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第22話:黄波最終選抜戦
黄波地区体育館。
中央の広い香波コートには、観客席からの視線が集まっている。
天井から吊られたモニターには、選抜戦の出場者たちの名前が大きく映し出されていた。
拓真は黄色の競技用ジャケットに袖を通す。肩には薄い防御パッド、腰には捕縛リング用のホルダー。
その顔は少し緊張していたが、目には迷いがなかった。
対戦相手は同じ黄波地区の仲間、美咲と新——あの小隊戦で共に戦ったコンビだ。
開始の合図と同時に、美咲が前方へ疾走。赤茶のポニーテールが揺れ、橙寄りの濃い波が正面から押し寄せてくる。
新は後方から冷静に波を制御し、拓真の動きを読むように目を細めた。
——正面突破では勝てない。
拓真は香波をわざと弱め、緑寄りの揺らぎに抑えた。相手の意識が美咲に集中した瞬間、左へ急転。
床の発光パネルが波を感知し、足元で一瞬だけ黄光が走る。
「読めた!」
美咲が振り返るが、その瞬間——拓真は捕縛リングを投げ、リングが美咲の膝下に絡みつく。
同時に波を強め、リングに干渉させて外れないよう固定。
審判の声が響く。
「ヒット、拓真!」
観客席からどよめきが起きた。
美咲は悔しそうに息を吐くが、笑って手を差し出した。
「やるじゃん。波の色で油断させるなんて」
新も肩をすくめる。
「これで代表入り確定だな」
試合後、代表者発表。
「黄波地区代表——庭井拓真!」
その瞬間、体育館に拍手が広がった。
拓真は拳を握りしめる。
——波の強さだけじゃない。工夫と読みで、俺はここまで来た。