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#大人ロマンス
桃下結衣
478
***
「亜紀の匂いがする……蕩けて、エッチな香り……」
淡い茂みに顔を埋める彼は囁き、ふくよかに膨らんだ実を舌で吸い上げる。
それと同時に、滴り落ちる露を絡ませ、ゆるりゆるりと甘い刺激を与えてくる二本の指。
「……はぁ……イヤ、そんなこと言わないで……あぁっ」
――匂いだなんて、言わないで欲しかった。
きっと汗の匂いがするに決まってる。
だから先にシャワーを浴びたいと言ったのに。
逃げ出したくなるような羞恥に煽られる。鳴き声を漏らし、思わず腰を引いた。
「……あぁっ……はぁ!」
けれど彼は私を離そうとはせず、浮いた腰をベッドに押さえつけた。
潤った舌が執拗に絡む。
「味わっているところなのに、逃げたらダメだろ? 亜紀の全てが美味しくて、愛おしい」
わずかに離した舌から、ツーっと透明な糸が引く。
「だって、恥ずかしい…ッ……」
奥を刺激する指の速さが増し、啜られる水音は絶え間なく響いている。
――私の全てが愛おしい?
羞恥を超えたありのままの姿を。
女の狡さも、憎しみも、淀んだ感情も。
時には壊れ物を扱うように優しく。時には思考が壊れてしまうほどに激しく。
心まで裸になった私を、あなたはいつも抱き止めてくれる。
愛おしい――
この言葉の意味を、あなたが私に教えてくれる。
「……いけ、亜紀。俺が育てた身体だ。上手に出来るだろう?」
到達を催促する甘い声が、私の快感を追い立てる。
せめて、肌を重ねるこのときだけは――
現実を忘れ、ただ快感に溺れ、意識を壊してしまえと彼の低い美声が誘う。
「んんっ……はあぁっ…」
絶え間なく押し寄せる快感に狂わされ、首が仰け反る。
今すぐ欲しい……彼の熱が。
弾けたい、彼の熱情を抱いて……
「お願い……今泉さん……今夜は、一人じゃイヤ……このまま来て……お願いっ」
最初に迎える波は、あなたと溶け合って感じたい。
茂みに顔を寄せる彼の髪を両手で撫で、途切れがちな甘えた声で懇願する。
私の言葉を受け取った彼は、そっと唇を離して身体を起こした。
「亜紀は本当に可愛いな……」
視線を重ね、熱い吐息を落とした彼は、私の頬を優しく撫でた。
ああ……
この目が私を狂わせる。
欲しがっているのは、私だけじゃない。
今泉さんも同じように、私を……
欲情を孕んだ視線を向けられているだけで、下腹部の奥が切なげに疼く。
彼は潤ったそこへ自身をあてがい、ゆっくりと腰を沈めた。
「亜紀……」
耳もとで囁く甘い声と、身体の奥深くに埋まる彼の熱。
「あっ……んんっ…っ」
灼けるような情熱が、私の心の空洞までも埋めていく。
「ああ……いいっ……今泉さん……」
欲しかった。あなたが――。
最奥まで届いた熱を締め抱いて、彼の背中に爪を立てる。
「……可愛い亜紀。キスして」
耳朶に唇を寄せ、彼は声を落とす。
甘い愉悦が波紋のように全身へ広がっていく。
心地よい震えに包まれながらも、焦らされているようでもどかしい。
彼の唇を塞ぎ、食むように自分から舌を潜らせた。
「もっと……もっと、強くして…」
破裂しそうな欲求が、唇の間から零れ落ちる。
「俺だけに見せてくれる大胆な亜紀。……もっと、俺を欲してくれ」
疼く舌を絡めて、彼は一気に腰を打ちつけた。
「ああぁっ! 今泉さん……アッ…」
「……亜紀の中、すごく熱い」
激しく腰を揺すられ、快感を貪るように突き上げられる。
苦しい……
愛しくて、でも全ては伝えられなくて。
幸せなのに、与えられる快感すらも苦しくなる。
声を上げながら、目には涙が滲む。
「今泉さん……あうっ……んっ」
悦びの中で生じる切なさが、狂い咲くように快感を高めていく。
「亜紀……」
私たちの愛は言葉にできないけれど、重なる熱から想いが伝わってくる。
どんな関係でも、どんな状況でも――
この気持ちを止めることはできない。
信じられるのは、この身体の繋がりの中で生まれる満ち足りた幸せと、彼から与えられる熱情だけ。
もっと、もっと、彼を感じたい。
快感を追って腰が揺れる。
――もう、
壊して欲しい。
私の身体を。
壊して欲しい。
私の心までも。
「あっ、今泉さんっ、わたし、もう……お願い、きてっ」
灼熱の塊が迫り上がり、腰と膝が震える。
「……このまま、いいのか?」
彼の熱っぽい声が耳を掠める。
もっと、私の深いところまできて……
私の中に解き放って。
あなたの熱で埋め尽くして――
「いいっ……そのまま、中に……あっ、ああぁっ!」
欲しくて、欲しくてたまらない。
弓なりに仰け反る身体。大きな波に飲み込まれ、うねるように彼の熱を締め抱く。
「亜紀……っ」
掠れた声で私を呼んだとき、奥を押し上げながら彼が息を飲んだのが分かった。
身体の奥深くで、彼の熱が広がっていくのを感じる。
私の中に彼が溶け込んでいく。
――そう思うだけで、たとえようのない幸福感に満たされる。
愛された証を残されることが、こんなにも嬉しいだなんて……
力を失い、倒れ込んでくる汗ばんだ身体。
「今泉さん……」
恍惚の表情を浮かべ、その身体を抱きしめる。
濡れた背中を指でなぞりながら目を閉じると、髪の毛一本一本まで満たされていくような気がした――。
コメント
1件
毎回思うけど、柏木さんの描くエモーショナルなシーンは没入感がすごいなあ。今回は特に「心まで裸になった私」という内省が効いてて、単なる身体の重なりじゃなくて、お互いの汚れた部分も含めて受け入れ合う関係性が伝わってくる。“私の全てが愛おしい?”って疑問形で挿入するあたり、亜紀の複雑な心境が滲んでて好きだ。策略ってタイトルがどう効いてくるのか、続きが気になる。