テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
猫好きのお部屋
208
#不気味
深夜2時17分。アパートのインターホンが鳴った。
——ピンポーン。
こんな時間に?
私は一人暮らしだ。訪ねてくる人なんていない。
恐る恐るモニターを確認する。
誰も、映っていない。
いたずらだろうか。そう思って無視した。
——ピンポーン。
今度は、さっきより長い。
背筋が冷える。
モニターを見る。やはり誰もいない。
だが、よく見ると……画面の端に、何か白いものが映っている。
髪だ。
長い黒髪が、カメラのすぐ下から、垂れ下がっている。
息が止まる。
私は動けないまま、画面を見続けた。
すると、ゆっくりと。
その髪の隙間から、目が現れた。
異様に大きく、瞬きもせず、まっすぐこちらを見ている。
——ピンポーン。
今度は、鳴らしていない。
画面の女が、口を開いた。
音声は繋がっていないはずなのに、スピーカーから声が聞こえる。
「……いるよね?」
心臓が激しく打つ。
私は後ずさる。
その瞬間、玄関のドアが、内側からノブを回すように——
ガチャ。
鍵は閉めている。チェーンもかけている。
なのに、ゆっくりと、隙間が開いていく。
外からではない。
内側から。
まるで、もう“中”にいる誰かが、開けようとしているみたいに。
背後で、床がきしんだ。
振り向く。
何もいない。
だが、確かに足音がした。
スマホが震える。
通知が一件。
知らない番号からのメッセージ。
いま、うしろにいるよ
凍りつく。
首筋に、冷たい息がかかる。
「やっと、見つけた」
耳元で、女の声。
私は叫ぼうとする。
でも、声が出ない。
視界の端に、黒い髪が垂れ下がる。
次の瞬間、目の前が真っ暗になった。
翌朝、私の部屋はもぬけの殻だった。
玄関の鍵は、内側からきちんとかかっていたという。
ただ一つ。
インターホンの録画履歴に、奇妙な映像が残っていた。
午前2時17分。
カメラに映るのは——
ドアの前に立ち、無表情でこちらを見つめる、私自身の姿だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!