
「頼むよ、主役さん」
「倒れないでねw」
——声は聞こえなくても、存在感が刺さる。
遥の指先は机の角を握りしめる。
胸の奥で、昨日のLINEの文字とクラスの薄笑いが重なり、呼吸が止まりそうになる。
涙はまだ出ない。
でも、全身の力が抜けていく。
自分の輪郭が、笑い声に溶けていく感覚。