カズヤは醜い人間が嫌いだと言っていた。カズヤは人間の心を癒すことができる、感情を持つロボットを世界に放つことによって、人間の醜い所を取り除こうとしていた。
しかし結局は人間の生活が少し良くなるだけで、醜さは変えることができなかった。自分の都合の悪い存在や、自分より下の存在を妨げる人間の習性の対象の「一部」が、ロボットに変わっただけであった。それをカズヤが嘆いていたことは間違いないだろう。ともかく世界に広まった噂は瞬く間にカズヤを悪者にした。
噂が広まり始めたころからカズヤは行方を眩まし、俺達家族とも連絡が取れなくなってしまった。しかし俺は今もカズヤはテロには無関係だと信じている。自分の息子が悪者だと思いたくはないだけかもしれないが、そもそも噂の広まり方が異常だったのだ。
各国のメディアは毎時カズヤがテロに関わった犯罪者だと報じ、政治家や影響力を持つ人間もカズヤを非難し始めた。きっと世界のお偉いさんからの圧力があったに違いない。彼らにとって影響力の強すぎるカズヤは邪魔な存在だったはず。
俺が一連のことを「噂」と言っているのには理由がある。証拠がないのだ。カズヤがやったという証拠が。それなのに世間はカズヤを悪者にした。俺はもう家族以外誰も信じられなくなった。世間を恨みながら死ぬだろう。
最近嫁の病気の進行が早くなっている。とても辛そうだ。もう、長くないのかもしれない。もっとも俺もいつ逝ってしまうかわからない。だからこうして俺の知っていることと思いを記しておく。そしてもしカズヤがこの日記を見つけた時のために綴っておく。
カズヤ、誕生日おめでとう。俺とお母さんは死ぬまでお前のことを愛している。
カズヤに会いたい。,,
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