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それから一時間ほど経過した。

瑠衣と優斗は午後十時までの勤務だったが、栞はそろそろ上がる時間だった。


アルバイトを始める際、栞が父とした約束は、『遅くても夜8時まで』というものだった。

その約束を、栞は今でもきちんと守っている。


他の高校生たちが夜の9時~10時までバイトをする中、栞は毎回8時になると一足先に上がる。

今日も、ちょうど8時になると同時に社員が栞に声をかけた。



「栞ちゃん、もう上がっていいよ。お疲れ様!」

「はい。じゃあお先に失礼します」



栞はスタッフたちに挨拶をしてから、ロッカールームへ向かった。



栞が高校の制服に着替え、荷物を持って裏口から外に出ると、ちょうど先ほどの半グレ二人組が食事を終えて店を出てきたところだった。

二人は店を出るなり、たばこを吸い始めた。



(うわっ!タイミング悪すぎ…….)



栞はそう思い、なるべく二人と目を合わせないようにしながら駐車場を横切り表通りへ向かった。

しかし、二人は栞に気づいていた。

一人が栞の前に立ち塞がり、話しかけてきた。



「お姉ちゃん、店にいたバイトの子だよね?」

「………」

「おっ、無視ときたか! そりゃつれないなぁ……ちょっと俺たちとお話ししようよぉ」



もう一人も栞の傍へきた。

栞は恐怖心を抑えつつ表通りへ急ごうとしたが、金髪の男が栞の腕を掴み、耳元で低く言った。



「俺らがさぁ、ここに来てる目的って知ってる? それは、君とお友達になりたいからなんだよ」



男のむわっとした煙草臭い息がかかり、栞は思わず顔を歪めた。

それに苛立った男は、栞の腕をさらに強く掴みながら言葉を続ける。



「家まで送ってあげるから、車へ行こうか」



栞は恐怖心に襲われ、パニックに陥った。

こういう場面では、車に乗せられてしまったら最後だと、以前何かのテレビで警告していたような気がする。

思わず栞の身体は恐怖で震えた。



「い、いえ、結構です……」

「せっかく送ってあげるって言ってんだから、遠慮しないで乗りなよー」



もう一人の男がニヤニヤしながら言い、栞の恐怖心をさらに煽る。



「だ、大丈夫ですからっ! や、やめてくださいっ!」



栞が必死に男の手を振り払おうとすると、ニヤニヤした男が反対側に回り込み、栞のもう片方の腕を掴んだ。

栞は全力で抵抗するが、体格のいい大人二人に両脇を抱えられてしまったら、逃げ出すことは不可能だった。

危機感を感じた栞は、周囲を必死に見回し、誰かに助けを求めようとした。

しかし、ここはファミレス内からは死角になっている場所なので、店内の仲間たちにも気づいてもらえない。



(どうしよう……)



栞が絶望感に苛まれていたその時、駐車場に一台の車が入ってきた。

車のヘッドライトが、栞と男たちを照らし出す。

そこには、制服を着た女子高生が、半グレの男二人に車へ押し込まれようとしている光景がはっきりと映し出された。

その異様な状況は、車の運転手の目に明確に映ったはずだ。



車が駐車場内に停車すると、すぐに運転席のドアが開いて、中から運転手が降りてきた。

暗くて顔ははっきりと見えなかったが、男性のようだ。


男性は車を降りるとすぐに、半グレ二人に向かってこう言った。



「あらあら、寄ってたかって可愛い女子高生に、何をしているのかなぁ?」



その男性は、明らかに挑発するように言った。



「うるせぇ! てめぇには関係ねぇだろう! 俺たちは友達なんだ! だからあっちへ行けっ!」

「ふーん、友達なのに、彼女は随分とまあ怯えた顔をしているじゃないか」



男性がさらに挑発するように言った。

その時、栞はあの本に書かれていた一文を思い出した。



『搾取されないためには、自分の意見をはっきりと主張しよう! あなたにはその勇気がきっとある!』



そこで栞は勇気を振り絞り、震える声で力いっぱい叫んだ。



「私はこの人たちのことを知りませんっ! いきなり車に連れ込まれそうになりました。た…助けて下さいっ!」



その叫びを聞いた半グレ二人は、「チッ!」と舌打ちしてから、急に腕を放すと、栞を男性の方へ押しやった。

男性はよろめいた栞をしっかり抱き留めると、二人に向かって毅然とした声で言った。



「証拠は押さえたぞ! 俺は非番の刑事だ! 彼女が被害届を出せば、これはりっぱな犯罪になるぞ! 捕まりたくなければ、とっとと消え失せろ! もう二度と彼女に手を出すな!」



その言葉に驚いた二人は、ハッとして男性の右手に目を向けた。

暗闇の中で気づかなかったが、男性の右手には携帯がしっかりと握られていた。

今の出来事をすべて動画で撮影していたようだ。



相手が刑事だと言ったので、半グレ二人は血相を変えて慌てて車に乗り込むと、爆音を立てながら逃げるようにあっという間に走り去っていった。

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コメント

20

ユーザー

ヒーロー登場😎👍️💕 車で連れ去られずに済んで良かった~😌💓 ヒーローはやっぱりあの人....⁉️💖✨

ユーザー

嘘も方弁だわ.私の記憶では確かこの方◯◯だった様な気がするけど🤔🤔🤔栞ちゃんもちゃんと言えたね。偉い👏👏👏あの本は既に栞ちゃんにとって♡♡♡ルだね。

ユーザー

マリコ様2話更新ありがとうございました 良いファミレスで栞ちゃんバイトしていると思ったら半グレのお客に連れ去られそうになるなんて😢怖い思いをしているところにヒーロー登場‼️間一髪でしたね 勇気を出して助けを求められたのも先生の本に背中を押してもらえたから いつでも先生は見守っていてくれている感じですね❤️でもここに現れた刑事さん?職業は精神科医ではなかったでしょうか(o^^o)次が楽しみでし😊

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