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ブンブンと手を振るレイブと鼻ちょうちんを膨らませながら寝そべるヴノに見送られて飛び立って行った遠征組は、その日の夕方前、谷中の鍾乳洞穴(しょうにゅうどうくつ)に戻って大きな声を上げたのである。
最初の声は案の定、バストロの物であった。
「ははははぁっ! いやぁ、今回も大儲け、大漁大漁ってやつだったぁ! こりゃあ来年の春祭りは儲かって笑いが止まらないんじゃないかな? なあレイブぅ、俺たちゃ金持ちになっちまいそうだぞぉ? なはははっ、なーはははっ!」
迎えたレイブは笑顔を浮かべながらも、やや口元を引き攣らせて答える。
「う、うん師匠良かったよねぇ、で、でもさ! 苦しんでいる守護獣さん達からの対価ならありがとう、とかさ、恩に着るとかの言葉を貰って来たんでしょう? それだけで充分なんじゃないかなぁ…… ほら僕達って六頭、四頭と二人キリじゃない? あんまり一杯有ったって仕様が無いんじゃぁ無いかなぁ? ねっ! 師匠っ! 腐っちゃっても勿体無いし、ところでそのカネって美味しいの?」
「ん? ああ、そうか、お前にはまだ説明した事がなかったな…… 良いかレイブ、カネってのは食い物じゃなくてな、小さな金属片、コインとも呼ばれる物なんだぞ」
「へー金属のぉ、それでそのコイン、カネって何に使えるの? 何かの素材になるとかかな?」
バストロは首を左右に振りつつ答える、右手の指で失って久しい右目の辺りを擦(さす)りながらだ。
「うぅ~ん、何かに使えるかって言われれば、使えない、そう答えるしか無いなぁ! だが色と紋様は綺麗なんだぞっ、ジグエラの虹彩(こうさい)みたいにキラキラしているしな、只な…… 変に重たくて柔らかいんだよなぁ、あれってっ! ジグエラの綺麗な瞳の方が全然意味が有る物なんだがなぁ? なぁ、ヴノ?」
『確かにっ! ジグエラの黄金色(こがねいろ)の瞳は美しいぞい! 年甲斐も無くときめいてしまうほどじゃぁっ!』
『え? ええっ? 止めてよぉっ! 恥ずかしいじゃないのぉぅ! んまあでも、小さい頃から言われたのよね…… アタシの黄金の瞳がリントヴルムの再来じゃないのかってねぇ…… う、美しい? とか周りの竜に言われて来たけどさぁ~! アタシ自身、稲妻も流星も呼んだり出来ないしね、そもそも塩水、海が苦手なのよねぇ~』
答えから察するにまんざらでも無いらしいジグエラの事は無視する事に決めたレイブは、脱線した会話の主旨を知ろうとして会話を続ける。
「じゃあ師匠、何で何の役にも立たないコイン? カネだっけ? そんな意味の無い物を欲しがるのさぁっ?」