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🔪ヴィス、ひとりの厨房
劇場は閉じられていた。
客席も、舞台も、ピアノも――
すべてが音を失ったまま、“冷蔵された空間”のようになっていた。
ヴィスは料理人のような白いコートを羽織り、
小さなキッチンカウンターに立っていた。
金髪は濡れて、顔には黒いバイザー、
口元には変わらずマスク――だが、その奥の唇が“何か”を噛んでいた。
「今日は、最後の晩餐だ。」
彼は、“無音”を材料にした料理を一皿ずつ盛りつけていた。
空の皿に、何もない空気だけを置いて。
🔪スケアリーの実況「無音フルコース・空気のキャビア添え」
「でたああああああああああああああ!!!!!」
スケアリーが天井から逆さまにぶら下がり、ナプキンで首をしめながら狂喜!
「これは……これはねぇ!!!
**“存在しない音を料理にした、究極の透明グルメ”!!!!」」
「一皿目!! “鼓動のゼロ煮込み”!!!
二皿目!! “息遣いのエスプーマ”!!!
三皿目は“絶叫のムース”!!!!」
「なにもない!!なにも見えない!!!!
でもね、舌が!!!**“聴こえない音”を噛みしめてる!!!!」」
🔪ユリウス、劇場に入る
ユリウスが静かにドアを開ける。
足音すら奪われる空間。
それでも彼の瞳は、確かにヴィスを捉えていた。
「……なぜ、そこまで“音”を消したい?」
ヴィスは答えない。
ただ、皿の上に最後の料理――
“自分の舌”を置いた。
🔪スケアリーの食レポ「無音自傷コンソメ・心音仕立て」
「うぶっ……でゅふっ……ふふっふふふふッ!!!!」
スケアリーがスピーカーの中から泡を吹きながら這い出てくる!
「ヴィスの舌!!!!ヴィスの沈黙!!!!
それがねぇぇぇえええ、**コンソメにしみっっしみなのよおおお!!!!」」
「これ、“自分の最後の音”を切り取って、食材にした料理!!!!」
「もう、音も悲鳴も痛みもないの!!!!
でも、**“孤独の旨味”だけが詰まってるの!!!!」
「食うと、喋れなくなる。
食うと、**“静かに泣ける”ようになるの!!!!」
🔪ヴィスの選択
最後の皿を差し出し、
ヴィスはユリウスに目で問うた。
「……お前にしか、この“無音の味”は届かない。」
ユリウスは黙ってそれを受け取る。
皿は空。
だが、その中には確かに、**“誰にも伝わらない苦しみ”**があった。
🔪ラスト:ひとつの“響き”
ヴィスが劇場の中央に立ち、
はじめてマスクを外す。
口を開く。
音は、出なかった。
けれど――
ユリウスの頬に、一滴だけ涙がこぼれた。
聞こえない声が、
“一番深い場所”に、響いていた。
次回 → 第四十話「最後の犯人」