テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#オリジナルストーリー
ナルト大好き👑🤲
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「さて、我が息子の進捗はどうかね?」
私、フラム・イフリットはヴィルサレム公爵家の書斎に招かれた。
私の目の前にいるのはハインリヒ・ヴィルサレム――現ヴィルサレム公爵家の領主である。
「お答えいたしましょう」
私は目の前にいるの目を真っすぐに見つめて言う。
事の発端は、ヴィルサレム家の一人息子であるイヴィルが魔法を教えろと師事を受けることになったからである。
私は目の前でイヴィルの成長を見てきているのだが……早いもので1週間が経過した。
その一週間で感じた私の評価は決まっている。
「事前に報告書でもまとめさせて頂いておりますが、化け物や規格外……そう評価するしかありません」
正直に言えば、私には手に負えない。
あまりにも覚えが早すぎるのだ。
かつて、イヴィルは魔法自体を馬鹿にしていた。
だが実際にやるとなると、天才という言葉が霞むほどの実力を見せてきた。
自慢ではないが、私は王都の冒険者ギルドでは天才の名を欲しいままにしていた。
A級の中では最上位の実力と言われ、様々な依頼をこなしてきた実績がある。
そんな天才といわれた私とイヴィルを比べたら、天才というのが霞んでしまう。
そう思わせるポテンシャルがイヴィルにはあった。
ちなみに最上位にはS級のランクがあるが、S級の冒険者は人外の領域だ。
そういう意味ではイヴィルはS級の領域にいるのかもしれない。
それと……何よりも恐ろしいのはイヴィルの魔力だ。
長時間魔法を連発していても魔力が切れそうにない。つまり魔力の底が見えないということだ。
魔力の底が見えないということは、いかなる魔法を使える可能性があるということ。
教えるつもりはないが、もしかすると禁術……使用者に多大な代償を伴わせる魔法を使ったとしても、その代償を魔力だけで置きかえることができるかもしれない。
いや、さすがにそれは言い過ぎだろうけど。
「このままいくと、半年で必要なことを教えきれるでしょう」
普通にやれば、どんなに早くても5年はかかる。
もちろん、今後アカデミーなどに通うとなれば、より長い時間はかかるかもしれないけれど。
何よりも恐ろしいのは……私は《《火属性の魔法》》しか見せていない。
それにも関わらず、イヴィルは自ら応用させて、闇属性の魔法に適応させている。
そんな運用の仕方は見たことがない。
これを化け物や規格外と言わずしてなんて呼ぶのか、私には答えが分からない。
「フラムよ。私はおべっかというのが嫌いだということを理解しているだろう?」
「お言葉ですが、私にはおべっかを使う理由も、嘘を吐く理由もありません。おべっかだと思われるなら、私を解雇すればよろしいかと」
「まさか……フラムのような優秀な魔法使いを手放す訳がないだろう」
「それと私は嘘という言葉が嫌いだと、公爵様には以前よりお伝えしていると思いますが、まさかお忘れではありませんよね?」
私がハインリヒに尋ねると少しだけ困ったように目線を上に向けて、首を横に振りながら溜息を吐く。
「そうだったな……すまない。それだけ愚息のことが心配なのだよ。許してくれ」
公爵家抱えの魔法使いになってからはおよそ5年くらいの付き合いにはなるが、ハインリヒが言い訳のようなことを言うのは初めて聞いた気がする。
かくいう私も5年近くもイヴィルの魔法の才に気づくことがなかったのが悔やまれる。
まさに『能あるイーグルは爪を隠す』なんて言うが、自分自身が隠されるとは思わなかった。
おそらくは、イヴィルの父であるハインリヒ自身もそうなのだろう。
「いえ……一人息子なのですから、仕方ないかと。ですが……」
私は少し言い淀む。
「闇魔法というのが気になるかね」
ハインリヒは言いづらいことをさらっと言う。
「申し訳ございません」
できることならば、属性を理由に評価を付けたくはない。
しかし、よりにもよって最弱の属性である闇魔法なのだろう。
属性にも強さのベクトルがある。
シンプルな火力であれば火属性が一番強い。
闇魔法は本来、相手に対して妨害などの補助系の魔法が強く、火力を求められる戦いに置いては、2ランクは劣る。
現状では火、水、風、土の4属性と顕色なく使っているけれど。
もしもイヴィルが使っていたのが火属性の魔法だったなら……きっと更なる高みに登れたはず。
そう考えただけでも惜しい人材であることは確かだ。
「構わん。イヴィルも何か考えがあるのだろう」
ハインリヒは楽しそうに口を綻ばせる。
こんなに機嫌の良いハインリヒは久しぶりに見る。
先ほどの言い訳まがいの発言といい、珍しいことが続く。
明日は槍でも降るのだろうか?
「それにイヴィル自身が言ったのだ。『言葉ではなく結果で証明してみせましょう』とな。そこまで言うのならば、我々はイヴィルの行く末を見届けるしかあるまい」
「えぇ……私も少し楽しみではありますよ」
ハインリヒに釣られて私も笑みをこぼしてしまう。
「それでは今後ともよろしく頼む。また来週にでも報告を聞かせてくれ」
「承知致しました。それでは、また」
私はそう言って、ヴィルサレム公爵家の書斎を出る。
才ある若者の成長を見届けることほど、楽しいものはない。
あぁ、明日は何を教えよう。
イヴィルはきっと私の期待以上のものを見せてくれるのだろう。
私は一人、心を躍らせながら自室に戻るのであった。