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#宵闇怪奇譚
桜城
588
ほっかい広産🧂
133
デュラハン。
ロストウィルム。
二つの国の国境に広がる荒野。
そこでは、既に戦いが始まっていた。
「押せぇぇぇ!!」
「敵を前へ出すな!!」
剣と剣がぶつかる。
槍が盾を叩く。
魔法が飛び交い、地面が次々と抉られていく。
その戦場へ。
新たな軍勢が姿を現した。
銀色の鎧。
統一された装備。
そして、その中央に掲げられた旗。
――王国白銀騎士団。
「白銀騎士団だ!!」
「援軍が来たぞ!!」
味方の兵士たちから声が上がる。
だが。
その先頭にいる人物を見て、一部の兵士がざわついた。
「……団長は?」
「カイル様はどうした?」
答える者はいない。
カイルは、この場にいなかった。
白銀騎士団の指揮を執っているのは。
副団長、リシア・エルフェルト。
「全軍、止まらないで!」
リシアが声を張る。
「第一隊は左翼へ!」
「第三隊は敵の魔法部隊を警戒!」
「第五隊は後方支援!」
次々と指示を飛ばしていく。
騎士たちは迷わない。
リシアの指示に従い、それぞれの持ち場へ散っていく。
その頃。
少し離れた場所。
ユナは小型の魔導端末を操作していた。
空中には、戦場を映した立体映像が浮かんでいる。
「……敵軍、東側から増援を確認」
「数、およそ五百」
ユナは情報をまとめる。
そして通信魔法を繋ぐ。
「こちらユナ」
「王城へ報告します」
『こちら王城。どうぞ』
「現在、戦場はデュラハン側がやや優勢」
「ただし、敵軍東側に増援部隊を確認しました」
『了解』
「続いて、白銀騎士団が戦線へ合流」
「現在、副団長が全軍を指揮しています」
通信を切る。
ユナは再び戦場を見る。
「……まだ何かある」
敵軍の動き。
兵士の配置。
魔法部隊の位置。
補給線。
ユナはそれらを一つずつ確認していく。
「リシア副団長」
通信を繋ぐ。
『何?』
「敵軍の主な行動を索敵します」
『お願い』
「了解」
ユナは端末を操作する。
すると。
上空から小さな機械が飛び出した。
ブゥゥゥン……
小型の魔導ドローン。
戦場上空へ上昇していく。
「高度上昇」
「敵陣を確認」
ドローンから送られてくる映像が端末へ表示される。
敵軍の陣形。
兵站。
馬車。
武器庫。
そして。
「……妙ですね」
ユナが眉をひそめる。
「敵の本隊が、少し後ろに下がっています」
通信を繋ぐ。
「副団長」
『聞いているわ』
「敵軍、本隊が前線から距離を取っています」
「代わりに、中央へ兵を集めている」
リシアが考える。
『……何か仕掛けてくる』
「私もそう思います」
ユナはさらにドローンを前進させる。
「もう少し奥を――」
その瞬間。
映像が乱れた。
『ザー……』
「……?」
ユナが画面を見る。
「通信障害?」
映像が途切れかける。
しかし。
一瞬だけ。
敵陣の奥に巨大な魔法陣が映った。
「……!」
ユナの目が見開かれる。
「副団長!」
『どうしたの!?』
「敵陣奥部に、大規模な魔力反応!」
「まだ詳細は不明です!」
リシアの表情が変わる。
『全隊に警戒を伝えて』
『今すぐ!』
「了解!」
ユナは王城への通信も同時に開く。
「こちらユナ!」
「敵軍後方に大規模魔力反応を確認!」
「詳細は現在解析中!」
『王城、確認しました』
「引き続き監視を続けます!」
通信を切る。
ユナは空を見上げる。
上空では。
何台もの魔導ドローンが戦場を監視していた。
「……何をするつもりなの?」
その頃。
戦場中央。
リシアは剣を抜いた。
「全軍!」
「敵の次の動きに備えて!」
白銀騎士団が一斉に構える。
戦争は。
まだ始まったばかりだった。
砂煙が舞う戦場。
遠くでは、剣戟の音と兵士たちの怒号が響いている。
デュラハン軍の陣地。
その中心に設けられた天幕の中で、王テッードは地図を眺めていた。
そこへ。
「テッード様、報告です」
一人の兵士が天幕へ入ってくる。
テッードは顔を上げる。
「申してみよ」
「はい」
兵士は手にした端末を確認する。
「少し、戦況が変わったようです」
「……というと?」
テッードが地図から目を離す。
兵士は僅かに口元を緩めた。
「あちら側が、メインディッシュを早めに用意していただけたようです」
「……メインディッシュ?」
テッードは一瞬、意味を理解できなかった。
そして。
「ふっ……」
小さく笑う。
「なるほどな」
兵士が続ける。
「白銀騎士団が戦地へ合流しました」
「ほう」
「ただし、団長の姿は確認できません」
テッードの目が細くなる。
「副団長が指揮を執っているようです」
「リシア・エルフェルトか」
「はい」
テッードは地図上の一点を指でなぞる。
「それで?」
「敵軍は各所に索敵用の機械を展開しています。空中からの監視も確認されました」
「ドローンか」
「おそらく」
テッードは特に驚いた様子もなく、地図へ視線を戻した。
「こちらの動きを探っている、と」
「はい。向こうの副団長から、王へ逐次報告も行われているようです」
「……なるほど」
テッードは少しだけ笑った。
「こちらを丸裸にするつもりか」
兵士が尋ねる。
「いかがいたしましょう?」
テッードは立ち上がった。
鎧が僅かに音を立てる。
「そのまま進軍だ」
「……よろしいのですか?」
「ああ」
テッードは天幕の外へ視線を向ける。
砂煙の向こう。
敵軍の旗が見えている。
「向こうがこちらを知ろうとしているのなら」
「こちらも、向こうが何をするのか見届ければいい」
「しかし、敵に動きがあった場合は?」
「報告しろ」
テッードは馬へ向かって歩き出す。
「何かしら動きがあれば、その都度報告を」
そして。
馬へ跨る。
「以上だ」
兵士は敬礼する。
「はっ!」
テッードは手綱を握った。
「さて……」
口元に笑みが浮かぶ。
「ようやく、面白くなってきたではないか」
デュラハン軍。
再び。
前進を開始する。
砂煙が戦場を覆っていった。
コメント
1件
うわ、めっちゃ戦場の空気感が伝わってきた……第41話「準備運動」ってタイトルだけど、もう全然準備運動の域超えてる(笑) 特にユナちゃんのドローンを使った索敵シーンが好みだな。“魔導ドローン”って発想、世界観とテクノロジーの融合がうまくて、設定好きとしてはニヤリとしちゃう。あと敵陣奥に一瞬だけ映った巨大な魔法陣……これは明らかに後で炸裂する伏線だよね。 テッード王の「メインディッシュを早めに用意していただけた」って台詞、不気味すぎてゾクゾクした。この人の余裕、何か裏があるんだろうな……次が気になる!