テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ネコ科フェの午前中の業務が終わる。
昼休憩をとろうと、店の鉄扉にかけた札を『休憩中 邪魔したら、王族でもガチで殴る! 店内でのダジャレはご遠慮ください』に変更した。
日本語で書いてあるため、この世界の住人には読めないはずだ。
「ピンポーン♪」
営業時間外に、少女がやってきた。
インターフォンなんて、店にはない。
少女が口で言っているようだ。
扉のスキマから、少女が顔を覗かせる。
どこを見ているのか分からないハミデールの王女、通称:『ドコミ王女』だ。
「王族への攻撃準備よし!」
レンタロウは、護身用グッズ(モンキーボール)の具合を検める。
モンキーボールとは、鉄球や木球を芯にして、パラシュートコードなどの紐でグルグルに編み込んだオシャレなグッズだ。
ズリオチール王国では武器の製造・所持が禁止されている。
レンタロウは、ギリギリセーフの護身用グッズを、カッチカチの泥ダンゴで制作したのだ。
試しに鉄にぶつけてみたら、木っ端微塵に粉砕した。
「スミマセン。休憩中です!」
マッドボール・スマッシュぅ!
レンタロウは、即席のワザ名を叫ぶ。
ドコミ王女のアタマを、鉄でさえも砕くモンキーボールでひと殴りした。
ポンッという軽快な音がしたかと思えば、バリカタのモンキーボールが粉砕した。
とんでもねぇ石頭王女だな……。
また来週! と言いながら、レンタロウは全力で扉を閉めた。
扉に挟まった状態で、変顔をしたドコミが仕切り直してくる。
「レンコンタロウ、はやく開けなさい。ピンポーン♪」
「薬のCMっぽい。やりなおし!」
「ハスタロウ……」
「レンコンをハスに言い換えたから、アウト」
扉を閉めるレンタロウの手に力がはいる。
これでもかといわんばかりに、ギュウギュウと押しかえす。
「ぎゅうっと押さないで! 顔がウシになりそうだわ……ぎゅうだけに!」
「当店はダジャレ禁止です。おかえりください」
「アナタを召喚した女神がお土産なんだけど……恨みを晴らしたくない?」
簀巻きにされた女神らしき素王女が、ドコミ王女の足元に転がっている。
王家の座椅子に載せて運ばれてきたらしい。
「いらっしゃぁ~い!」
レンタロウは、光の速さで王女を店内に招き入れた。
「誤召喚&追放の件で話があってきたの」
王女、どこ見てんの?
敵の戦闘機をロック・オンしてる?
ドコミ王女は、女神を載せてきた座椅子に腰をおろした。
王都で会ったときは、ほぼ後頭部しか見てなかったな。
改めて見ると、期待を裏切らない美少女系ってやつか。
そういや、王女の名前って……ゴブミ、ドクミ?
確か、日本最大手の通信キャリアっぽい名だ。
「NTTドコミ王女殿下。何かお飲みになりますか?」
「気軽にドコミと呼んでちょうだい」
「じゃあ、ゴミ王女……」
「気軽を通り越して、“津軽”に到着してるのよさ!」
「高貴な……ゴミ?」
「みぞおちを殴っていいかしら? 三味線で」
「女神の?」
「すでに殴り倒したから、もういいわ。三味線の先っちょでね」
ドコミ王女に、こってりド突かれたらしい。
女神通信(メモ)でみせた、ハイテンションさのカケラもない。
なんだか女神が可哀そうになってきた……。
レンタロウは、ビッタビタの雑巾で女神の涙をぬぐう。
「アナタを誤って召喚した張本人よ?」
「そうだった……」
ちょっとくらいお仕置きしてもいいよね?。
「それって、牛乳を拭いた雑巾かしら?」
ドコミ王女が雑巾の絞り汁を女神にたらす。
「そんな酷いことしないって……1年くらい洗ってないやつだ」
「ならいいわ」
女神は、なんだか嬉しそうだ。
頬を紅潮させているところを見ると、相当なヘンタイらしい。
「レンコンタロウ。女神にお仕置きをしたいの」
「さんざんシバキ倒したんでしょ?」
「まだ足りないわね。なんだか、女神をブン回したい気分なのよね……」
「洗濯機が良いんじゃな~い?」
