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《????》
目が覚めた……布団で寝かせられてる……?
「知らない天井だ……」
時刻は深夜だろうか、身体を起こした時に見えた魔法時計の青光する時計針を見ると2時を指していた。
「僕は……確か山亀と戦っていたはず……」
頭を触ると獣人化してた耳もなくなっていて服も道場に置いていた最初の青い服だった。
「……あ」
確か俺は魂を代償にする魔皮紙を使って【武器召喚】して____
「まさか、僕死んだ?」
自分の身体を確認する。
動くたび、たぷんと揺れる胸が――うん、正直めちゃくちゃ邪魔。
しかもこのサイズ、明らかに「狙ってる」としか思えないレベルで大きい。
……で、下を確認しても“例のもの”が、どこにも、ない。
つるんとしてて、ちょっと……いや、かなり戸惑う。
それから、しゃべるたびに耳に届く声も――
自分で言っててゾクッとするくらい、甘くて高くて、ちょっと耳に残る感じ。
「いつも通りの僕の身体だな」
生きてる?死んだ事ないから解らないけど生きてると思う……
「起きたのじゃ?」
「!?」
気を抜いてる時に声をかけられて、肩がビクリと跳ねた。
心臓が一瞬だけ、止まりかけた気がする。
「だ、誰?」
そう言うと、窓から差し込む月明かりが、静かに彼女の姿を照らした。
歳上のお姉さんって感じの整った顔立ち。
背中まで流れる、明るい藍色――ホリゾンブルーの長い髪が月光を受けて、ほんのり光っている。
そして黒地に金模様が入った、艶やかな和装。
胸元はアオイよりは控えめ……だけど、しっかり主張している二つの山。
全体的に落ち着いた雰囲気なのに、どこか華やかで――目を引かずにはいられない。
「そんなに驚かなくて良いのじゃ」
「ごめんなさい」
「気分はどうなのじゃ?」
…………あと……その語尾はなんなのだ……
「今の所はなんとも」
「ふむ、そうか、なら問題ないのじゃ」
「あ、あの……いったい僕は……」
そう聞くと彼女は手をふって部屋の明かりをつける。
「どうなったか? と聞きたいのじゃ? ――残念ながら、それはワシも知らぬ。ただ、ワシはお主を買っただけなのじゃ」
「……はい」
……なるほど。
つまり――
思い出せないのは、奴隷商にとって“都合の悪い記憶”があるということか。
今の俺には強烈な違和感がある。けれど……この違和感も、やがて“呪い”によって馴染んでいくのだろう。
実際、そうやって考えているのに――なぜかもう、思い出そうとする気が、すうっと消えていく。
「私の元マスターの方は……?」
確か、羊の獣人だったはずだ。
「お主の昔の主人なぞ、ワシが知るわけないのじゃ。……まぁ、『あの方』が振る舞ってくれた肉料理は――うふふ、ジュルリ」
「……?」
「お主、ラム肉というものを知っておるのじゃ?」
ラム肉。どこかで聞いたことあるな……えーっと、たしか――なんかの肉だったよな……?
「聞いたことくらいしか無いです」
「そうか、解ったのじゃ……」
「すいません」
新しいマスターはがっかりしている。
「まぁ良い、ワシの名前は“ルカ”なのじゃ。わかっておると思うが――今後はワシの言うことに従うのじゃぞ」
「はい、わかりました」
はぁ……また奴隷生活に逆戻りか……
「……」
「む? どうしたのじゃ?」
俺は布団から出て、すっ……と地面に正座して頭を垂れる。
そう、ジャパニーズ土下座。
「これからよろしくお願いいたします、マスター」
「ななななっ!? なにをしておるのじゃお主!」
「???」
む? なんか、めっちゃ焦ってる。
……え? こんなの、奴隷間じゃ常識なんだけど?
「どうかされましたか?」
「うぐ……その声と顔でやられると……」
「?」
「こ、これは命令じゃ! ワシのことは“ルカ”と呼び、友達のように接するのじゃ!」
……………………はっはーん♪
なるほど、そういうことか!
「うん! よろしくね、ルカ!」
「き、切り替えが早すぎるのじゃー!?」
――ふふん、わかったぞ。今回のマスターは、きっとどこかのお嬢様で……きっと友達がいなかったんだ!
だから奴隷を買って、友達を作った。
そういうことだ! 間違いない!
フッ……どうなることかと思ったけど、やっと俺にもまともなマスターが現れたんだな!
やった! これはもう、一生ここに住ませてもらうしかない!
……あれ? “住ませてもらう”ってことは――養われる……?異世界ヒモ生活?
……まぁ、いいや!!
「ルームシェアみたいな感じがいいのかな?」
「何を言っておるのじゃ? とにかく――友達として接しても、ワシが“マスター”なのは忘れちゃダメなのじゃ!」
「うんうん♪」
ツンデレかな?
「ふぅ……なんかドッと疲れたのじゃ……」
ルカが肩に手をやって、コリコリしてるジェスチャー。
すかさず俺は背後に回って、肩を揉む。
「こってますね〜お客さん」
「うへぁ……気持ちいいのじゃ……」
お〜、ほんとに気持ちよさそうな顔してる。
ちょっと誇らしい。
「それはよかった♪」
「この身体になってから、肩こりがひどくての〜」
「あー……わかる、それ。ほんと肩こるよねぇ〜」
そうなんだよなぁ……俺もこの身体になってから肩めっちゃこるんだよなぁ。
絶対、胸が原因だよこれ。…………って?
――ん?
「“この身体になって”?」
「あっ……」
「それは、どういう__」
「な、なんでもないのじゃっ!」
「……」
ま、まぁ……あれだ、うん、察した。
この人、元男だな。きっと。
女の子に憧れてたんだな、この人は……
――男から女になっても、ろくなことないのに……ソースは俺。
「き、今日はもう遅いのじゃ。明日、お主の準備をいろいろするのじゃ。だから今夜はもう寝ておくのじゃ」
「準備……?」
「お主には明後日から――
ワシと一緒に【魔法学校】に入学してもらうのじゃ」
……うそでしょ?
まじ? マジなのこれ!?