五分後、花純はぼーっとしたまま下りのエレベーターに乗っていた。
(咄嗟に引き受けちゃったけれど大丈夫かな? だってここは世間に注目されている出来たばかりのビルよ。それにあの庭園を
デザインした人は、たしか有名なガーデンデザイナーだったはず…)
花純はすぐにスマホでそのデザイナーを検索する。
検索結果を見ると、あの空中庭園をデザインした人物は
イギリスと日本人のハーフの有名ガーデンデザイナーだと記載されている。
そのデザイナーは、海外でも活躍している超人気のガーデンデザイナーだ。
花純はガックリと肩を落とすと、一階でエレベーターを降りた。
そしてノロノロとフローリストへ戻って行った。
「花純ちゃんお帰り。どうだった? 気に入って貰えた?」
「はい……」
元気のない花純を見て、優香が不思議そうな顔をする。
「どうしたの? 何か言われたの?」
優香の顔が、少し心配そうな表情へと変わる。
そこで花純は、副社長室での出来事を全て優香に話した。
「えーっ! 凄いじゃない花純ちゃん、それはチャンスチャンス!」
「そうでしょうか? そんな大それたこと、私に出来る気がしません」
「大丈夫よぉ! 三年間修行をしてきたんでしょう? それに花純ちゃんの植物への愛情は誰にも負けていないもの。その心が
あったら絶対に大丈夫!」
「そうでしょうか?」
「うん、そうよ! それにこれがきっかけでまた運命が変わるかもしれないしね」
「運命?」
「うん。花純ちゃんはまだ若いし専門知識もあるんだから、花屋で埋もれるなんて勿体ないわ。チャンスがあればどんどん飛び
込まないと」
「はぁ……えぇ…でもそんな事を言ったら優香さんだって?」
「私はいいの。自分にはこの仕事が向いているって思ったから、左遷されてもここに残ったんだし。今はそれで正解だと思って
るわ。それに私には当時やりたい事っていうのがなかったしね」
優香はそう言って微笑む。
「そうなんですね……」
「そうそう、それにね、きっと花純ちゃんにはこれからも色々なチャンスが巡ってくると思うのよ。だからそういうチャンスは
生かさないと。それにしても壮馬さんやるわねぇ…早速花純ちゃんにチャンスを与えてくれるなんて心憎いわー。ちょっと見直
しちゃった」
優香はそう言って嬉しそうに笑う。
そこで花純はもう一つ気になっていた事を優香に聞いてみた。
「うちの会社は副業しても本当に大丈夫なのでしょうか?」
「就業時間に影響がなければ問題ないわ。それは私が保証する」
「本当に?」
「もちろん! だって私も副業しているから…」
優香はそう言ってケラケラと笑う。
「えっ? 優香さんも副業されたんですか?」
「そうよ。副業OKになってからすぐに始めたわ」
「えっと…どんな副業をされているのか聞いてもいいですか?」
「もちろん! 私はモデル業をしているの」
優香は微笑んで言った。
「モデルですか? うわぁ凄いっ…」
花純は思わず感嘆の声を上げる。
優香がモデルみたいに綺麗なのは、実際にモデルをしていたからだったのだ。
「凄くなんかないわよー。たまたま私の従姉妹がアパレル関係の会社に勤めていてね、それでたまに頼まれるのよ。でも今はそ
のツテで通販雑誌の専属モデルなんかもやっているのよ」
「だからそんなにお綺麗なんですねー! 私最初にお会いした時、モデルさんみたいな店長だなぁって思ってたんですよ」
花純は少し興奮した様子で言った。
「フフッ、ありがとう。だからね、副業をしても全然問題はないの。花純ちゃんも折角のチャンスなんだからチャレンジしてみ
たら?」
優香はそう言って花純の背中を押す。
「はい……じゃあやってみようかな?」
「頑張って!」
「はい」
そこで二人は顔を見合わせて微笑んだ。
コメント
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優香さんモデルが副業‼️花純ちゃんは、愛する植物🪴たちのガーデンデザイナー🌸輝かしい✨
優香さんはモデル、花純ちゃんはガーデンデザイナー。 副業も頼まれるような優秀な人材を左遷するとは.... きっと 青山花壇に明日は無いでしょう....。 優香さんも、花純ちゃんも、会社の理不尽な扱いに屈することなく 才能を生かして さらに輝いてほしいですね✨
今の空中庭園を作ったのが世界的に有名なガーデンデザイナーでも花純ンは適してない🌲がいっぱいあることに気づいた最初の1人で、壮馬さんも共感して再設計することにしたんだから優香さんも言う通り、花純ンは自信を持って壮馬さんのくれたチャンスを活かさないとね⭐️頑張れ、花純ン✨