テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
漸くの思いでベッドに寝転がせると、気持ち良さそうに思い切り伸びをする康二。無意識なのか掛け布団を手繰り寄せ、しがみつくように俺に背を向けて寝る体勢へ入る。その一連を見守った後にはもう間もなく眠りにつくと思い、風呂を拝借しようと踵を返した矢先のことだった。
「めめ?」
想像以上にしっかりとした口調で呼び止められ、思わず肩が跳ね上がる。
「──あんな、俺がめめのこと、好きって言ったら…困る、やんな?」
唐突ながらゆっくりと投げかけられた言葉に思わず振り返るも、背中を向けられて且つ掛け布団に顔を埋められては、その真意は分からなくて。
ただ、唯一の証拠になるのかは分からないが、さらりとサイドから流れた先に見えた耳は──現状酔っているとはいえ──先ほどまでとは比べものにならないほどに真っ赤に染まっていた。
緊張も相俟ってか、掛け布団を抱き込む大きな手が小さく震えていることも解ってしまったからには、俺が今までモヤついていた感情がはっきりしてきて。思わず口角が上がってしまう。
「…もう、困るって。」
「……えっ?」
そうイタズラに言えば、困惑と罪悪感の色を浮かべながら素早く上体を起こしてこちらを向く彼に、心臓をぎゅっと鷲掴みされるように苦しくなって、堪らなく愛しく思う。
酔いから醒めてきたのか動揺の色が濃くなる彼に向かって歩み出す。歩を進める毎に泣き出しそうになる彼が、本当に愛おしい。
彼からすれば気まずい空気の静かな寝室。ベッド際に腰掛ければぎし、とスプリングの控えめに軋む音がやけに響く。そんな空気に耐えられなくなったであろう康二は、今の言葉は忘れてくれと言わんばかりに顔を逸らしながら腕をぶんぶんと振ってくる。
「ちゃうねんめめ、ごめ──」
遂には言葉にして謝りそうな彼のその両手を掴めば、目を見開いてこちらを遠慮がちに見つめてきて。その目は今にも雫を零しそうな程に潤んでいた。
「…俺も好きだから、マジで困ってる。」
静かに、それでいてしっかりと届くように伝える。
数秒の沈黙の間、はらりと康二の目尻から一筋の涙が落ちた。
「───、ほんまに?」
「うん。」
「えっ…ほん、まに?」
「うん。」
手首を掴んでいた両手の力を緩めると、本意を確かめるように辿々しく康二の指が絡んでくる。
「…俺も…俺もずっと好きやってん。でも、」
絡められた指に応えながら、ネガティブが零れそうな口を咄嗟に唇で塞ぐ。最初は塞ぐだけの目的で、その後は俺の塞いでいた気持ちを康二に流し込むように。怖気付いて逃げる彼の舌を無理やりにでも絡め、角度を変えながら徐々に深く。
たまに漏れる康二の吐息と微かなアルコールの香りに脳が溶かされそうで、本能がもっともっとと囃し立てる。
無意識に左手が康二の後頭部へ動き出す。暫く囃されるままに夢中になっていると、左肩にとん、と軽い衝動が走る。唇を解放すれば《っはぁ…!!》と息を荒らげて、未だに信じられないような表情でこちらを見つめる。
その口端から少しだけ漏れたどちらのものかも分からない唾液を指で拭う。その途中で柔らかな唇にも触れてみせて。
「康二?こっからはもう逃がせないよ?」
「に、逃げへん。けど、」
「けど?」
俯く顔を覗き込むと、此方がびっくりするほどに顔を真っ赤にして俺の服の袖を掴みながら、ちら、と一瞥して蚊の鳴くような声で呟いた。
「め、め……その、雰囲気的に、な?アレやん?で、、えっと…するなら、あの、優しく…してな?」
その一言に俺は大きく鼻で息を吸って心の中で天を仰いだ。
っううーーーーーーん…こっれは…。
「…頑張るけど…ちょっと、無理かも。」
「ぅえっ!?」
「うん、頑張るから。うん。頑張る。」
「ちょ待って?えっ、待って?それ頑張らんやつちゃうん?」
どうしても康二から困惑が抜けないのは、俺の言い方が悪いのかな…。まあ、こうなったからには確証得られないのは確かなんだけど。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!