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第23話:代表者顔合わせ
合同訓練施設・中央会議棟。
磨き上げられた床に各地区の旗が並び、壁には香波制御装置のパネルが埋め込まれている。
ここは、各地区代表が一堂に会する唯一の場所だ。
黄波代表として会場に入った拓真は、深呼吸をしてジャケットの襟を直す。
黄色と緑のストライプが入った競技服は、胸元に地区章が縫い付けられている。
隣には絶香者の陸。いつも通り波は見えず、無表情で腕を組んでいた。
会場奥から歩いてくるのは、紅波地区代表の少女——
真紅のショートボブに鋭い眼差し、波は燃えるような赤。
その後ろに、藍波地区代表の長身青年。濃紺のジャケットに包まれた身体からは、安定した波が絶えず流れ出ている。
「黄波の代表か?」
紅波の少女が拓真の前に立つ。
「お前……波、弱いな」
周囲の視線が集まり、少し笑い声が漏れる。
拓真の波は緊張でさらに淡い緑に沈んでいた。
——負けるもんか。
拓真は意識的に波を引き上げ、橙に近づける。
会場の波感知装置が反応し、床パネルに色が映し出される。
「弱くても、勝つ方法はいくらでもありますから」
言葉を返すその声は、わずかに震えていたが、目は真っ直ぐだった。
陸が低く笑う。
「……お前、少しは見えるようになったな」
その日、拓真は初めて“地区間の波圧差”という現実を体で感じた。
同時に——この差を越えるには、自分の戦術と精神力をさらに磨く必要があると悟った。