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「で、さっき電話で言ってた事はなんなんだ?」

「えっ? ああ、あれね…」

「うん?」

「だから、加瀬さんは、きっと陸の事が好きなのよ!」

「ハッ?」

「陸を取られたくないから、自分と同年代の独身女性が新しく入って来ると追い出したくなるんじゃないの?」

「ハァ? そんな訳ないだろう?」

「まあ、まだ陸と加瀬さんが一緒にいる所を見ていないから、なんとも言えないけどね」


華子はそう言いながらもぐもぐと料理を食べる。


陸は唖然としていた。

確かに加瀬は、アルバイトとして入った時から何かと陸に話しかけてきた。

そして最近では三日で辞めたスタッフの穴埋めに、毎日のように陸が応援に行っていた。

その際に何かと話しかけられたり手伝ってくれたりとやけに親切だなとは感じていたが、

まさかそんな状況だったとは夢にも思わなかった。


「参ったな…そんな事で折角雇った人が次々に辞められても困るな」

「モテる経営者は大変ねぇー」


華子はそう言ってケラケラと笑った。


「君は呑気でいいよな…」

「あら、あたしはあなたのせいで一日中あの女にいびられたのよ! 経営者ならあの女をなんとかしてよ!」

「なんとかって言ってもなぁ…突然辞めさせるわけにもいかないし…それに、店長の中澤も特に何も言っていなかったしなぁ…」

「フンッ! これだから男は駄目よね! そういう女っていうのはね、男の前では猫をかぶるもんなのっ! あざとい女をすぐに見分けられないといずれ痛い目に合うわよ!」


華子は馬鹿にするように言った。


「君もそうだったのか?」

「えっ?」

「昔は君もあざとかったのかって聞いたんだ」

「私があざとかったら、多分とっくに重森の妻になっていたでしょうね」

「ハハッ確かに。君はすぐ顔に出るタイプだからなぁ。それに意外と純粋だし」


華子は馬鹿にされたと思い、ムキになって言い返す。


「とことんあざとくなっていたらって自分でも思うわよ。でも出来なかったんだものしょうがないでしょう!」


すると陸は急に真面目な顔をして言った。


「でも、そういう素直な所がいいんじゃないか?」

「えっ?」


華子は驚いて陸の顔を見る。

しかし陸は、


「さてと、確かチーズもあったよな…ちょっと取って来るわ」


と言ってキッチンへ向かった。


(今、なんて…?)


華子は陸の言葉が気になっていたが、ちゃんと聞き返す事が出来ずにいた。


それから二人は楽しい夕食のひと時を過ごした。

イイ感じにほろ酔い気分になってくると、二人とも饒舌になる。

そして二人は議論を始める。

特に男女の恋愛心理に関しては盛り上がった。

時には意見が対立し、激論が繰り広げられる。


本音で話せる会話はとても楽しいものだった。

そしてあっという間に時間が過ぎていった。


気づくと2本目のワインが開いている。

更にワインのおかわりを注ごうとする華子の手を、陸が制止した。


「もうそろそろやめておけ。明日仕事だろう?」

「だって、これすっごく美味しいんだもん。やっぱりワインは高級ワインに限るわねぇ…」

「今日はもうおしまい!」

「えーっ! つまんないの!」


まるで子供のような華子の態度に陸の頬が緩む。


陸は不思議だった。

女性と二人きりで食事をして、こんな楽しかったのは初めてだった。

華子といると素の自分でいられる。

そして心からリラックスしている自分に気付いた。

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