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詩帆ちゃんの恋愛偏差値が低いのは納得だけど(失礼(^◇^;))涼平さんは詩帆ちゃんに対してだよね🤭 菜々子さんの時から開きすぎて涼平さんが初めての彼氏になる詩帆ちゃんとの初デートがわからないのがとても可愛い😍🩷 詩帆ちゃんも自分の希望がベタでもちゃんと伝えて良き✨💏
次の日の土曜日、詩帆の仕事は朝十時からの通常シフトだった。
朝のスケッチは、日の出がだいぶ遅くなったため昨日を最後に終わりにした。
久しぶりにのんびりした朝を迎えた詩帆は、ベーコンエッグを作りトーストとコーヒーを添えてゆっくりと朝食を食べ始めた。
食事をしながら頭の中では昨日の事を思い返していた。
涼平と付き合う事を承諾したが、「付き合う」ってどういう風に始まるのかな? 詩帆はそんな事さえわからず色々と思いを巡
らせていた。
そしてあまりにも自分の恋愛偏差値が低い事に気づき愕然とする。
それ以上考えても無駄だと思った詩帆は、朝食の片付けをした後身支度をして仕事へ向かった。
一方、この日涼平は仕事が休みだった。
朝早く起きてネットで波のチェックをしたが、波はイマイチのようだ。
既に海にいる仲間からは今日はやめておいた方がいいという連絡を受けた。
だから今朝は海に行くのはやめた。
昨日聞いた話では、日の出の時間が遅くなったので詩帆も朝のスケッチは終わりにしたと言っていた。
だから早朝の海に行ってももう詩帆とは会えない。
(いや待てよ? 俺は、詩帆ちゃんに会いたくて朝の海に通い続けていたのか?)
涼平は思わずフフッと笑う。
涼平が足繫く海に通っていたのは、サーフィンの為ではなく詩帆に会う為だという事に今頃になって気付いたのだ。
それから涼平は無意識にパソコンの検索画面で『初デート』と入力していた。
すると初デートに関する項目がいくつも表示される。
『初デート完全マニュアル』『失敗しない初デート』『初デートの場所オススメ10選』など、初デートに関する情報が色々書
いてある
(おいおい俺は中学生の男子か?)
涼平は自分で突っ込みを入れながら苦笑いをしつつ慌ててその画面を削除する。
自分から詩帆に「恋愛をイチから始めてみないか」と言っておきながら、その『イチ』の始め方がわからなくなっている事に涼
平は愕然としていた。
(俺の恋愛偏差値はかなり低くなっているぞ)
そう思いながら、一度背筋を伸ばして椅子に座り直すと次にパソコンで地図を開く。
地図は辻堂の辺りからエメラルドグリーンの海で有名な静岡の下田辺りを表示させた。
いつか詩帆を連れて行ってやりたいと思っているあの下田の海だ。
日帰りでも行けない事はないが、時間をたっぷりとって海でゆっくり詩帆に絵を描かせてやりたい。
するとどうしても一泊になる。しかしいきなり泊まりとかはナシだろう。
となる他の場所か? いや、でもこの辺りで下田以外にエメラルドグリーンの海はない。
悩んだ末、とりあえず涼平は詩帆へメッセージを送ってみる事にした。
【おはよう、今日は仕事かな? 初デートに行きたい場所があったらリクエストを受け付けますのでなんなりとどうぞ】
これでいいだろう。
詩帆が行きたい場所があれば、そこへ連れて行ってやるのが正解だ。
少し満足した涼平は、一旦椅子から立ち上がるとたまっていた洗濯物に取り掛かる事にした。
その頃、詩帆は少し遅めの休憩に入っていた。
サンドイッチとコーヒーをトレーに載せてバックヤードの休憩室へ行く。
今日は土曜日で忙しいので、他のスタッフは店に出ていて休憩室には詩帆一人きりだった。
詩帆はサンドイッチを食べながらバッグから携帯を取り出す。
するとメッセージが来ていたので画面を開いてみると涼平からだった。
詩帆は少し緊張しながら姿勢を正してそのメッセージを開いた。
(初デート……)
その文字を見て詩帆はドキドキしていた。
涼平とはもう既に菊田の店や茅ケ崎のイタリアンの店に二人きりで行っている。あれはデートではないのか?
詩帆の頭は軽いパニックになりつつも、
(そうか! 付き合いましょうと言った後に初めて二人で会う事が、初デートなのね!)
と納得する。
そしてそんな事もわからない自分の事が可笑しくなり、思わずフフッと笑った。
そして、
「行きたい場所……」
そう呟きながら自分がどこへ行きたいかを考え始める。
特に行きたい場所なんてないかもしれないと思っていると、突然ピンと閃いた。
そしてすぐに返信を打ち始める。
【こんにちは。今日はお仕事で今昼の休憩に入りました。行きたい所は『江ノ島』なんですがどうでしょうか? 私、江ノ島に
は子供の頃に行ったきりなのでもう一度行ってみたくて。ベタ過ぎですみません】
そしてすぐに送信した。
江ノ島は詩帆のアパートからは4~5キロなので割と近かった。
ただ自転車で行くには微妙な距離で、だからといって電車でわざわざ行く感じでもない。
だからずっと行きたいと思っていたが行けずにいた。
子供の頃家族で行った思い出の場所にもう一度行きたいと思った詩帆は、思い切って涼平に言ってみる事にした。
メッセージを送信した詩帆は残りのサンドイッチを食べ終えると、また元気に午後からの仕事へ戻って行った。