テラーノベル
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この話は、私、西紀日南子が実際に体験した奇妙な出来事の話です。
あれは二年前の夏、今日と同じように雲一つない快晴の日のことでした。
その日、当時女子高生だった私はTiktokに投稿する踊ってみた動画の撮影のためにとある小さなお寺に足を運びました。
白い狐のお面を被り、巫女のような着物を着、下駄を履いてお寺へと向かいました。
そのお寺は丘の上にあり、その境内で撮影を始めました。青々とした紅葉の葉に囲まれた
神社の石畳の上で、当時流行っていたボカロ曲に合わせてしゃなりしゃなりと踊ります。
「見事じゃのぉ、まるで本物の巫女のようじゃ」
撮影の許可をくれた80歳くらいの頭の禿げ上がったお坊さんが私の躍りをそう褒めてくださいました。
燦々と照らす太陽、青々とした紅葉。
石畳を鳴らしながら踊るのはとても気持ちよくて、それ故に私は足元のことなんかまるで気にしていませんでした。
ペキッ。
何かを踏んだ拍子に、私は思わず転び、膝を擦りむいてしまいました。
「イタタ……..何これ」
足元を見ると、そこには骨があったのです。
人間の骨ではありませんでした。
小さな、獣の手の骨です。
所々毛やら肉やらが残った獣の手からうっすらと白い骨が見えています。
私が踏んだ拍子に折れてしまったのか、骨はぐしゃぐしゃになっていました。
「ひゃっ!?」
思わず私は飛び退きました。異変を感じたお坊さんが私の元へと駆け寄ります。
「ほ….骨…..骨がっ……」
怯える私をよそにお坊さんが骨をじっと見つめます。
「ふむ、カラスが食った屍肉を落としていったのやもしれんな。寺で弔ってやろうかの」
そう言ってお坊さんは数珠をじゃらじゃら鳴らした後骨をひょいっと掴み寺の中へと戻っていきました。
私はなんだか撮影を続ける気分にもなれず、
帰ろうとしました。ふと下駄を見ると、鼻緒が切れていました。
その日から不可解な出来事が立て続けに起こるようになったのです。
一週間後、朝のニュースで私が撮影をしたお寺で謎の火災が発生し、お坊さんが亡くなったことを知りました。
私の頭にあの獣の手が浮かびました。
まさか、そんなはずはない。
私は気をまぎらわすため普段は呑まないコーヒーを飲みました。
その日の夜、妙な夢を見ました。
「弔うてくれ、弔うてくれ」
低くうなるような声が何度も何度もそう言うのです。
蒸し暑い部屋の中、私は目を覚ましました。全身から嫌な汗がだらだらと流れ、パジャマに滲んでいます。
「落ち着け、幽霊なんかいるもんか」
私は再びきゅっと目を閉じ、眠りにつこうとしました。
すると、カタカタ、カタカタと机の引き出しから音がします。
カタカタ、カタカタ。
「…….なんなの本当に」
頭をかきながら、私はおそるおそる引き出しを開けました。
そこには、境内で踏んだ獣の手があったのです。
「ひぃっ!?」
慌てて尻餅を着きました。
「弔うてくれ、弔うてくれ」
頭の中で声が響き続けます。
耐えられなくなって私は思わずこう聞き返しました。
「どうして?あなたはお坊さんに弔ってもらったんじゃないの?」
ぴたり、と音が止みました。
次の瞬間、ばっと獣の手が首に掴みかかりました。獣の手が私の首をぎゅぅぅぅっと締め付けます。
「あの男がワシを殺したんじゃ。屋根裏に住んでたワシとワシの子供を、木の棒で何度も打ちのめして殺したんじゃ。弔ろうてくれ、弔うてくれ、弔ろうてくれ」
そうして、ふっと獣の手の力が抜け、ぽたりと床に落ちました。
それから私は、別のお寺へと行き、獣の手を弔ってもらうようにお願いしました。
そのお寺の40代くらいの眼鏡をかけたお坊さんが言うには、その獣の手に取り憑いていた霊はアライグマだったそうです。
ペットとして日本に連れてこられ、育てきれないからと外へ逃がされ、外来種となったアライグマ。
彼女達は今、害獣認定を受けています。
悪いのはアライグマなのでしょうか?
アライグマの親子を殺したお坊さんなのでしょうか?
祟りが収まり、平和になった今でも、あの夏の出来事が胸のしこりとなって消えてくれません。
けだま15号🍓🐾໊
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蜜星
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コメント
1件
うわあ…読んでいてじんわり怖かったです。境内で踏んだ獣の手が、まさか後日自室の引き出しから出てくるっていうのがぞっとしました。それに、お坊さんが実はアライグマの親子を♡♡♡た張本人だったっていう真相も重い…「悪いのはアライグマなのか、お坊さんなのか」っていう問いかけが、胸に残りました。短いのに読後感がずしりと来る、とても印象的なお話でした。