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花嫁の儀の光がゆっくりと消え、庭は再び静けさを取り戻した。
澪は胸に手を当て、まだ残る温かさを感じていた。
(⋯⋯朧さんと心を重ねた⋯⋯あんなに近くて⋯⋯)
頬が自然と熱くなる。
朧は澪の様子を見て、少しだけ柔らかく微笑んだ。
「澪さん。疲れていませんか」
「だ、大丈夫です⋯⋯
むしろ⋯⋯胸が、暖かくて⋯⋯」
「それは⋯⋯私も同じです」
朧は澪の手をそっと取った。
その仕草が、いつもよりずっと自然で、どこか”恋人”のようだった。
「澪さん」
「⋯⋯はい」
朧は澪の頬に触れ、指先でそっと髪を払った。
「儀式の光が⋯⋯まだ残っています」
「え⋯⋯?」
「とても綺麗です」
澪の胸が跳ねる。
(⋯⋯朧さん⋯⋯そんなふうに言われたら⋯⋯)
朧は澪の頬に触れたまま、少しだけ顔を近づけた。
「澪さん。怖くありませんか」
「こ、怖い⋯?」
(何のことだろう⋯⋯?)
「⋯⋯怖く⋯⋯ありません⋯⋯」
「では⋯⋯」
朧の声が、耳元に落ちるように低くなる。
「もう少し⋯⋯近づいてもいいですか」
澪は小さく息を呑み、小さく頷いた。
「⋯⋯はい」
朧はゆっくりと顔を寄せ、澪の表情を確かめるように見つめた。
「澪さん⋯⋯」
「⋯⋯朧さん⋯⋯」
ふたりの距離が、あと少しで触れる。
そして──
朧は澪の唇に、そっと触れるだけのキスを落とした。
ほんの一瞬。
けれど、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「⋯⋯っ」
澪は思わず目を閉じたまま固まってしまう。
朧は澪の頬に手を添えたまま、優しく囁いた。
「⋯⋯あなたを愛しています」
「⋯⋯朧さん」
澪に胸が、一気に熱くなる。
(⋯⋯愛しい⋯⋯朧さんが私を⋯⋯)
朧は澪の手を握り、指を絡めるように優しく包んだ。
「澪さん。これからは⋯⋯あなたと共に歩みたい」
「⋯⋯はい⋯⋯私も⋯⋯朧さんと」
ふたりの影が、夕暮れの庭に寄り添うように重なった。