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「奇跡ってのはいつの時代も、夢とか希望とか愛とかそういうもので成し遂げられるものだ。素材を集めるのもそこらの凡夫には不可能だが、クスリを作れたところで最後の要素、愛ってのは俺には無理だからな」
奇跡。本当に……。
「あの鉱夫を愛する者が魔力の扱いに長けたものならいいが、大体はそうじゃない。ならどうするか。これも定番じゃないか? 愛の口づけっていうくらいだし、口移しが昔から行われた1番メジャーな奇跡のクスリの処方なんだよ」
一命を取り留め、みるみるうちに回復を始めた父ちゃんはすでに意識を取り戻し、助かった経緯とクスリについてをダリルにいちゃんと俺から聞いていた。
こっちはよくわかんないけど、巨人にいちゃんはダリルにいちゃんに謎の緑色の薬を顔に塗りたくられて大人しくしている。
「そんな貴重なものを。いや、俺を助けてくれたこと心より感謝する」
深々と頭を下げる父ちゃん。
これで一件落着。いまの坑道はダメになっちまったけど、また別の坑道を掘ればいいんだから、そこはみんなで頑張ればいいさっ。
「奇跡のクスリは大変貴重なもののようで、そこの爺さまの記憶にもかつては王に捧げれば広大な土地と孫の代まで遊んで暮らせるほどの恩賞が与えられたほどのものとか。助けて頂いたのは有難いが、とてもそんな支払えるものなどここには……」
俺は血の気が引くのを感じた。確かにドワーフじいちゃんも、ダリルにいちゃんも失われた製法とか。そしてあんな状態だった父ちゃんがみるみるうちに完治するとか、まさに奇跡の出来事。
それがその辺の薬みたいな金額な訳ない。その奇跡の対価なんて何を差し出しても釣り合わないに決まっている。鉱夫の命も貴人の命も等しく救える薬なんて……いったいいくら払えばっ⁉︎
「ダリルよぉ。確かにこれだけの事してやって、タダなんてわけにはいかねえだろうよ」
バルゾイおじさんが苦笑いの顔で片眉を上げてそう言う。
「た、たしかにその通りですね。けれど師匠、俺の労力についてはその必要はないですよ? むしろ得たものの方が多いくらいですしね」
緑の巨人にいちゃんがキャラを取り戻したようで、そう言ってくれる。
ダリルにいちゃんはそうかそうかと頷き、やがてニッと笑って、
「なるほど、確かにどうしたものかと考えていたが、俺の弟子がそう言うんだ、弟子の勉強代を差し引いて代金はこの少年1人を貰うという事で手を打とうか」
……え、なんて?