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私達は、空間に出現したモニターの中で、愛梨が小学生に何度もいかされ、気絶する様子を呆然と眺めていた。
「これは……試練失敗なのかな……」
私が震えながらそう言うと、瑠美は、
「たぶんね……。こんなの無理よ、愛梨ちゃんでも出来なかったのに、わたしなんて絶対無理……」
と絶望した声で答えた。次に試練のために飛ばされるのは私と瑠美、どっちだろう、と思っていたら、また紙がひらひらと落ちてきた。これまでのパターンだと、ここに書いてある謎の文字が読めた人が試練のために異空間に飛ばされる。そこはいっけん現実のようだけれど、愛梨の推理だとそれも異世界なんじゃないか、ということだった。
落ちてきた紙を目の前に、私と瑠美が目をあわせる。……しばらく無言で見つめ合ったけど、いつまでこうしていてもしかたない。私は意を決して紙を拾った。それには「耐えろ」と書いてあった……が、
「読めない!」
紙の後半の文字を読むことは出来なかった。
「嘘……、次はわたし!?」
同じ紙を見ながら、瑠美が引きつった悲鳴を上げた。そして次の瞬間、瑠美の姿が消え、また空中にモニターが現われた。
気が付くと、そこは薄暗い部屋だった。壁にはたくさんの本棚があり、難しそうな本がたくさん並んでいる。どうやらどこかの書斎みたいだ。奥にある机の上に、小さな明かりがついている。あそこに行けばいいのかな? と思って足を踏み出した途端、気がついた。
わたしの服が全部消えている! 慌てて胸を隠すけど、あまり意味がない。しかし周りには誰もいない。幸い今この部屋にいるのは、私一人だけだ。半泣きになりながらも、わたしは裸のまま書斎の奥へと進んだ。そこには机があって、その上にメモが置かれていた。そこにはこう書かれていた。
『これを病院へ持って行ってください』
そのメモの隣に置いてあるカバンの中に、本が入っているらしい。さっきのみんなには読めなかった文字には、「図書館から病院まで本を運べ」と書いてあった。この本を持って行けばいいのだろう。
わたしは急いでそのカバンを手に取り、走り出そうとしたけど、そのとき自分が全裸だということを思い出して立ち止まった。このままじゃ恥ずかしくて外も歩けないよ……。そうだ、カバンの中に何かあるかも……。わたしはおそるおそる、カバンの中を探ってみた。するとそこにタオルがあった。よかったぁ。これでなんとか隠せる。
でも問題はここからだ。どうやって運ぶか考えないと……。まず、誰かに見られるわけにはいかないよね。病院まではどのくらいかかるんだろう? なるべく人通りの少ない道を通りたいな……。それと、早く持っていかないと時間が経っちゃうし。どうしよう……と考えているうちに、ふと思い付いた。
そうだ、ここは現実ではないんだ。誰かに見られても、それは幻のようなもの。わたしは覚悟を決めて、玄関に向かった。ドアを開ける前に一度深呼吸をして、それからゆっくりと外へ出る。
もうすぐ夜になるのか空が暗くなっている。街灯に照らされた道を、わたしはできるだけ早足で歩いた。途中ですれ違ったサラリーマン風の男の人はびっくりして振り向いたけど、気にしない。わたしはただひたすら前を向いて歩き続けた。
やがて大きな交差点に出た。赤信号なので横断歩道の前で止まる。よし、チャンスだ。わたしは辺りを見回した。近くには誰もいない。「お願いします神様!」と心の中で叫びながら、わたしは両手で胸を隠したまま小走りで青信号を駆け抜けた。
しばらく走ると、今度は商店街が見えてきた。でもここは通れないな……。そう思って引き返しかけたとき、後ろの方から声が聞こえてきた。
「あれっ?お前何やってんの?」
「えっ!?」
振り返ると、そこには知らないおじいさんがいた。
「いやーこんなところで会うとは奇遇だな」
と言いつつこっちに向かってくる。
「あの……すいません、急いでいるんで……」
と言って逃げようとすると、
「おい待てよ、久しぶりに会ったっていうのにそりゃねえぜ」
と腕を掴まれた。
「えっと、誰ですか……?」
と言うと、おじいさんはニヤッとして、
「忘れちまったのか?ほら、昔よく遊んでやったじっちゃんだよ」
と言った。でも絶対こんな人知らない。
「すいません、覚えてないです……」
「なんだ、俺のことなんか興味ないって言うのか」
そう言って笑うと、急にわたしの腕を引っ張った。
「きゃあっ!」
バランスを崩したわたしはそのまま地面に倒れ込んだ。
「いったあ~……何するんですか!?」
起き上がって抗議しようとしたけど、次の瞬間、わたしは自分の目を疑った。
「……なんで!?」
さっきまでタオルを着ていたはずなのに、今はそれがなくなっている。わたしは真っ裸で地面に座っていて、おまけに周りの人たちはみんなわたしのことを見ている! (続く)