テラーノベル
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それから二人は明後日の引っ越しについての話を始める。
明後日華子はカフェの仕事が休みなので、陸が一緒に車で荷物を運んでくれる事になった。
「何から何まで至れり尽くせりでありがとうございまーす」
ほろ酔い気分の華子は陸に礼を言った。
「近いし荷物もそんなにないからすぐに終わるさ。それより家具は揃っているのか?」
「ないわ。家具もベッドも全て備え付けの部屋だったから、送られて来るのは服とか細かい荷物とかだけよ」
「じゃあ布団もベッドもないのか?」
「ないわよ」
華子は面倒臭そうに答えてからハッとする。
「そうだ、お布団買わなくちゃだわ」
「俺が今気付かなかったら、君はどうやって寝るつもりだったんだい?」
「えっと…段ボール?」
それを聞いた陸はプハッと笑う。
「愛人の次はホームレスかよ! しょうがないなぁ…」
華子は陸の最後の一言を聞いて、期待を込めた瞳で陸を見つめた。
「なになに?」
「じゃあ、明日ベッドと布団を買いに連れて行ってやるよ!」
「やったー! 陸、サンキュー!」
華子は嬉しそうに両手を挙げた。
「ゲンキンなヤツだなぁ…」
陸はそう言って可笑しそうに笑った。
食事を終えると、陸が片付けを始める。
華子も手伝おうと思いふらつきながら立ち上がった。
それを見た陸は華子を制止すると、
「いいから君は座ってろ」
そう言って、一人で食器類を運び始めた。
華子は少し飲み過ぎたようで、身体がフワフワとしていた。
華子はダイニングチェアには座らずにソファーまで歩いて行くとゴロンと横になる。
アメリカンサイズの広々としたソファに横たわると、包み込まれるようで心地良い。
(気持ちいいー)
このままここで寝てしまいたい…ベッドなんかよりもこっちの方が寝心地がいいのでは?
華子はどうでもいいような事をぼんやりと考えていた。
その時ふと思った。
(そうか…この家とも明日でお別れなんだ…明日からはまた一人ぼっちか…)
そう思うとなぜか華子の胸がズキンと痛む。
(一人って淋しいな…私はいつまで一人なんだろう…)
そう思うと目が霞んでくる。
(あれ? おかしいな? 私どうしちゃったんだろう?)
溢れてくる涙をなんとか押しとどめようと華子は必死にこらえる。
しかし、涙はじわじわと溜まっていきついにこぼれ落ちてきた。
その時キッチンからコーヒー香りが漂ってきた。
華子はその香りを嗅ぎながら、
(結婚って…こんな感じなのかな? 二人で食事をして、時には旦那様がコーヒーを入れてくれたりして?)
ふとそんな事を思う。
そして次の瞬間、華子の口からこんな言葉が出ていた。
「ねぇ陸……私と結婚しない?」
冷蔵庫からティラミスを取り出そうとしていた陸は、突然華子からプロポーズをされたので驚いた顔で華子を見る。
陸は、言葉の意味がすぐに理解できなかったのか、
「今、なんて言った?」
と聞き返した。
「だからぁ、結婚しようって言ったの」
「…………」
「黙る事ないじゃない……」
「いや、普通黙るだろう? いきなりそんな事を言われたら」
「そうかなぁ?」
華子は酔った勢いでふざけて言っているのだろうか?
それとも真面目に言っているのか?
陸にはその判断がつかなかった。
そしてしばらく考え込む。
その間、華子はクッションにグーパンチをしている。
華子の横顔をじっと見つめていた陸は、その頬に涙の跡を見つけた。
(泣いていたのか?)
そう思った瞬間陸の胸がズキンと疼いた。
沈黙が少し続いた後、陸が漸く口を開いた。
「わかった、結婚しよう。ただし入籍はある程度の婚約期間を経た後だ」
華子が驚いて陸を見る。
「えっ? いいの?」
華子はてっきり陸にきっぱり断られるか、冗談はよせと笑い飛ばされるかのどちらかだと思っていた。
だからOKと言われて驚いている。
「ああ。しばらくお試し期間として一緒に暮らしてみよう。婚約期間の間にお互いの意志が固まったら、その時入籍すればい
い。それでどうだ?」
今度は華子が言葉を失っていた。
まさか陸が華子の申し出をすんなり受け入れてくれるとは思っていなかったので、その先の展開を何も考えていなかったのだ。
しかし、このチャンスを無駄にしたくはない。
そう思った華子は、
「それでいいわ」
と返事をした。
それに対し、陸は満足そうにうんと頷いた。
コメント
3件
華ちゃんから言い出すなんてビックリ‼️凄いわあー😍 これで引っ越差なくていいし独りぼっちじゃないね😊 でも美咲に知られたら厄介だわ、お気をつけて
明後日引っ越しかと思いきや、何と華子チャンが 逆プロポーズ💖😮‼️ 突然プロポーズをした華子チャン、そして プロポーズを承諾し 一定の婚約期間を経ての入籍を約束した陸さんも.... お互い無意識のうちに本能で相手を求め、 惹かれあっているのかもしれませんね🍀✨ これから婚約期間のうちに 二人の関係がどう変わっていくのか 気になります🥰
おおおお〜⁉️華子からのプロポーズに陸さんが🆗⁉️これは衝動でもなくて2人ともお互いに心地よさがあっての結論だよね😊👍💖 華子は1人でなく2人の時を過ごしたい,陸さんは思いの外華子が素直で真面目な🐈⬛のようで手放すのが惜しい😅といったところかな⁉️ しっかり婚約期間も設けてお互いを見つめる時間もあるしいいんじゃな〜い⁉️🤭🌹✨