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深夜2時17分。アパートのインターホンが鳴った。
——ピンポーン。
こんな時間に?
私は一人暮らしだ。訪ねてくる人なんていない。
恐る恐るモニターを確認する。
誰も、映っていない。
いたずらだろうか。そう思って無視した。
——ピンポーン。
今度は、さっきより長い。
背筋が冷える。
モニターを見る。やはり誰もいない。
だが、よく見ると……画面の端に、何か白いものが映っている。
髪だ。
長い黒髪が、カメラのすぐ下から、垂れ下がっている。
息が止まる。
私は動けないまま、画面を見続けた。
すると、ゆっくりと。
その髪の隙間から、目が現れた。
異様に大きく、瞬きもせず、まっすぐこちらを見ている。
——ピンポーン。
今度は、鳴らしていない。
画面の女が、口を開いた。
音声は繋がっていないはずなのに、スピーカーから声が聞こえる。
「……いるよね?」
心臓が激しく打つ。
私は後ずさる。
その瞬間、玄関のドアが、内側からノブを回すように——
ガチャ。
鍵は閉めている。チェーンもかけている。
なのに、ゆっくりと、隙間が開いていく。
外からではない。
内側から。
まるで、もう“中”にいる誰かが、開けようとしているみたいに。
背後で、床がきしんだ。
振り向く。
何もいない。
だが、確かに足音がした。
スマホが震える。
通知が一件。
知らない番号からのメッセージ。
> いま、うしろにいるよ
凍りつく。
首筋に、冷たい息がかかる。
「やっと、見つけた」
耳元で、女の声。
私は叫ぼうとする。
でも、声が出ない。
視界の端に、黒い髪が垂れ下がる。
次の瞬間、目の前が真っ暗になった。
翌朝、私の部屋はもぬけの殻だった。
玄関の鍵は、内側からきちんとかかっていたという。
ただ一つ。
インターホンの録画履歴に、奇妙な映像が残っていた。
午前2時17分。
カメラに映るのは——
ドアの前に立ち、無表情でこちらを見つめる、私自身の姿だった。