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あれから更に二週間が経過した。

“最果ての森”と呼ばれるこの場所に来て既に三週間目になったが、食料に不足は無いし、多種多様な魔法の扱いに優れたロシェルが居るおかげで衛生面の問題も無く、たまに見つけた湖では水浴びをしていたおかげで困った事に二人はこの旅に不満や焦りなどもないままだった。

だが魔物の襲撃の多さにだけは辟易してはいた。今も魔物の集団に襲われたばかりだ。

「……おかしい」

サビィルが周囲を見渡しながらぼやいた。

「何がだ?」

襲って来た魔物を退治した後のレイナードが大剣を一振りし、鞘にしまうと、言葉を続けるサビィルに顔を向けた。


「奴等の数が通常よりも多過ぎる。事前の噂でも『最近は妙に敵が多い』とは聞いていたのだが、それにしても、だ」


森の奥に進めば進む程、発現地帯に近づけば魔物の数が増えるのは当然らしいのだが、それにしても数が多過ぎるとサビィルがレイナードに説明した。

一度の戦闘で二十体以上を相手にする事すら当然と化し、シド一人では倒しきれず、彼が打ち損ねた敵をロシェルが魔法で倒すといった流れになってきている。最初は慌てていたロシェルも経験を重ねてすっかり一人前の騎士並みの対応が出来る様になり、存分にその才能を発揮している。

「確かに多いですね。戦闘続きでシドが心配だわ」

そう言いレイナードへ近づくと、彼女は回復魔法を使い、彼を癒した。

「俺は大丈夫だ。それよりもロシェルの方が心配だ。魔法だって体力を使うんだろう?」

レイナードは彼女を気遣い、そっと頰を撫でる。この数週間のやり取りですっかり触れる事に慣れた彼は何かとロシェルに触っているのだが、厄介な事に毎回無自覚だった。

「ありがとうレイナード、心配してくれて嬉しいわ。でも大丈夫よ」

自身の頰を触れる手に手を重ね、ロシェルがウットリとした表情をする。仲睦まじいカップルにしか見えないのに、当人同士にその自覚が皆無なままなのが実に面倒くさく、サビィル達は呆れるばかりだった。


「ちょっと進んだら敵ばかりで流石に疲れるな」

人が肩を伸ばす様な仕草を翼でし、サビィルがボヤいた。

「そうだな。なかなか前に進めないし、参るよ」

レイナードはサビィルの不満に同意したが、ロシェルは何も言わなかった。大変だという点に異議はないが、旅が難航している事をどうしても『嬉しい』と思ってしまうからだ。でもそんな事は絶対に彼等に言えるはずなど無く、黙っている事しか出来なかった。

「まだ日も高い。もう少し進んでみるぞ」

「そうだな」

サビィルの提案にレイナードが首肯し、荷物を持つと、早速歩き始めた。シュウとロシェルがそれに続き、サビィルは上空へと飛んで周囲を警戒しながら道案内をする。


——しばらく雑談を交わしながら進んでいると、サビィルが今まででも最も警戒した声で叫んだ。

「嘘だろ、奴等がまた来た!三時の方向と十二時の方向、二手から集団で来るぞ!」

サビィルの声に反応し、レイナードが荷物を地面に投げて直様大剣を構える。それに続きロシェルも杖を握りしめると、周囲に罠となる魔法をかけ応戦の用意をした。


「三時の方向の奴等が先に来る!三、二、一……来た!」


合図と同時に襲いかかって来る。索敵通り魔物の数が多く、十二体はいる。それらの大半がロシェルの仕掛けた罠にかかったが、避ける事の出来た奴等が一斉にレイナードへと襲いかかり牙を剥いた。

大声で気合いを入れながらレイナードが数体を大剣でまとめて一刀両断し、魔物達を灰へと還す。それと同時にロシェルも雷の魔法を放ち、残りを一掃した。


「また来る!十二時の方向、すぐだ!」


次はロシェルの方が反応が早かった。先程に続き雷の魔法を、レイナードの負担を減らそうと広範囲に落とした。雷光が周囲に広がり眩しくなる。

ロシェルがスッと目を細めて落ちた雷の奥を見ると、落雷を避けて二人に向かう敵がまだ三体残っていた。

「レイナード、まだ三体来るわ!」

「わかってる!」

叫ぶと同時に彼はまだ残る落雷の中を駆け抜け、魔法を回避した魔物を、レイナードが大剣で切り捨てた。


終わったか?と二人は思った。——だが、残念ながらまだ終了は程遠い。

「今度は九時方向だ!多いぞ……嘘だろ。全部で五十は超えてる!幸い小分けに来るから、気を抜かなければいけるっ」

サビィルの言葉を聞き流石にレイナードも驚いた。ロシェルの魔法で広範囲な対処が可能だとはいえ、数が多い。

「ピャァァ!」

シュウが突如警戒心に溢れた声を上げて、円形の青く輝く魔法防護壁をロシェルの前に張った。

「お前、そんな事が出来るのか!」

九時方向に向けて大剣を構えたままのレイナードが驚き、叫んだ。 今まで魔物に襲われた時には二人に任せきりだったシュウだが、流石に状況が不利だと判断したのだろう。もっと早く戦力になって欲しかったと正直彼は思ったが、気分を害しては面倒なので黙っておく事にした。


