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ドアをくぐり、店に入る。
ダリルさんはカウンターでコーヒーを飲みながら本を読んでいる。
「これを」
ダリルさんはそう言ってチェーンのついた宝石を渡してきた。
「今回は少し趣向を変えてあるが。そのアミュレットには獅子王の加護というものを宿らせてある。それはきっとお前の御守りとなってくれるだろう」
先日の魔獣戦で、この街最強の巨人族と認めてくれた師匠が手渡してくれた御守り。末代まで受け継ぐ家宝となること間違いなしだ。
「ありがとうございますっ、これからも精進します!」
「いい心がけだねっ! じゃあまずはわたしを肩車して街一周ねっ!!」
ダリルさんの足元に隠れて見えなかった狐っ子がそう言っておねだりしてくる。
師匠が大事にしている子どものお願いなら是非もない。
「ビリーが心配するといけない。夕方の鐘が鳴る前には帰ってこい」
「はーいっ。じゃあ最強巨人ロボ! はっしーんっ!」
ロボと言うのが何か分からないが、最強と呼ばれて嫌な気はしない。広い街だがそういえば隅々まで見たことは俺もない。せっかくなので自分の住む街の観光もしてみよう。
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スウォードという他国にはない平和を体現したような街がある。大きな災害も、人々を恐怖に陥れる魔獣の襲来もなく、戦争も紛争もない。そんな平和な街には人間や獣人、亜人種もみな助け合って暮らしている。
その中に街1番のつわものと呼ばれる巨人族の青年がいる。
逞しく、それでいて子どもを肩車して歩く姿をしばしば見かける心優しい青年だ。
その青年は鍛冶屋の店員をなぜか師匠と呼び、狩人のすんごいエルフを先輩と呼ぶ。
「ねぇねぇ、ジョイス兄ちゃん、あれやってあれやってー!」
街の中央、人通りの多いメインストリートで狐獣人の女の子が何やらせがんでいる。
「ふむ、ミーナ嬢は本当に好きだなあ。よし、ひさびさにやってあげようっ!」
そこに通りがかるエルフがそのやりとりをみて微笑む。
「しっかり見ときなさい! これが! お兄ちゃんの! 本当の! すっがったっだーーー!」
振り上げた両手を腰にまで引き下ろして、ふんっと気合いいっぱつ、膨れ上がった筋肉がパンツ一枚残して着ているものを弾け飛ばした。
瞬間、どこから現れたのか腰に剣を差した青年が狐っ子の目を覆い素早く連れ去る。さっきまで賑わっていた通りからひと気が失せる。残されたのはほぼ裸のジョイス1人。
「あわわゎゎ、やっぱり変態さんだああぁぁぁっ」
エルフの叫びが街にこだました。