次の任務は、今僕の真隣にいる彼を殺すこと。
到底信じられない。
頭の中がグルグル回る。そんな僕を不思議に思ったのか、ケイが声をかけてきた。
「アズー?どしたん?誰から?」
僕は、この内容を、そして僕が殺しを働いていることがバレてはいけないと、慌てて返事をした。
「あ、いや。ううん。なんでもない。」
その声は、自分でも分かるほど動揺していた。
「ホントか〜?なら良いけど…。」
幸い、こいつはそういういうのには鈍感だ。
「き、今日、低気圧だから調子悪いんだよ…!」
などと、自分でも訳の分からない答えを返す。
「ま、そっか。お前テーキアツ弱いもんな。」
こいつが馬鹿で良かったと、これほどまでに思ったことは無い。
それから僕らは学校へ足を向けた。その最中も、いつもならくだらない事を話しているが、今日は任務の事で頭がいっぱいだった。
“次 殺 す 相 手 は 植 村 圭 一”
僕はこの事実にどうしても追いつけなかった。
どうしても、信じたくなかった。
その日、あまりにも頭がいっぱいで、授業に集中できなかったので、(逆に、友人を殺さなければならないのにここまで冷静な自分が異常だとも感じる。)放課後、僕は主様の所へ直接話をしに行く事にした。
ぶっちゃけ、僕は主様が嫌いだ。怖いし。
でも、ケイを殺すなんてことはしたくない。もちろん、死なせたくもない。
それなら、どうにかして交渉せねばならない。
僕は、ケイとの帰りを断り、足早に主様のもとへ向かった。
「久々だな…ここ。」
そう独り言を零す。独り言は恐怖の証だ。自分を落ち着かせるために独り言を呟く事が多いと、どこかで聞いた。
実際、僕にとって主様は”恐怖”そのものだ。
捨てられていた僕を助けてくれたことには大いに感謝している。
でも、そこからが地獄の日々だった。
僕は主様の犬となり、言うことを聞ければ褒められる。聞けなければ殴られる。そんな毎日だったため、僕はまるで、主様の操り人形だった。
圭一と出会って、洗脳は少しずつ解けていったものの、完全には解けてないし、きっとこの先も解けることはない。そう思っている。
過去のことを考えていると、頭が痛くなってくる。早く主様の場所へ向かおう。
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