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……誰も、私に話しかけてくれない。
教室の中で、私は“いない人”みたいだった。
笑い声は聞こえるのに、
それが私に向けられることは、一度もない。
——それが、当たり前だった。
「プリントに書いてある内容、テストに出るからな〜」
先生の声が響く。
……私の机には、何もないのに。
見えてるくせに。
見えてないふり、してるだけでしょ。
笑い声が、後ろから聞こえる。
……慣れてる。
そう思わないと、やっていけないから。
昼休み。
私はトイレの個室で、お弁当を開く。
ここだけが、一人でいられる場所。
でも——
「え〜? まじあいつ無理なんだけど」
声が聞こえる。
……私のことだ。
息を止める。
音を立てないようにする。
存在ごと、消すみたいに。
チャイムが鳴る。
私は、誰にも見られないように教室へ戻った。
「大久保、遅刻な」
それだけ。
誰も、何も言わない。
それが、一番つらい。
下校時間。
私は逃げるように学校を出た。
その帰り道。
見たことのない道を見つけた。
綺麗な花が咲いている、小さな道。
……今日は、こっちで帰ろう。
そう思った。
その先に、小さな神社があった。
ボロボロで、人の気配はない。
それなのに——
妙に、静かだった。
鳥の声が、しない。
風の音だけが、やけに大きい。
……変だ。
少し迷ってから、私は鳥居をくぐる。
その瞬間。
空気が、変わった気がした。
足音だけが、やけに響く。
背中が、ゾワッとする。
誰かに見られているような感覚。
……気のせい、だよね。
そう思って、私はその場を離れた。
その夜は、なかなか眠れなかった。
——そして、翌朝。
アラームが鳴る。
重い体を起こして、
手を伸ばした、そのとき。
手が、止まった。
……大きい。
指が、太い。
手の甲に、見覚えのないシワ。
これ、私の手じゃない。
鏡を見る。
そこにいたのは——
知らない男だった。