テラーノベル
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101
恵
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「この曲、何がきっかけで作曲したの?」
楽曲を聴き終えた奏が、再び両手を組みながら美花に問い掛けた。
「先週、おにーさんとドライブデートした時、秋の風を切りながら車窓に映る秋の景色を見て、音が降ってきたんだよねぇ」
「そうなんだ。でも……」
奏が何かを言い掛けようとして、言葉を途切らせる。
「何ていうかさ、お義兄さんと楽しいデートのはずなのに…………何となく美花が切ないって、旋律を通して言っているように感じちゃったよ……」
奏の言葉に、美花が、ハッとしながら肩をビクつかせる。
マイナーな曲調の中に、仄かな明るさも感じられる曖昧な雰囲気の楽曲は、彼女の中で『秋風の爽やかさ』と『もうすぐ冬が始まるとともに、一年の終わりに近付いてきた時の寂しさ』を表現した。
作曲する事は、十二音と様々な音色で、音の物語を奏でつつ、情景や感情を表現していく。
自分が意図して作った音楽が、聴き手によっては違う解釈をして受け入れてくれた事に、美花は舌を巻いた。
「私は美花の曲を聴いて、あんたの気持ちが表れているようで切ないって思ったけど、奈美が聴いたら、また違った感想が貰えるかもね。音楽も、聴き手によって、感じ方が違うし……」
「なるほどねぇ」
美花は、奏から出されたストレートティーのカップを口に付けて、喉を潤す。
「でも美花。良かったじゃん。ずっと好きだったお義兄さんと、恋人同士になれて」
「うん。ありがと」
ローテーブルに置いたままのスマートフォンを、美花はバッグの中に納める。
「今日はお義兄さんとデートしないの?」
「するよ。今日は休日出勤してるから、仕事が終わったら、豊田駅まで迎えに来てくれる事になってるんだ」
「へぇ。お義兄さん…………やるねぇ。美花、愛されてるじゃん」
「えへへっ」
ニヤリと唇を歪めさせている奏に視線を突かれ、美花は紅潮しながら髪を掻き上げると、彼女のバッグから、メッセージアプリの受信音が、小さく響いた。
「おっ…………噂をすれば影かっ?」
奏に言われ、美花がスマートフォンを掴むと、通知センターのダイアログに圭からのメッセージが受信と書かれてある。
メッセージアプリを開くと、彼は豊田駅の北口に着いたらしい。