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短い蔓が絡み合った様な茎に桃色がかった白い花弁が5枚。そこには黒い斑点が浮かんでおり、その中心には雄しべか雌しべか分からないが黄色い花粉を振り撒くものがついている。
茎は直接根に繋がっており、それがうねうねと動いて足場を不安定にさせる。生垣も今は檻のようになって逃げ道を塞いでいる。
羽根の生えた精霊達はその見た目をヒルのようにしてただの気持ち悪い羽虫の様だ。
なんてことだ。こいつらはこうして人をさらっては食糧としてしまうタイプのモノなのか。その正体こそ魔獣とは別の様だが俺はそんなモノに関わっている場合ではない。
このフィールドがコイツそのもののようだ。
俺を囲む生垣の檻からは耐えず何かの毒素が振り撒かれているし、奴の花粉はどうやら麻痺のようだ。羽根の生えたヒルは魔力を照射してくる。うねる根っこは先ほどから足場を揺らして襲いかかってきているが……。
「どれほどのものかと思ったが、大したことはないな」
状態異常は俺の耐性に弾かれ、ヒルの魔力は大したことなく俺に届く前にかき消される。足場はうっとおしいが、どれ、俺とどっちが強い?
ダンッと地面を踏みつける。亀裂が入り衝撃は放射状に拡がる。俺の魔力をありったけ込めた踏みつけ。
根っこは動きを止め、その身を細かく震わせている。ヒルたちは衝撃に全て堕ちてしまい、花はのけぞり空を仰いでいる。
「俺の勝ちだな」
とはいえこれはこのフィールドを支配しているヤツの魔力と俺の魔力の勝負での話。きちんとトドメは刺さねばなるまい。
全身に炎を纏う。この世界で纏魔と呼ばれるスキルに火の属性を付加したものだ。そして、近づき全身で奴の幹にタックルする。これは……たしかニホンの頃の、映画の鉄山靠とかいうやつを意識したものだが、果たして正しいやり方かは知らん。確かなのは、巨大な植物はその根を残して弾けてしまったという事実だけだ。
「いや〜、強烈だったのぅ! さすがにこれは死んでしまったかと思ったわっ」
倒せば息も絶え絶えなあの大女の姿で命乞いでも始まるかと思っていたのだが、何故だかあの植物の跡地に現れたのは1/5ほどに縮めたSDキャラの様になった女王様だ。しかもやけにハツラツとして「スッキリしたぁ〜」などと言っていたものだからどうしたら良いのか分からず、そいつに誘われるまま椅子に腰掛けてしまっている。
ちなみにこいつは元のサイズに合わせて作られている椅子では無理だからと机の上に座って茶を飲んでいる。行儀もクソもない。
「お主は私たちの恩人よ。まあ茶でも飲んで話でも聞いていってくれ」
俺はその茶を地面に捨ててやる。
「痺れ薬の入った茶を盛って何する気だ?」
「いだだだだだだだ! や、やめよ! ほんのイタズラ心だから! その手を離して! 頭が割れちゃうよの〜!」
「ちっ」
女王幼女はこめかみを抑えて悶えている。
「こんないたいけな幼女にアイアンクローなんぞかますとは……鬼か、お主」
「元は大女のクセによく言う」
「ちっ!」