「まずは五体、次に七体だ!」


「風の魔法を使うわ。魔物を持ち上げて足止めするから、レイナードが倒して!」

「了解!」

宣言通りに魔物がロシェルの魔法により風で持ち上げられ、体勢が崩れて前に進めなくなる。

奇声をあげ、なおも二人を殺そうとする魔物達を、レイナードが大剣の一振りで三体まとめて倒した。そのままの勢いでまた剣を振り、残りを切り捨てる。灰となり、消える様子に安堵する事なく、彼は次に来る七体の襲来に備えた。


「また来た!嘘だろ⁈森中の奴等が向かって来ておるぞ……森の守護者は何をしているのだぁぁぁぁ‼︎」


サビィルは焦り、大きく声を張り上げた。魔物の管理をするべく存在する者がこの森にも居るはずなのに仕事をしていない事に怒り、震える。戦闘力がほぼ無い自分自身にも憤りを感じていた。

「どりゃぁぁぁぁ!」

戦い慣れしているレイナードは文句を言う事もなく、無心になり、襲い掛かる魔物を確実に倒していく。

ロシェルも雷や風、水や土の魔法など多種にわたる技を駆使しながら足止めをして彼の補助をする。それでも討ち損ねた魔物がロシェルに迫ると、シュウが防護壁で跳ね返し、彼女に反撃の隙を与えた。だが、 手慣れたシュウのサポートに安堵する間もなく魔物の攻撃は続く。

今までの比ではない数が次々に襲い掛かって来る事にロシェルは焦り始めた。魔力が多いとはいえ彼女は人間だ、神子ではない。父・カイルと違って魔法をほぼ無尽蔵に使い続けられるわけではないので、魔力がいつまで保つのか不安になってきた。

それでも必死に木の枝を伸ばして魔物を拘束したり、巨大な水球の中に複数を閉じ込めて上空まで上げ、下へと叩き落とすなどの攻撃をして数を着実に減らしていく。


「また来るぞ!……ちょっと待て、どれだけ居るんだ!」


サビィルが動揺を隠せない。広大な森に分散されていた魔物達が、派手に暴れ回る彼等に気が付き、集まって来ているのを上空から見てしまったのだ。唯一の救いは、今までの歩み進めた方向からは敵が来ていない事だけだった。


「まだいけるか⁈」


魔物に一刀を与えながらレイナードがロシェルに向かい叫んだ。

「い、いけます!」

彼を安心させたくてロシェルは不安を必死に隠す。

次から次へと殺意や憎悪を剥き出しに襲い掛かってくる魔物を灰に還すが、全く追いつかない。前方はシュウが守ってくれるが、それ以外はガラ空きだ。ロシェルは自分でも防護壁を張りたかったが、その余裕が無い。手に持つ杖で魔物を叩き落としたりもするが、彼女では力が足りず、トドメまでは刺せなかった。

だがすぐにレイナードがその事に気が付き、ロシェルの死角を見事に守った。

「無理はするな!」

「はい!」

魔物を倒しながらレイナードが声をかける。その事でロシェルは束の間の安堵を得たが、すぐに気持ちを引き締め、まだ止まぬ攻撃に対処した。


一方レイナードは、次々来る魔物達を切り捨てながら、前々から感じ続けていた『コイツらは何かに似てる』という疑問の答えが、自分の中で結論を得られそうになっている気がしていた。

腐敗した獣の様な見た目、牙を剥き出しにして襲い掛かる姿はどう見ても獣そのものなのだというのにだ。


魔物から放たれる殺気や憎悪。


それらが今まで常に感じていたものにあまりに酷似している。戦場で、隣国の兵士と敵対した時に向けられた威圧感に、似過ぎている。


「……ロシェル、コイツらもはもしかして、人間の——」


思い付いた考えを声に出そうとした時、突如『それ以上言うのはやめておけ、人ならざる者になりたいのか?』と言う何者かの声に遮られた。

騎士団長は恋と忠義を区別できない

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