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第三十九話「無音の料理、最後の響き」


🔪ヴィス、ひとりの厨房


劇場は閉じられていた。

客席も、舞台も、ピアノも――

すべてが音を失ったまま、“冷蔵された空間”のようになっていた。


ヴィスは料理人のような白いコートを羽織り、

小さなキッチンカウンターに立っていた。

金髪は濡れて、顔には黒いバイザー、

口元には変わらずマスク――だが、その奥の唇が“何か”を噛んでいた。


「今日は、最後の晩餐だ。」


彼は、“無音”を材料にした料理を一皿ずつ盛りつけていた。

空の皿に、何もない空気だけを置いて。




🔪スケアリーの実況「無音フルコース・空気のキャビア添え」


「でたああああああああああああああ!!!!!」

スケアリーが天井から逆さまにぶら下がり、ナプキンで首をしめながら狂喜!


「これは……これはねぇ!!!

**“存在しない音を料理にした、究極の透明グルメ”!!!!」」


「一皿目!! “鼓動のゼロ煮込み”!!!

二皿目!! “息遣いのエスプーマ”!!!

三皿目は“絶叫のムース”!!!!」


「なにもない!!なにも見えない!!!!

でもね、舌が!!!**“聴こえない音”を噛みしめてる!!!!」」




🔪ユリウス、劇場に入る


ユリウスが静かにドアを開ける。

足音すら奪われる空間。

それでも彼の瞳は、確かにヴィスを捉えていた。


「……なぜ、そこまで“音”を消したい?」


ヴィスは答えない。

ただ、皿の上に最後の料理――

“自分の舌”を置いた。




🔪スケアリーの食レポ「無音自傷コンソメ・心音仕立て」


「うぶっ……でゅふっ……ふふっふふふふッ!!!!」

スケアリーがスピーカーの中から泡を吹きながら這い出てくる!


「ヴィスの舌!!!!ヴィスの沈黙!!!!

それがねぇぇぇえええ、**コンソメにしみっっしみなのよおおお!!!!」」


「これ、“自分の最後の音”を切り取って、食材にした料理!!!!」


「もう、音も悲鳴も痛みもないの!!!!

でも、**“孤独の旨味”だけが詰まってるの!!!!」


「食うと、喋れなくなる。

食うと、**“静かに泣ける”ようになるの!!!!」




🔪ヴィスの選択


最後の皿を差し出し、

ヴィスはユリウスに目で問うた。


「……お前にしか、この“無音の味”は届かない。」


ユリウスは黙ってそれを受け取る。

皿は空。

だが、その中には確かに、**“誰にも伝わらない苦しみ”**があった。




🔪ラスト:ひとつの“響き”


ヴィスが劇場の中央に立ち、

はじめてマスクを外す。


口を開く。

音は、出なかった。


けれど――

ユリウスの頬に、一滴だけ涙がこぼれた。


聞こえない声が、

“一番深い場所”に、響いていた。





次回 → 第四十話「最後の犯人」



スケアリーイズム - 完全犯罪のレシピ

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