「こちらもプライベートの事で、君を詮索したくはないが、会社のホームページの問合せ欄に、あんな書き込みがあったからには、君に話を聞かないとならない。話したくはないかもしれんが、正直に答えてもらう。いいな?」
「……はい」
プライベートに関する質問が、豪に飛び交い、まるで拷問だった。
根掘り葉掘り聞いてくるので、彼も仕方なく正直に話すしかない。
恐らく、誹謗中傷の文章を送ってきたのは、かつての恋人だと予想している事。
先月から、この夏季休暇中までの出来事を質問され、豪はゲンナリしながらも、詳細を役員たちに報告していく。
もし、元恋人が危害を加えてきたら、警察に通報する旨も、専務に伝えた。
今は恋人がいるのか、とまで聞かれたが、豪は肯定する。
専務が腕を組みながら、豪に視線をぶつけてくる。
「なるほど。わかった。恐らく送信者のIPアドレスは、会社のサーバーにも残っているだろうし、調べれば誰がやったか、すぐにわかるだろう。この件は警察に届けるが、構わないな?」
「はい。是非お願いします」
「もしかしたら、証拠集めか何かで、君の携帯を捜査で使用するかも分からないが、それは了承してくれるな?」
「はい」
結局、彼は会議室に昼近くまで拘束させられ、午後からやっと通常業務に戻ったのだった。
連休明けの勤務日初日を終えると、豪はクタクタになりながら通勤電車に揺られ、西国分寺駅で電車を降り、改札へ向かった。
驚いた事に……というよりも呆れた事に、かつての恋人、優子が待ち伏せしている。
山の日に会った時、あんなに釘を刺したというのに、懲りずに西国分寺駅にいた事に、豪の怒りが頂点に達した。
「お前…………」
彼は憎悪の色を滲ませながら、優子を睨みつける。
「豪。やっぱり、私……」
「もう二度と、俺の前に姿を見せるな」
そう言い捨て、豪が自宅とは反対方面へと歩いていく。
このまま自宅まで付き纏われたら、堪ったものではない。
「ねぇ、話を聞いて! 私、あなたの事が忘れられないの……!」
彼は振り返り、冷ややかな視線を投げつけた。
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