テラーノベル
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そのマンションには、1つだけ妙な噂があった。
「エレベーターの非常ボタンは絶対に押すな」
理由は誰もはっきり知らない。ただ、昔から住んでた人は口を揃えてそういった。
大学生の梓(あずさ)は、そんな話を口で笑っていた。古いマンションだ。ボタンが壊れているとか、誤作動が多いとか、そんな程度だろう。
ある夜、バイトでクタクタになった梓は、エレベーターに乗り込んだ。
時刻は午前1時過ぎ。外は冷たい雨。
ドアが締まり、7階の自分の部屋のボタンを押す。
,,,が、動かない。
ランプもつかない。
何度押しても沈黙。
その瞬間、エレベーターがガクンと揺れた。
電気が一瞬消え、非常灯だけがボンヤリと赤く映る。
「嘘でしょ…」
スマホは圏外。
当然、助けを呼ぶなら非常ボタンしかない。
噂が、頭をよぎる,,
『絶対に押すな。』
梓は苦笑した。
「あんなのどうせ迷信でしょ」
そして非常ボタンを押した
ーープツッ
スピーカーからノイズ。
「,,,はい。」
低い声が、すぐに応答した。
早すぎる。
普通、管理会社に繋がるまでは数秒はかかるはず
「えっと,,エレベーターが止まって,,,」
「あなた、今、何階に居ますか,,,?」
梓は周囲を見た。
階数表示は、真っ黒のまま。
「分かりません、表示が消えてて,,,」
沈黙。
ザー,,,,,というノイズ音のむこうで何かを引きずるような音が聞こえる。
「そのまま、動かないでください。 」
「,,え?」
「今、エレベーターはー」
プツン。
通信が切れた。
同時に、ゆっくりとエレベーターが動き出す。
上でも、下でもない。
横に,,
ありえない方向へ
金属が軋む音。壁の向こうで、何かが来る気配。
そして、階数表示がふっとついた
【️ー1】
地下ではないはずだ。
【️ー2】
梓の呼吸が荒くなる。
【ー3】
ゴンッと強い衝撃
停止。
ドアがゆっくり開く。
そこはエレベーターの裏側だった。
無数の扉が並ぶコンクリートの通路。
全ての扉に小さな赤いランプ。
そして、スピーカーからさっきの声。
「,,,非常ボタンを押した方はこちらへ」
通路の奥
人影がこちらを見ている。
梓は震える手で閉ボタンを連打した。
だが、ドアは閉まらない。
背後で、ささやく声。
「押しましたね,,?」
振り向くとエレベーターにー
知らない誰かがたっていた。
非常ボタンの赤いランプがゆっくりと点滅している。
まるで、心臓の鼓動のように。
それ以来、このマンションに新しい噂が1つ増えた。
「エレベーターに8階がある。」
本当は存在しないはずの階。
そこに止まった人は必ず,,,
非常ボタンを押しているー
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