「借りてもいいかしら?」
「業務用のヤバイやつだよ?」
「女神は死なないから安心なさい」
物騒な会話をしながら、レンタロウたちは店の裏手にある洗濯機を目指す。
「そういや、女神の名前ってなに?」
座椅子で運ばれる女神に、レンタロウが問いかける。
「カタクリコ・ポテイトゥ・スターチ・ゴールドブレンドと申します」
「なんかのコンテストで受賞した感じか?」
「ポテイトゥ・スターチって片栗粉って意味だし、長いから、女神に超へんなアダ名をつけたいわね」
ドコミ王女は、簀巻きにしているヒモを、きつく結び直した。
「カタクリ子さんと似てない?」
レンタロウが女神にジットリとした目を向ける。
「私がモデルです。コピーして作りました」
「齢はいくつなの?」
「小型の犬だと1歳です」
人でいうと17歳らしい。
女神の顔面偏差値は『85』くらいか。
図書室に入り浸っていそうな、おとなしそうな見た目。
しゃべるとアホまる出しだが。
「メガクリ子」
思考時間0・05秒。
レンタロウは、テキトーなアダ名を口にする。
「女神ザルは、どう? メガネザルっぽくて良さそうだわ」
ドコミ王女は、店の裏手にある魔導式洗濯機に女神を放り込む。
簀巻き状態のままで。
脱出系のマジックショーかな?
レンタロウは、グルグルと回る女神を、薄ら笑いで眺めている。
ドコミ王女は、洗濯機のパワーをMAXに切り替えた。
時間は20分に設定。
「女神が何かやらかしたの?」
「大事にとっておいた私のプリンを、クソ女神が勝手にたべちゃったから。期限が過ぎてたから、別にいいんだけど」
「なら、僕は何も言うまい」
期限が切れて1年経ってるんですけどねっ! と、ドコミが付け加えた。
「とるねぇど・ぽていとぅ~!」
女神が意味不明な悲鳴をあげる。
超高速でブン回る女神を確認すると、レンタロウとドコミ王女は、フロアへと戻った。
「石頭のゴミ王女、何か飲む?」
「タピオカを?」
「また鼻に詰めようとしてない? というか、良く噛め!」
「これをいただこうかしら?」
ドコミ王女は、“メニューに挟まった虫”を指さした。
おまえもかい!
「仕方ないわね。この小さいのにするわ」
「ページ番号だっての!」
「これは?」
「テーブルの木目……」
ドコミ王女は、商品ではないものを次々と指定する。
だから、どこ見てんだよ!
全力で殴りてぇ……。
埒が明かないので、適当な飲み物を|見繕《みつくろ》うことにした。
10リットル入るジョッキにタピオカを移す。
ドコミ王女が鼻に詰めないよう、“直径5センチ”の特大タピオカを使用した。
こんだけ大きいと、もはや卓球のボールだな……。
今朝仕入れたばかりの紅茶スライムを絞り出した。
続けて、ミルクスライムを、たっぷりブチュっと投入。
ガムシロップ・スライム(およそ1リットル)を添えて終わり。
特製『タピオカ・ロイヤル・ミルク・スライムティー』の完成だ。
総重量20キロを超える飲み物を持つと腕にくる。
レンタロウは、腕全体をプルプルさせながら、フロアへと運んだ。
「いいわね、このジョッキ。女神を殴るのにちょうどよさそう」
とか言いながら、ドコミ王女がタピオカを鼻に詰めようとしている。
いや、絶対ムリだろ。
あれ? 王女の鼻には余裕で入るんだね、直径5センチのタピオカ。
ゴリラの鼻にしか見えないんだが……。
ドコミ王女は、20キロのタピオカミルクティーを片手で軽々と持ち上げる。
風呂上りのオジサンのように、片手を腰に手をある。
小指を立てて握りしめるジョッキに口をつける姿は、まさに王族。
「おいすぃ~!」
ドコミ王女は、ミルクティーを飲んでいない。
タピオカだけ口に入れたようだ。
頬を膨らませたドコミ王女が、苦しそうにレンタロウを見やる。
ハムスターの王女かお前は!
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#玉座がメインヒロイン
#漫画原作希望