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美術館前の通りを歩いていると大きな書店の前に差し掛かる。

信也が少し寄りたいと言ったので、二人は書店へ入った。


信也が本を見ている間、凪子は書店のイベントスペースにあるベンチへ座り待つ事にした。


イベントスペースの真ん中には行列が出来ていて誰かのサイン会が開かれているようだ。

気になった凪子は立て看板を見た。すると看板にはこう書かれていた。


【人気ブロガーなつみん(小澤夏美氏)の初書籍『マウントリベンジ~夫に裏切られた全ての女性へ捧げる指南書~』初出版記念サイン会】


それを見て凪子はハッとする。


(なつみんさんがここにいるの?)


凪子は驚きを隠せずにいた。


辛い自分をずっと支えてくれたブログ主が今目の前にいるのだ。

凪子はずっと彼女に会ってみたいと思っていたので、すぐにその列の最後尾に並んだ。


順番が来るのを待っている間並んでいる人達を観察した。そのほとんどが女性だった。

歳は20代から70代くらいまでと幅広い。なつみんの本はかなり広い年齢層に支持されているようだ。


凪子は順番を待ちながらドキドキしていた。


(一体どんな人なんだろう?)


そして前の人が徐々にいなくなりなつみんの姿が目に入った。



『なつみん』は40代半ばくらいのとても美しい女性だった。

色白で細身の身体にストレートのロングヘアで笑顔がとてもチャーミングだった。


(想像していたのと全然違う…)


凪子はもっとガッチリとしていて肝っ玉母さんのような強い女性をイメージしていた。

しかし目の前にいるなつみんは、とても華奢で儚げで凪子から見ても守ってあげたくなるような女性だった。


思わず凪子がなつみんに見とれていると凪子の順番が訪れた。



凪子はなつみんの前に立つと、彼女に伝えたいと思っていた言葉を簡潔に伝える。


「出版おめでとうございます。私はあなたのブログに救われました。そしてあなたのお陰で新しい幸せを手に入れる事が出来ました」


凪子はそう言って微笑むと、右手を大きなお腹の上に当てた。


凪子を見つめていたなつみんは、すぐに優しい微笑みを浮かべてからこう言った。


「おめでとうございます。その幸せはあなたが頑張って勝ち取った幸せですね。だからきっと上手くいくと思います。なぜ私が言いきれるかっていうと、あなたの未来もきっとこうなるから……」


なつみんはそう言って微笑むと、脇に控えていた男性と小学生くらいの男の子を呼びよせて凪子に紹介した。

とても優しそうな紳士と小学生の位の男の子がなつみんの傍で微笑んでいる。


「私の夫と息子です。あなたを見ていると昔の自分を見ているようだわ。どうか可愛い赤ちゃんと三人でお幸せにね」


凪子は感無量で頷く。

その後なつみんは新書にサインをしてから凪子に渡した。


「ありがとうございます」


そこで二人は固い握手を交わす。そして見つめ合って微笑んでから凪子はその場を離れた。


凪子が本を持ってレジへ向かおうとすると、信也が待っていた。



「驚いたな、あのブログの?」

「そう、ずっとお会いしたいと思っていたからびっくりしたわ。すっごく素敵な人だった!」



凪子はニコニコして信也に報告する。


「良かったな。じゃあそれを買ってから帰ろうか」

「うん」


二人は笑顔で見つめ合って手を繋いでからレジへ向かった。

そんな二人の後ろ姿を、なつみんが微笑みながら見つめていた。



ここまで来るには辛い日々が続いた。

泣きたい気持ちを抑えて、歯を食いしばって頑張ってきた。

凪子はその辛さから逃げも隠れもせずに、見事に闘い抜いたのだ。


その結果、真実の幸せを手にした。


その幸せはこれから更に大きくなるだろう。

なぜなら二人の愛の結晶がもうすぐ生まれるからだ。


信也はきっと良い父親になってくれる。凪子はそう確信していた。

そして優しい信也の元で、凪子とこれから生まれてくる子供は幸せな日々を送るのだ。



凪子は見事にリベンジを果たした。

自らが幸せになる事で結果的にリベンジとなったのだ。



『人の不幸の上に幸せは成り立たない』



まさに凪子はそれを証明してみせた。



幸せが成り立つ場所というのは、優しさや思いやり、そして人々の笑顔が溢れる場所なのかもしれない。

それらをつい忘れがちな現代において、私達は常にその事をしっかりと肝に銘じておかなければならないのだ。


<了>

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