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「これは言わないでおこうと思ったんだけど――」
「何をだ? 今までボクは夏梅に勝手すぎた。言いたいことは腐るほどあるだろう。遠慮なく言ってくれ」
「腐るほどもない。というか一言ですむ。僕は君が好きだ。それだけ」
「ほんとに? 今までひどいことばかりしてきたのに。嘘だよな? ボクが本気にしたら、冗談に決まってるだろと腹を抱えて笑うつもりなんだろ?」
「そんなことしないよ。君じゃあるまいし」
彼女は黙り込み、魔法で石にされたみたいに動かなくなった。
「心をかき乱したようで悪かった。気持ちは伝えたし、今日はこれで帰るよ」
「帰るな!」
「体調悪いんだからもう寝た方がいい」
「ふざけるな! 眠くなんてない!」
「もう少し話す?」
「話よりセックスがしたい。なんかムラムラしてきた」
「男みたいなこと言うんだね」
「それは暴言だ。性欲は女にもある。女だけそれを隠さなければならないのか?」
そうだった。彼女はフェミニストだった。ミソジニスト(女性差別主義者)だと糾弾される前におとなしく謝っておいた方がよさそうだ。
「そんなことない。僕もちょっとムラムラしてるしね」
「夏梅、女に向かってムラムラしてるって、その発言とんでもないセクハラだぞ!」
ムラムラしてきたという彼女の発言をとがめれば女性差別とされ、僕もと同調すればセクハラと言われる。どうすればよかったかと言えば、正解などないのだろう。