コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
一つ上の階の、一番奥にある資料室。もうこのフロアの人はほとんどが帰宅したのだろうか。人気もなく静かだ。
資料室のドアを開けると、前にここで伊吹にキスをされたことを嫌でも思い出す。
ぶんぶんと頭を振り、電気をつけて以前の資料を探し始めた。
たしかこの辺に……。ファイルを手に取ってめくっていると、ガチャッとドアが開く音がして、顔を上げた。
「花音?」
その少し低い声に、胸がどきんとひとつ鳴る。名前で呼ばれると、土曜日に熱く抱かれたことを、身体がじわっと思い出す。
「な、永井くん? どうかした?」
私は棚の横から顔だけ出して、声をかけた。「階段登ってくのが見えたので。探し物ですか?」
すたすたと近づきながら永井くんはそう私に訊ねた。
「う、うん。カタログの資料で確認したいことがあって」
へーと相変わらずの乾いた返事。
「手伝いますよ?」
少し口角を上げた永井くん。彼の優しく穏やかな顔を見ると、なんだか心がほっとする。
じゃあ、これとこれと……とリストアップしておいたメモを見ながらお願いをした。
実際にひとりでやっていたら探すだけでも一苦労だったから、とてもありがたい。
私の見ている棚のすぐ後ろ側で、永井くんはファイルを探し始める。
「……永井くん、仕事は?」
「もう終わりました。今日はノー残業デーですし」
しまった、そうだった。毎月第三金曜はノー残業デーとして設定されている。いつも残業している人も、次々と帰っていくので不思議に思っていたけれど、合点がいった。
「ごめんね、手伝わせちゃって」
「大丈夫ですよ。それより」
「ん?」
すっと後ろを振り返り、永井くんの方を向く。
「どんなことしたんです? 風見さんとここで」
意地悪そうに笑いながら、永井くんは目だけすっと私に向ける。
「ど、ど、どんなって、べ、別に!!」
資料を2人で確認している時に、そっと触れるだけのキスをされた。それ以上は何もない。
あわてて弁解しようとしたけれど、永井くんにぐっと手を引かれて、ファイルがドサドサっと床に落ちる。
あっ……と声を上げている間に顎をすくわれて、キスが降ってきた。
「……んっ、んんっ!!」
ぎゅっと腰を引き寄せられて、彼の匂いでいっぱいになると思考が止まった。
ここが会社だとか資料室だとか、そのすべてを飛び越えて、絡みつくいやらしい口づけに、溺れてしまいたくなる。
「ぷはっ……な、永井くん!!」
「どんなキスしたんです? ここで」
額や耳にキスをされながら、そう訊かれ、ちゅっとリップ音がいやらしく耳に響く。
「そんな、ちょっと触れたくらいで……あっ……!」
ニットの上から胸をぐいっとつかまれる。永井くんは的確に服の上から硬くなった胸の先端を探し当てて、指で転がされる。
「ここまで、した?」
耳元で訊かれてふるふると頭を振る。
「し、してな……いっ、んんーっ!!」
声が抑えられなくて、口に手を当てた。それでも彼は手を休めることはなく、ニットの裾から入ってきた指が、下着をずらしてぴんと先端を跳ねる。