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38話 10014スポット イトが住む黄色の空の住宅地
10014スポット。
足元は、
細い道。
両脇に、
田んぼ。
水は浅く、
風で揺れる。
イトの家は、
低い。
屋根は平たく、
壁は少し色あせている。
玄関の前に、
長靴が二足。
リカは、
少し大きめの上着。
袖は手首まで。
腰元に、
電子マネーとお守り。
カナは、
短い上着。
髪を後ろでまとめている。
イトは、
汚れてもいい服。
裾に泥。
「ここ、静かでしょ」
イトが言う。
空を見上げる。
黄色。
広く、
均一。
雲が分かりにくいが珍しい。
リカは、
瞬きをする。
「うちの方は、
紫だよ」
カナが、
当たり前みたいに言う。
イトは、
少し考えてから、
うなずく。
「こっちは、
ずっとこれ」
風が通る。
稲の音。
遠くで、
水の流れる音。
リカは、
もう一度空を見る。
違う色。
でも、
違和感はない。
ここは、
そういう空間。
田んぼの間を、
三人で歩く。
足音は、
土に吸われる。
10014は、
住むための場所。
便利じゃない。
でも、
落ち着く。
イトの家の前で、
立ち止まる。
黄色の空が、
静かに広がっていた。