10分後“俺は”河川敷に米田さんと二人で来ていた。
「何故俺をこんなところに?」
俺は米田さんにスマホをも見せつけて音声を流した。
すると、米田さんはおどおどしている様子でそわそわしていた。
俺はまた音声読み上げアプリに文を打ち込んでいた。
「あと、先輩はどこに?」
俺が外を出たときにはもう先輩は居なかった。
米田さんは“先に社長が行ってますんで。”なんて言って俺をはぐらかしていた。
「えっと、柴田さん落ち着いてください。きっとすぐに来るんで…。」
落ち着いて居られなかったのは米田さんの方だ。
そわそわしておぼつかなくて、先輩を一生懸命首をキョロキョロ見回して探していた。
そんなとき、彼女は大きな声で呟いていた。
「あ!社長!こっちです!」
俺は“社長”と呼ばれた先輩の方を見た。
ヘディングをしながらこっちに向かって来ている。
その足取りは昔よりもぎこちなくて、“慣れていない”という感じがしていた。
そんな足取りで蹴っていたのは、薄汚れた白と黒のサッカーボールであの日、この場所で遊んだ“あの”サッカーボールだった。