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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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その頃、涼平は自転車にサーフボードを積んで海に向かっていた。

引っ越しの荷解きはまだ終わっていなかったが、早朝に目覚めたので海に行ってみる事にした。


荷物の整理は特に急ぐ必要もない。

涼平は逸る気持ちを押さえ、海へと続く道を軽快に走って行った。


砂浜の入口まで来ると、既に何台かの自転車が停まっている。

涼平もその横に自転車を停めると、早速ボードを手にして砂浜へ向かった。


砂浜の半ばまで行くと、一度立ち止まって海を眺める。

目の前にはオフショアの良い波が立っていた。

サイズは『コシ~ハラ』くらいだろうか?


「絶好のサーフィン日和だな」


涼平はそう呟くと再び歩き始める。


太陽は既に昇っていた。

涼平は早朝の神々しいくらいの景色に目を奪われながら、波打ち際まで進んで行く。

すると、先輩の加納が先に来ていた。


「よぉ、涼平! 早速来たな! 引っ越しは無事に済んだのか?」


「先輩おはようございます。荷物の整理はまだ全然ですが、それよりもこっちが先でしょう?」


涼平は海を指差して笑う。


「そうだな。お前もやっとローカルの仲間入りだな! 涼平、ようこそ湘南へ!」


加納は大声で笑いながら涼平の肩をパシッと叩いた。

それから二人はボードを手にして海へ入って行く。


海では既に四、五人のサーファー達が波と戯れていた。

涼平と加納は少し間隔を開けてから、沖に向かってパドリングを始める。

そして何回かに一回くる大波を狙う為に波待ちを始めた。


涼平はこの瞬間が好きだった。

波に揺られながら海面に浮いていると、地球との一体感を感じられる。

地上の喧騒はすべて波音にかき消され、無音の世界が広がる。

こうやって海に浮いているだけで、全てがリセットされるような気がした。

海は疲れ切った身体を本来の自分に戻してくれる。


涼平は沖から来る大きなうねりを捉える為にじっと前を見つめていた。

しばらく浮いていると、その波は突然来た。


サイズの大きい良い波だったが、ピーク近くには加納がいたので波を譲る。

すると加納は見事に波を捉えてから、グングンとパワーあるライディングを始めた。


「さすがだな……」


涼平はそう呟くと、再び沖へ視線を戻す。

そしてしばらく波に揺られながらその時を待つ。

何度か波をやり過ごしていると、ついに大きなうねりが迫ってくるのが見えた。


「今だ!」


涼平はすぐに力強いパドリングを始め、ボードが波に滑り出すと同時に素早く立ち上がる。

そして切れのあるライディングを始めた。


波はパワーあるとても良い波だった。

周りにいた初心者のサーファー達は、身を乗り出して涼平の見事なロングライドを見守っている。


涼平は波に乗りながら、砂浜にいる一人の女性の姿を捉えた。

女性は座って手に何かを持ち一心に手を動かしている。


その女性に見覚えがあるような気がしたが、

涼平はライディングに集中しようと再び前へ視線を戻した。

そして波のパワーが途切れるまで攻め続けた。


涼平が見事なライディングを終えると、加納が遠くから腕を上げて「やったな!」と叫んだ。



その後二人は一時間程サーフィンを楽しんだ後、海から上がる。


「お前はツイてるなぁ」

「引っ越したら運気が上がったんですかね?」

「そうかもしれないな! きっとこの地ではいい事がいっぱいあるぞ!」


加納はそう言って微笑んだ。

それから二人は少し立ち話をした後別れた。


涼平は駐輪場へ戻る途中、先ほど女性が座っていた辺りをチラリと見てみる。

しかしもうそこに女性の姿はなかった。

セルリアンブルーの夜明け

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コメント

1

ユーザー

ここで初めて詩帆ちゃんと出会い⁉️引っ越し後の大きな🌊にも乗れて加納さんの言う通り運を掴んだ❣️涼平さん👍

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