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その夜、公民館の一室に集まった面々の前で、マイナは感想用紙の写しを机へ並べた。
「見て」
筆跡は違う。けれど並ぶ言葉は驚くほど似ていた。
『希望が見えました』
『家族の未来が楽しみです』
『安心して任せられます』
同じ単語が、別人の紙に何度も出てくる。
ズジが身を乗り出した。
「配った言葉をそのまま書かせてるみたい」
「それだけじゃない」
マイナは別の紙を出す。
「来場者数と回収枚数が合ってない。多いの」
ジュレイが眉を上げた。
「増やしている?」
「たぶん。しかも“子育て世帯の支持が高い”って見せたい数字になってる」
ピットマンが頭を抱えた。
「拍手も感想も増量ってことかよ」
そこでズジが、昼に拾った宣伝冊子を開いた。表紙には、心へ直接入り込むような柔らかな文句が並んでいる。
『過去を抱きしめたまま、未来へ』
『見えない明日を、見える暮らしへ』
「これ、ゼフィレルの文章だ」
ズジが言う。
「言葉で安心させて、チョムの数字で背中を押す。役割分担が綺麗すぎる」
サペは冊子の紙を指でなぞった。
気味が悪いほど、やさしい。
「人をだます文って、もっと露骨なもんだと思ってた」
「露骨だと逃げられる」
ジュレイが答える。
「これは、逃げる前に自分から歩かせる作りだ」
言われてみれば、その通りだった。
熱狂そのものが商品なのだ。
みんなが賛成しているように見せれば、迷っている人間ほど並びたくなる。
マイナは最後に一枚の表を出した。
「内覧会は三日続く。数字を作るなら、二日目が一番雑になる」
サペはうなずいた。
「じゃあ、二日目で剥がす」
出来すぎた熱狂は、作りものだと知った時が一番脆い。
あづさ
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